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レジェンドたちのことば

去年、読売新聞に掲載されたプロレスラー・藤波辰爾さんのインタビューで、おもしろい話がありました。日本では「プロレスの神様」と呼ばれ、藤波さんの師匠筋でもあるカール・ゴッチさんのことばです。

ゴッチから繰り返し言われたことは、レスラーはとにかく「コンディションが第一」だということです。どんなに実力があっても、コンディションが悪ければ勝てない。コンディションの次が、「相手の動きを読み、次に出すだろう技を考えること」で、力=パワーはその次なのです。この優先順位を間違えないようにと、繰り返し言われました。つまり力だけでは勝てないよと。

出典 読売新聞「忘れられないゴッチの教え…藤波辰爾<2>」

技術や腕っぷしの強さよりも、まずはコンディション。どんな卓越した技術があったとしても、コンディションが悪かったら足元をすくわれる。たしかに、スポーツの世界でときおり起こるジャイアント・キリング(番狂わせ)は、油断とか運とかといった要因以外にも、「コンディショニングの失敗」という側面が大きいのかもしれません。納得感も高く、学ぶことも多そうなことばという気がします。

しかし、そもそも「コンディション」とはなんでしょうか?

スポーツ選手にとっての「いいコンディション」と、毎日パソコンに向かって仕事をするデスクワーカーにとっての「いいコンディション」とは、おのずと内容が違ってくるでしょう。

コンディションが大事ということば、発想は、なんだかすごく響く。でも、ぼくにとっての「コンディショニング」ってなんだろう? そう思っていたところ、おもしろいインタビューを発見しました。

ノエル・ギャラガーがアルバム『チェイシング・イエスタデイ』の制作秘話を語るインタビューです。このなかでノエルは曲づくりの秘訣について、こんなふうに語っています。

今日はスタジオで誰それと曲を作りましょう、とか言われても俺には無理だ。そんなやり方で俺に曲は書けない。俺にとって曲ってのは空から降ってくるもんだからな。肝心なのは、空から降ってくる瞬間に、常に備えておくことだ。

常に備えておくこと。これ、まさに「コンディショニング」の話ですよね。もちろんぼくはアートの側に立つ人間ではなく、なにかが「空から降ってくる」ようなこともないのですが、ようやくつながったぜ、という気がしています。

われわれは、技術より腕っぷしよりも「コンディションが第一」である。そして、ぼくにとってのコンディショニングとは「常に備えておくこと」である。もう少し噛み砕いて言えば、ONとかOFFとか切り分けず、書くことと考えることのスイッチを入れっぱなしにしておくことである。

ことばにすると大変そうだけど、いまの自分にとても納得感のある答えです。