「青年よ、大志を抱け」では足りない。
ボーイズ・ビー・アンビシャス。青年よ、大志を抱け。
クラーク博士による、有名なことばです。しかしぼくはクラーク博士について、あの銅像とこのことば以外、ほとんどなにも知らないに等しい。かつて大志を抱いた中年として、知っておいたほうがよいだろう。そんなことを思い、クラーク博士について調べたことがあります。
するとこのことば、ぜったいに「青年よ、大志を抱け」で終わっちゃダメなんですよね。クラーク博士が言ったのは「ボーイズ・ビー・アンビシャス、ライク・ディス・オールドマン」。つまり「青年よ、大志を抱け。この老人のごとく」なんですよ。
若いうちはああしろこうしろ、若いんだからこれをやっとけ、若者がそんなこと言うもんじゃない。年寄りからそう諭されるたびに、ぼくは反発していました。言いしれぬ欺瞞を感じとり、ぜったい従ってやるものかと思っていました。
でもねえ、もしもみんなが「この老人のごとく」をセットにアドバイスしてくれていたら、卒業生としてのことばではなく、現役の先輩としてそれを語っていてくれたら、生意気ざかりだったあのころの自分も、もう少しこころを開いたと思うんですよねえ。
だからぼくもなにかアドバイス的なものを求められたら、できるだけ「この中年のごとく」と語れることだけをお話しするようにしています。
おかげで語れることがどんどん狭くなっちゃうんですけど。