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抜けたまつげの集まる先に。

たまに目頭、つまり目尻の反対側のところに、抜けたまつげがくっついてることがある。わあ、こんなところにまつげが。はやく取らなくちゃ、と思って爪の先でひっかいたり、ウエットティッシュでこすったりして取る。そして人体ってふしぎだなあ、と感慨にふける。

いくらお隣さんだとはいえ、眼球にとってのまつげは異物だ。風に舞った砂塵が眼球に直撃すると激痛をともなうように、眼球に体毛が付着してここちよいはずがない。というか積極的に痛い。

けれども目頭にくっついたこのまつげ、猛烈に痛かった記憶はない。気づけばそこに、あたかもほうきとちりとりで集めた枯れ葉のように、目頭に集合している。きっと涙や瞬きやの連動によって、ここに追いやられているのだろう。そして放置しておけば目ヤニとなり、いつしか剥落していくのだろう。ひょっとするとそれは、微生物の食べものになったりするのかもしれない。

この、眼球まわりに装備された自動清掃システムの、なんとふしぎなことか。


たぶんほんとうの「便利」とは、「スイッチひとつでぜんぶやってくれる」タイプの機械ではなく、スイッチの存在すら忘れさせてくれるものなのだろう。

人体は、便利だ。


……上記の文中、「自動清掃システム」と入力したところ、ぼくのパソコンはこちらの無意識を反映してくれたのでしょうか、「児童精巣システム」と変換しました。便利なのか、不便なのか、よくわかりません。