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「困っている子」が受け入れられる世界を願って〜TBS NEWS DIG 報道特集 より〜

 YouTubeでたまたま流れてきた特集。知的障害と自閉症を併せ持つ子どもの親としては、本当にありがたく嬉しい取り組みだった。ここまでしてくれる方がいるとはという驚きもあった。「困った子は困っている子なんです」と第三者の立場ではっきり言ってくださったこともありがたく心強い。ぜひとも広がってほしいと思ったので紹介させていただきます。

 
 うちには健常児の次男がいるので、美容院や歯医者にはまず次男を連れて行った。次男が施術や治療する様子を撮影させてもらい、次回、初めての場所や物事が苦手、予測不能なことが苦手、じっとしていることが苦手、待つことが苦手…という特性を持つ子(長男)を連れてきてもいいか確認。長男に次男の写真を見せて予告。時間をかけて場所に慣れ、人に慣れ、することに慣れ…もうすぐ19歳になる長男も、今では美容院も歯医者も特に問題なく通うことができるようになった。(ということにも気づかされた。)できるようになったら忘れていたが、小さいころは(いや、だいぶ大きくなってからも)、本当に大変だった。病院の待合室で暴れたこともある。


お手本撮影に応えてくれる次男もありがたい存在


 小さいころは散髪は私の役目。長時間になると嫌がるので何回かに分けて少しずつ切っていた。散髪屋さんでは本人が立ち上がってしまうと立ったまま切ってもらい、歯医者では網でぐるぐるまきにされ、みの虫状態で診察を受けた。脱出しようとして大量に汗をかくので着替えも持参。そこは障害者専門の歯科医で、毎日は開いてないため、こちらの予定も考えると予約も大変だった。(よく考えると、専門の歯科医なのに対応に問題があったとも思う。)地域の歯医者さんに通えるといいなと思い、チャレンジしてみた。ありがたいことに、歯科医の先生に「何に気をつけたらいいですか?」と言っていただけたので、「何をするか予告してほしい、やると言ったこと以外はしないでほしい、本人が嫌がったら無理にさせないでほしい」というようなことをお願いしたと思う。先生の計らいで、歯科衛生士さん、先生(その歯科医には先生も複数勤務されている)はいつも同じ人に固定してくれ、毎回、その歯科医にある唯一の個室を押さえてくれていた。


 歯科衛生士さんは若い方だったが、最初の診察の日、上の動画にも出てくるような手順書を用意してくれていて感動した。初日、倒れる椅子に体を預けられず起き上がるので、座ったまま歯みがきをして終了。次からはいただいた手順書を見て家で予習。持参して受診。個室に入ると窓ガラスに同じ手順書が貼られていた。その後、うちの子ができるようになったことはその手順書の写真が一つずつうちの子の写真に入れ替わっていった。先生はいろんな機械を少しずつ試してくれた。空気が出るもの。水がでるもの。水を吸うもの。歯を磨くもの。「10だけ◯◯するよ」と予告し、「いーち、にー」と数えながらするのも動画と同じ。待ち時間は駐車場で過ごし、呼びに来てもらった。一人で付き添うのが不安な時は夫にもついてきてもらった。


 乳歯が抜けなくて先生に抜いてもらったこともあった。麻酔は無理なので、冷凍スプレーのようなものを吹きかけてペンチで抜くという。しかし、1本目はあまりの早業に私も本人も驚いた。本当にあっという間とはこのことだ。思わず「あっ!」と言った時にはもう抜けていた。しかし、2本目があった。もちろん本人は嫌がった。先生はじゃあまた次回に…という感じだったが、私が長男の両肩に手を当て「今、先生にやってもらうのと、家でお母さんがするのと、どっちがいい?」と(かなり迫力ある言い方で)聞くと、何かが伝わったらしく2本目も一瞬で抜いてもらった。随分慣れてからだが、「笑気麻酔ガス」で虫歯の治療もしてもらった。お世話になった最初の衛生士さんは結婚退職される時、挨拶に来てくださり、「楽しかったです」と言ってくださった。そんな風に思ってくださったことは本当にありがたく救われた。担当は二代目の衛生士さんに引き継がれ、彼女も結婚退職された。お二人とも幸せでありますように。初診から10年以上通っているが、今は三代目の衛生士さんともうまくやれている。


 散髪は1200円カットでも大丈夫になった。歯医者も美容院も何が行われるかの見通しが立つようになったからだと思う。うちの子は感覚過敏がそれほど強くないというのもある。散髪は少しずつ毎日のようにしていたので慣れるのが早かったのかもしれない。動画で言われていたように本当に人それぞれなので、何が功を奏すかも人それぞれだ。でも、こうして理解しようと努力してくださる方がいてくれるということは本当にありがたい。こうして報道してくださることもありがたい。ぜひとも全国に広がってほしい。美容院に限らず、受け入れてもらえる場所、安心して通える場所が一つでも増えることを願う。


 今日もカラオケ好きの長男のリクエストにより、いつものカラオケ店へ。ドリンクサーバーの前に数人の男性がいたので順番を待っていると、その中の一人の方が笑顔で長男を見た。変なヤツだと思われたかなと少し緊張が走る。でも、その笑顔はまっすぐ長男に向けられている。髪色と髪型が変わっていて気づかなかったが、3月まで通っていた放課後等デイサービスの職員さんだった。長男も笑顔で応えることができた。出先で声をかけてもらえるのもありがたい。いろんな人とつながる大切さを感じた一日だった。

 

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