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商いのコツは、あきないである。

ライターは肉体労働だと、よく言われる。

たしかにこれ、あながち間違いとはいえない話だ。たとえばこの一年、ぼくがどんなスケジュールで働いていたのか、その労働時間を数字に書き出してみたら、かなりの人がドン引きすると思う。しかも、原稿は「ぼんやり」が許されない仕事だ。機械的に入力できる文字はほとんどなく、ずーっと頭を回転させてないと仕事にならない。休んでるひまがないのだ。

原稿のよしあしを決めるいちばん大きな要因は、集中力だ。

どんなに筆のうまい人でも、集中力の切れた原稿は、途端にぐずぐずになる。晩年によろよろの作品を残してしまう作家たちの多くは、集中力をキープできなくなることに原因があるのだろう。ぼくはそう理解している。

そして困ったことに、集中力は「体力」ときわめて密接に結びついている。

たとえ技術が向上していったとしても、体力は弱くなり、集中力も弱くなる。老いた作家たちのよろよろは、集中力のよろよろであり、つまりは体力のよろよろなのだ。

もちろんぼくにも今後、あからさまな体力の衰えはやってくるのだろうし、集中力の衰えもやってくる。そこに抗う方策があるとすれば、ひたすら何度も読み返すこと、推敲に推敲をくり返すこと、それだけなんだろう。これは「自分に飽きない」と換言することもできそうだ。

商いのコツは、飽きないこと。……なのかもしれない。