アートとアート思考と私
私は、アートと呼ばれるものが苦手で、嫌いだと思い込んできました。絵も、音楽も、書道も。
書道の授業で先生から「下手だ」と言われたことが、最初のきっかけだった気がします。その後内申点の厳しい争いの中、どうしても良い成績が取れず足を引っ張ったのが、美術と音楽でした。努力が結果に結びつかず、判断基準も理解できないものに点数を付けられ、どうにも悔しい気持ちが、私のアート嫌いを加速させたのかもしれません。心の豊かさには欠けたかもしれませんが、大人になって困ることもありませんでした。
そんな私に、高校2年生の長女が「壁に絵を描くイベントに参加したいけれど夜遅いから付き合ってほしい」と言います。「絵かぁ…」と思いつつ、最近よく聞くけどあまり知らない”アート思考”には興味があったので、重い腰を上げて参加申し込みをしました。
最初に座学。
とは何かについて教えていただき、あれ?もしや私は今までずっとアート思考で事業を考えてきたのでは?と思ったりしました。
アート思考で発想して、ロジカルに根拠づけをする、という順番ですね。理解されにくいので、あまり人には言ってこなかったけれど。何となく自分の考え方が肯定された気になってムフフと参加していました。
アート思考とは何か…について興味がある方は、日頃から女性の活躍をサポートしてくれている若宮和男さんの記事をシェアさせて頂きますのでご参照ください。
最初は、絵を選ぶというワークショップ。机に色えんぴつが出されていた時点で少し恐怖を感じていた私ですが、絵を描かなくて良いと聞いて緊張が解けました。
たくさんのカードの中から絵を選び、「今の自分を表す美術展」と「10年後の美術館を表す美術展」を作ろうというもの。直感的に!と言われたので、何も考えずに選び並べました。
アイスブレイクで、一番好きな絵と嫌いな絵を選んだのですが…その時に最後まで悩んだ絵、つまり2番目に好きな絵を真ん中に配置しました。その影響もあってか、たくさんの絵の中から、ぼやっとしてカラフルなものを選んでみました。左下は海や川、土、右上は森や空をイメージ。斜めのラインはお花や樹などの植物のイメージ。
どれもボヤっとしているのは、今の悩みや迷いの最中にいる自分を表しています。
真ん中に配置したのが、一番好きな絵、右下の白黒は一番ではないけれど嫌いな絵。カラフルが好きだけれど、あまり好きじゃないものも受容できる自分でいたいと思って入れました。
そして、ぱきっとした絵を中心に選んだのは、境界線を明確にし、自分をしっかり持って、はっきり物を言える自分で在りたい、という気持ちが表れています。
これを作って、グループの人とシェアして…
私には大きな気付きがありました。
一番好きな絵を選んでと言われたとき、とても悩んだ末に選び取ったのが10年後の自分展に使った絵でした。今の自分展に選んだのは、2番目に好きな絵だったのです。自分のことに関しては、そうやって未来を優先して物事を選んできたことが多かったような気がします。果たしてそれで良いのかと疑問が湧きました。見えないし、来るかもしれない未来よりも、思い通りではないかもしれないけれど、今の自分を大事にしてあげても良いんじゃないかと。
そう思ったら、今の自分を表している美術展が、とても美しいものに見えてきたんです。
そしていよいよ壁に絵を描く時間となりました。この頃にはずいぶん気持ちも軽くなってきて、絵を描くことへの抵抗が減っていました。
まずは下書きを…と、紙と鉛筆を渡されましたが、それが一番苦手なので、私はいきなり壁にペンキを塗ることにしました。
壁に記された枠の中に自由に描いてOKというルール。最初に暖色を好きに載せて、乾かしている間ほかの人の作業を見ていたらお花が描きたくなりました。2枠書いていいと言われたら、最初に描いた枠の下が空いてたので、今度は海や森、空をイメージして色を載せました。
そしたら、なんだか上に横に自由に伸びる枝を描きたくなって、そこに色んな種類の葉っぱを描きました。本当は、ここをもっと上手に表現したかったけど、絵心ないのでご愛嬌。
書き出したら、もっと色を載せたいとか、根元はもっと太くしたいとか、この枝を分岐させたいとか、色んな気持ちが湧いてきました。
最後に、どんな風にお花を描こうかと思って眺めていたら、美しい青が目に留まりました。
何となく小さいお花をいっぱい描こうかと思っていたのだけれど、大輪が描きたくなって、どんな素敵なお花か想像してもらいたくて横に向けました。
考えずに描いたけれど、隣のお花とお話しているみたいになりました。
完成した絵はこちら。
青いお花の植物が描かれた2枠です。
本当は、薔薇を書きたかったんです。でも上手じゃないから横を向けてごまかしました(ちょっと菊っぽいww)。でもそれが良かったかもしれない。私にとっては薔薇だけど、これを見る他の人にとっては、違う花でも良いかもしれないから。
葉は、色んな種類の葉っぱを書いたつもりなんです。上手に表現できていないけれど。ナナカマドの葉とか、カエデの葉とか、もちろん薔薇の葉とか。
枝は縦横無尽に伸びさせてあげたくて。どこまでもどこまでも、好きなように伸びて行って欲しかった。会場の、もっと離れたところから突然出て来たら、面白かったかもしれないですね。
壁に枠が書いてあって、その中に思い思いに描いていくのだけれど、うまい具合にペンキを調合してくれているので、何だか全体の統一感があります。周りの人たちと影響し合って出来上がっていくのも、ワークショップならでは。
中央のチェック柄(?)の枠は長女の作品②
服を作ったり、たまに絵を描きだしたりする長女は、最初から楽しそうに描いていました。娘が垂らした絵具を、下の枠を書いていた男性がうまいこと生かしてくれたのも、彼女の人柄を表している気がします(笑)
最近は、娘たちに付き合って自分の幅が拡がる、という経験が増えています。本当に有難いことです。彼女たちが大人に近づくにつれ、自分が知らない価値観や想像もし得ない考え方に出会わせてもらいます。
いつまでも、新しい価値観や考え方に触れることが楽しいと思える自分でいたいものですね。
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