そんなものは、ありません。

本日、2017年上半期の書籍売上ランキングが発表されました。

それによると『嫌われる勇気』の順位は以下の通りです。

オリコン調べ……自己啓発部門1位
日販調べ…………ビジネス部門2位
トーハン調べ……ビジネス部門2位
Amazon…………趣味・実用・自己啓発1位

2013年の12月に発売された本が、いまでもこうしてたくさんの方々に読まれていること、ほんとうにうれしく思います。また、今回のランキングは確実にテレビドラマの影響も大きく、フジテレビのみなさま、スタッフ・キャストのみなさまにはあらためて感謝申し上げる次第です。どうもありがとうございました。


それで、きょう書きたかったのは「ヒットの法則」についてです。

ありがたいことに、と一応は申し上げるべきなのでしょう。最近「売れる本のつくり方を教えてください」と言われる機会が増えてきました。ヒットの法則的な、なにかオリジナルのメソッドをお持ちなのでしょうと。


でもね。

そんなのわかりませんよ、ぼくには。


原則としてぼくは、よのなかに出回っている「ヒットの法則」を、ぜんぶウソだと思っています。ウソというのが言いすぎなら、せいぜい「ヒットの法則という名の商品」でしかないと、思っています。それが値札のついた売りものであろうとなかろうと。

もしぼくが若いころよりたくさん、そして真剣に考えるようになったことがあるとするなら、それは「価値とはなにか」の一点に尽きるでしょう。市場がどうなってるとか、トレンドがこう向いてるとか、そんなのに流されることがないであろう「価値」。それはなんなのか。

最近このあたり、ちょっとだけ言語化・モデル化できてきた気がしているのですが、もうしばらく自分の中で考え続けたいと思っています。あんまりモデル化を進めすぎると、こんどは自分の思考がそこで硬直化してしまうんで、けっこう要注意なんですけどね。

『嫌われる勇気』に大きなインスピレーションを与えてくれた、マーク・トゥエインの対話篇『人間とは何か』にこんな一節があります。人間は機械に過ぎない、自由意志など存在しない、と語るペシミスティックな老人の発言です。

老人  「われわれはよく、真理を求めての求道中とやらいう人間の話を聞くことがあるよね。だが、(永遠の)求道者なんて人間、わしはまだ見たことがないね。そんな人間なんて、いたためしがないんじゃないかな。ただ本人自身じゃ(永遠の)求道者をもって任じてる人間、しかも、正真正銘、本気でそのつもりでいる人間ってのには、いくらも会ったことがある。事実その求道ぶりは実に熱心で真摯、一点の嘘もなければ、判断も実に慎重で、ちゃんと筋道も立ってる——そして、その結果は、自分こそ疑いもなく真理をつかんだって信念にもなるんだな。だが、それで結局探求はおしまい。あとの余生ってのは、いうなればただ屋根板探しってだけの話、つまり、その真理とやらの雨漏りを防ごうってだけの話なんだ」

抜群におもしろい本なので、ぜひ読んでみてください。

毒を食らわばサラダで。
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古賀史健