ホームランを打ったことのある人。

たらればさんのツイートがきっかけで、ホームランについて考えた。

ホームランっておもしろい。たとえば本がたくさん売れることを「ヒット」と言う。もっともっとたくさん売れたら「大ヒット」だ。どこまでいってもそれは「ホームラン」になりえない。英語の意味はともかくとして、ホームランはそれだけ特別なヤツなのだ。

ぼくは野球経験がほとんどないので、ホームランを打ったことがない。

サッカーの経験はあるけれど、公式戦でゴールを決めたことがない。


あったらどうだったんだろうなあ、と思う。たぶん、いまでも夢で思い出したりするんだろうなあ、と思う。でも、あのときの「打てなかった」もまた、いまのぼくをつくっているんだろうなあ、ともつよく思う。

————

仕事に置き換えていうと、ぼくは「あのときのあれはホームランだった」と思える本が、少ないながらもいくつかある。打ったときの手応えを、しっかり憶えている。だからこそいまでも強い球を打った瞬間に、「でも、レフトフライかも」と思える自分がいる。あのときの感触に及んでいないと、冷静にわかる。毎打席ホームランなんてできるはずがないけれど、打球のゆくえを追わずともホームランか外野フライかの判断がつくようになったのは、ありがたいことだと思っている。

一緒に組む編集者にもまた、できれば「ホームランを打ったことのある人」であってほしい。そうすれば原稿を手放す前に、打球がバットから放たれる前に、「まだホームランじゃない」がわかり合えるはずだから。

ホームランを打ったことのない人の打撃理論は、ぼくにはいらない。打ったことのある人は、みんなそう思っているはずだ。


鬼にカネボウ。
168

古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

古賀史健(2018)

古賀史健の note、2018年分です。
2つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。