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地上15センチメートルの目線。

あたらしい視点を持ちなさい、というアドバイスがある。

いつもの自分とは違った視座で眺めなさい。別の角度から考えてみなさい。相手の立場にたって検討しなさい。企画がひとりよがりなものになっていったとき、よく言われるアドバイスだ。

会社に向かうため、駅までてくてく歩いていく。いまはまだできないけど、もうしばらくしたらこの道を、犬といっしょに歩いたりするのだろうなあ、と考える。また犬の話かよ、どうせにやにやしながら歩いているんだろう、と思われるかもしれないが、そうではない。まいったなあ、こまったなあ、と眉間にしわを寄せるように歩いているのだ。

なぜか。

犬の目線で歩く道は、あんまりにもごみが多い。たばこの吸い殻、ガムとその包み紙、コンビニのレシート、チラシ、靴下、スリッパ、ペットボトルの蓋、ダイレクトメールなど、さまざまなごみが落ちている。この道をあいつが歩いたら、くんくん匂いを嗅ぐだろうなあ。念のため、みたいな感じで咥えてみたり、かじってみたり、びっくりして飲み込んだり、いろいろするだろうなあ、と思う。

ここから社会派の活動家になって、ごみを捨てる人びとをエキセントリックに糾弾するような、そんな人間ではぼくはない。

ただただ、思うのだ。


見えてなかったなあ、と。

きっといまも、見えていないものがたくさんあるんだろう。見えていないがゆえに、直接的に間接的に、おおぜいのひとに迷惑をかけたり、おおぜいのひとを傷つけてしまったり、いろいろしてるんだろう。

たくさんの目線を行き来できる自分になりたいなあ。