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足もとの戦闘力。

『ドラゴンボール』という漫画がある。

いまさら「〜という漫画がある」なんて紹介する必要もないくらい有名な、世界レベルの大ヒット漫画だ。しかしぼくは、この作品を途中までしか読んでいない。具体的にはピッコロ大魔王と闘っていたところで「週刊少年ジャンプ」を卒業してしまった。なので、それ以降に登場したベジータさんとかフリーザさんとかのことは、よくわからない。

しかし、これが大ヒット漫画のすごいところで、まるで読んでいないぼくでもベジータさんのことを知り、フリーザさんのことを知っている。ブウさんという魔人の存在も知っている。そしてまた、それぞれのキャラクターの強さが「戦闘力」という数値によって示されることも、うっすら知っている。


きょう、ぼくはサンダルを履いて出社している。サンダルがもたらす解放感自体は大好きなのだけど、どうにもサンダルは心細い。通勤中の電車で、あるいは街中で、堂々と振る舞うことがかなわず、消極的になってしまう自分がいる。

以前はその理由がわからなかった。しかし、あるとき気づいたのだ。


「これ、戦闘力が落ちてるんだな」


たとえば街中で、わかりやすくいえば渋谷センター街のような場所で、暴力的なお兄ちゃんたちに絡まれたとする。肩がぶつかったとか、眼が合ったとか、そんな理由で因縁をつけられたとする。胸ぐらをつかまれ、「やんのかコラァ」などと凄まれたとする。

いつものスニーカーであれば「やる」という選択肢もあるだろうし、「逃げる」という選択肢もあるだろう。

しかしサンダルという履きものは、いかにも戦闘に不向きである。ぶらぶらの足で「やる」ことはかなわないだろうし、「逃げる」を選んだところで、すぐに追いつかれそうだ。それどころか、靴で踏まれただけで悲鳴をあげそうである。


じゃあ、お前はいつも戦闘を念頭に街を歩いているのかと問われたならば、たぶん割とそうだ。たまにワークブーツを履いたりすると、途端に気がおおきくなる。戦闘力が、上がっている実感があるのだ。

……このなんだかよくわからない常在戦場マインド、何歳くらいまで続くんだろうなあ。

出る釘は浮かれる。
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古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

古賀史健(2018)

古賀史健の note、2018年分です。