カヴァーする、ということ。
ああ、そうだった。完全に忘れていたよ。
もう何回となく、どう少なく見積もっても10回以上はくり返しているであろう失敗を、またやってしまった。二度と同じ轍を踏まないためにも、一度ここではっきりことばにしておこう。
きのう、YouTubeで偶然に、MonaLisa Twins というデュオを見つけた。
公式サイトやFacebookの情報を総合すると、ウィーン出身のMonaとLisaという双子姉妹の、あまりにもそのまんまなデュオ。オリジナルの楽曲とは別に、ビートルズを中心とする60年代ロックのカヴァーを多く手掛けている。
これがまあ、めちゃくちゃいいのだ。キュートなのだ。
迷わずアルバムを購入した。ビートルズからビーチ・ボーイズ、ドアーズにジャニス・ジョプリン、さらにはバッファロー・スプリングフィールドまで網羅したカヴァーアルバムだ。
で、3周くらい聴いたところで思いだした。
カヴァー曲に名演あり。
されど、カヴァーアルバムに名盤なし。
……というポップミュージックの不思議な原則を。
カヴァー曲のなかには、オリジナルを凌駕するほどの名演・名曲も多い。また、好きなミュージシャンがビートルズならビートルズのカヴァーをやってくれると、それだけでうれしくなる。もっと聴かせろ、なんならこんなのばっかり集めたアルバムを出してくれ、と思う。しかし、ほんとにカヴァー曲ばかりで構成されたアルバムは、なぜだかすぐに飽きてしまうのだ。
今回の MonaLisa Twins さんは、歌や演奏が抜群にうまいわけではなく、アレンジもまあ、普通といえば普通だ。でも、それが逆にいいんじゃね? いまのおれはこういう素朴で良質ななにかを求めているんじゃね? くらいの気持ちで買ったのに、さっそく飽きている。
そしてなにより、iTunesで聴くよりも、YouTubeで見ているほうがたのしいのだ、このひとたちは。きれいな双子姉妹が、ギターを抱えてたのしそうにビートルズを演奏している。ふとした笑顔やハモリの声から、仲のよさが伝わってくる。それはもう、「見る」ほうがたのしいだろう。
いや、彼女たちに関しては聴いても気持ちいい(ドライブなんかに最高だと思う)からこれからも聴くだろうけど、YouTubeで発見したときほどのドキドキは、やはり得られない。
むかし、美空ひばりさんがジャズ&スタンダードナンバーを歌った企画盤を買ったことがある。その歌唱力とリズム感もさることながら、さすがに耳がいいのだろう、英語の歌もなんなくこなし、聴いていてたのしい。歌わせてみたかったひとの気持ちも、よくわかる。
でもずっと聴いていると、どうしても退屈してしまうのだ。当時あまり好きではなかった歌謡曲や演歌のほうが聴きたくなるし、「ほんもの」を感じるのだ。
その流れで考えると一時期、桑田佳祐さんが年末に全曲洋楽カヴァーでライブをやっていたけれど、あれはきっと一夜限りのライブだから成立するものであって、実際にあのままの選曲でカヴァーアルバムをつくったら意外とおもしろくなかったのかもしれない。
あ、それとはぜんぜん別に、ビートルズをカヴァーするときってみんな、ものすごくたのしそうですよね。あんまり眉間に皺を寄せて演ってる姿が想像できない。それはなんだか、ビートルズというひとたちと楽曲の特別さだと思います。
彼女たちのオリジナルアルバムも買わなきゃね。