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わたしと洋書と狂乱の貴公子。

高校生のころ、英文法の先生にこんなことを言われた。

「ぼくは子どもの頃から映画が好きで、どうしてもハリウッド映画を字幕なしで理解できるようになりたいと思った。それで英語の教科書とにらめっこしながらたくさんの映画を観たんだけど、さっぱりだった。あるとき、英語の先生から『洋書を一冊読みなさい』と言われた。自分の好きな小説を、辞書を片手に原著で読む。そうすると英語の扉が開くんだ。このアドバイスはほんとうだった。いまではぼくも、ハリウッド映画を字幕なしで観ることができる。だからみなさん、なんでもいいから洋書を一冊読みなさい。格闘し、読み通しなさい。受験もあるだろうけど、その読書がみなさんの人生を変えてくれるはずだから」

感激したぼくは紀伊国屋書店の洋書コーナーに足を運び、これだったら自分でも読めるだろうと思えるものを一冊選んだ。家に帰って辞書を片手に最初の1ページから丹念に読み込んでいった。「マッドネス」やら「テリブル」やら、教科書では見かけない単語がいっぱい出てくるのだけど、いまいち英語力が上達している気配がない。文法もめちゃくちゃで、やたら「!」マークが出てくる。こんなのやってもムダだ。あの先生の言ってたことは嘘じゃないか。

ぼくが投げ捨てた洋書。

それは「狂乱の貴公子」リック・フレアーが表紙を飾る、アメリカのプロレス雑誌だった。



というバカボンな思い出を持つぼくが、めずらしく何冊もの洋書に目を通しながらつくった本。それが『嫌われる勇気』だった。そして今月オーストラリアで発売になった英語版(The Courage to be Disliked)が、なんと発売早々に3刷になったらしい。

これを読みながら英語の勉強をやりなおすのは、かなりぜいたくなよろこびといえるだろう。もちろん辞書が欠かせないでしょうけど。