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接客業としてのタクシードライバー。

ぼくはしばしば、タクシーを利用する。

むかしは、タクシーなんて金持ちの乗りものだと、目の敵にしていた。乗れるようになってからもしばらくは、ちょっとずるをしているような、罪悪感と引き換えに乗車しているような居心地の悪さを、どこかに抱えていた。そして日常的に乗るようになった現在、あのころの自分は誰と——あるいはなにと——闘っていたのだろう、と不思議になる。タクシーにかぎらず、若いころのぼくはいろんなものと、ひとり勝手に闘っていた。


いつのころからか、タクシーの運転手さんが「野球」の話をしなくなった。カーラジオで野球中継を聴いている運転手さんも少なくなり、政治・経済・社会問題を取り扱うような、情報番組を聴く運転手さんが増えている印象もある。接客業としてのタクシードライバーのありかたを考えた場合、「野球と天気の話をしておけばオッケー」という時代では、もうなくなったのだろう。

それとは少しずれるけれど、たとえば昨夜の東京が季節外れの大雪だったとした場合、ぼくはなるべく大雪以外の話題を、ここに書こうと考える。昨夜の大雪について語るのは、今夜の巨人阪神戦について語る運転手と同じくらい、お客さんへの怠慢を感じてしまうからである。

ほんとのほんとを言えばきょうのぼくなんて、犬の話しか出てこない。

犬のために、よろこぶ犬を見て自分がよろこぶために、犬と一緒にちいさな旅をして、ゲラゲラ笑ったり、ハラハラしたり、イライラしたり、いろいろしている。こういう日に、犬以外の話をどう引っぱってくるか。

それが毎日書くということであり、たぶんここを「ただの日記」にしてしまったら誰にも読んでもらえず、そもそも長続きしないのだと思う。

明日はなにを書くのかなあ。

鬼にカネボウ。
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古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

古賀史健(2018)

古賀史健の note、2018年分です。
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