見出し画像

なんて気持ちのいい「ごめんなさい」。

スポーツを観ているとそれは、たまにやってくる。

こころから「ごめんなさい」を言いたくなるような場面が、ときどきやってくる。選手個人に対しても、チーム全体に対しても。今回もまたぼくは選手たちに、スタッフのみなさんに、平身低頭して詫びたくなってしまった。その伏線となっていたのは、五郎丸歩選手である。

ラグビーワールドカップ開催まで100日というタイミングでおこなわれた記念イベントに出席した五郎丸歩選手は、「どのチームが優勝すると思いますか?」との問いに「日本です」と答えた。場内が笑いに包まれると、真顔で「みなさん笑っていますけど、本気ですから」と付け加えた。

かっこいいなあ、と思いながらもぼくは、彼のことばを額面どおりに受け止めることはできなかった。要するに「そういう気持ちで応援しましょう」という話なのだろうと解釈していた。「たとえどんなに実力差があっても、やる前から負けることを考える選手はいませんよ」という話だと。


土曜日におこなわれたアイルランド戦、相手リードで迎えたハーフタイムの放送席。五郎丸選手は堂々と「いけますよ。ボーナスポイントを狙ってきている相手を、後悔させてやりましょう」と言ってのけた。

試合終了後、田村選手がこんなことを明かした。

試合前、ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフが選手たちを前にこんな詩を詠んだのだそうだ。

誰も我々が勝つとは思っていない
誰も接戦になるとさえ思っていない
我々が払ってきた犠牲を、誰も知らない
それを知り、信じているのは、我々だけだ

田村選手は「そのとおりになったと思います」と胸を張った。


にわかファンであるぼくでさえ、勝つことを信じきれていなかった。正直なところを白状すると、主将のリーチ・マイケル選手を先発から外してきた段階で、「捨て試合」のつもりなのだと勘違いしていた。サモア戦とスコットランド戦に集中するため、(大会前に怪我をしていた)リーチ・マイケル選手を温存しているのだと思ってしまった。


なぜ信じることができなかったのだろう、と思う。

無邪気に「アイルランドにだって勝てるよ!」と言うことが、いかにも素人っぽくて憚られたのか。あるいは、単純にがっかりしたくなかったのか。たとえ大敗してもサモア戦、スコットランド戦を全力で応援するため、勝手に「ここは負けても仕方がない」なんて読めもしない星取表を読んでいたのだろうか。いったいそれで、なにを守っていたのだろうか。

せっかくのにわかファンなんだから、もっと無邪気になれよ、と思う。

中途半端にわかった顔して強豪国の強さを語ってんじゃねえよ、と思う。


ああー。ラグビーワールドカップ、たのしいなあ。日本戦以外の試合も、ぜんぶたのしい。理由をいろいろ考えたんだけど、オリンピックやサッカーのワールドカップに比べて、「金と政治と権力」の匂いが薄いから、こんだけ気持ちいいんだろうなあ。

まだ「ラグビーファン」と自分を呼ぶことはできませんが、「ラグビーワールドカップの大ファン」であることはもう、宣言します。大好きだ、これ。

桃栗三年、カキうまいねん。
326

古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

古賀史健(2018)

古賀史健の note、2018年分です。
3つ のマガジンに含まれています