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靴擦れる幸福


年末年始は暴飲暴食すると決めていた。

楽しみにしていたパートナーと過ごすクリスマスや会社の忘年会、お正月ならではのおいしいもの、何かと食べがちな近所のおいしいケーキ屋さんのプリンアラモードなどなど、全力で楽しみたいことばかりで少しも抑えたくなかった。

2023年の締めくくり。1年がんばったから良いだろうと自分を甘やかすことにした。

ジムのトレーナーさんに「食べてから調整するのではなく、体重を減らしてから食べる」と教わったのを思い出し、クリスマス前に1.5kg落として満を持して暴飲暴食した。

そしたら、10日くらいで3kg増えた。想定の範囲内と言いたいところだが、範囲外だった。久々に体重計に乗る時なんか、碇シンジくらい逃げたかった。なぜ乗らなければならないのか。でも、逃げちゃダメだということはわかっていた。

これはまずいと、年明けから運動する気になった。と言っても仕事が始まったので、できるだけ生活に支障のない方法で無理なくやりたかった。私はBRT通勤を始めた。気仙沼は震災後に流された線路がバス専用道路となり、そこをJRの代替バス「BRT」が走っているのだ。

家から最寄り駅まで10分。会社の最寄りから会社まで歩いて30分。とにかく歩いた。気持ちよかった。今日は気付けばトータル10,000歩以上あるいた。

そしたら靴が合っていなかったようで、家に着く頃には明らかに足の感触で靴擦れしているのがわかった。歩くたびにジクジクする。

なのに、不思議とそれが心地よかった。普段は車でひとっ飛びの場所なのに、歩くと何倍も時間がかかる。こうして一歩ずつ踏み出して目的地まで近づいてくる感覚が、とても好き。だから、帰り際に靴擦れが痛んだ時も、「この痛みは自分で手に入れたのだ」とうれしく思った。

便利なものが増えている中で不便を求めようとしているのは、なせだろう。捻くれているわけでも、アンチテーゼ的にやっているのでもない。ただ私は、実感したいのだ。自分の足で歩く道を、自分の目で確かめる景色を。

その気持ちがどんどん強くなっている。それが無茶すぎない欲求であり、無理なく行動しているのが、今の生きる喜びになっている。

自分が触れるものは、すべてできるだけ知っていたい。でないと不安だし、丁寧にこさえられたものに鈍感になってしまう。それがとても怖い。

だから私は歩くし、書くし、作る。やるのだ。



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