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たったひとつの共通言語。

糸井重里さんちのブイヨンさんが、「チーン」をずいぶんおぼえてきている。

ちなみに「チーン」とは、巷間で「呼び出しベル」や「卓上ベル」と呼ばれる会社の受付だとか居酒屋のレジ横だとかに置かれている金属製のベルを、人間の合図とともに鳴らす、という芸であり、あそびである。

以前であればこの「チーン」動画、「糸井家のほほえましい日常」くらいにとらえ、ブイさんかわいいなあ、程度の感想とともに眺めていただろう。

しかし、仔犬を飼いはじめてついに1か月。いまのぼくにとってブイヨンさんの「チーン」は、ほとんど戦慄の動画と言ってもいい。


考えてみてほしい。


「チーン」が成立するにあたってはまず、片手をふわっと持ち上げてお父さんの手に差し伸べる、「お手」のアクションをおぼえておかなければならない。

そして「お手」をおぼえる前には、こころおだやかにその場で静止する、「待て」をマスターしておかねばならない。

さらに「待て」の前には、こういうポーズをとってお父さんの顔を見上げればいいことがあるのだ、という「おすわり」を身につけなければならない。

もちろん、その「おすわり」をつくるのはお父さんへの信頼であり、人間という生きものへの信頼だ。人間の声を聞き、動きや表情を見て、その意図するところをわかろう、理解しよう、近づいていこうとがんばる、犬の意志だ。




なんかね、最近うちの犬がようやく「おすわり」を理解してきたところなんですけど、どこにいるどんな犬にだってできるはずの「おすわり」でも、彼とのあいだに共通言語のようなものがひとつ生まれたってだけで、泣けてくるくらいしみじみうれしいんですよ。

うん、たんなる親バカって話じゃないつもりなんだけど、通じるかなあ。

教祖猫を噛む。
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古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp
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