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142 ビオラとラ・フランス

夜から朝に向かうとき、ぼんやりと空を見つめる時間が好きです。
気温が下がるにつれてぴんと固くなった紺色の空が、光の力で徐々にブルーグレーや優しいブルーになっていく姿は、素晴らしく美しい風景です。窓から見えるビルや木々、雲の輪郭もはっきりしてくると、「今日の準備」が始まったとうれしい気持ちになります。

部屋の中も明るくなってきて、目に入ったのはビオラの鉢植えとラ・フランス。どちらもお見舞いでいただきました。

ビオラは鉢植えに愛らしくたっぷり咲いていて、とても華やか。
ひとつひとつの小さなお花がおしゃべりしているようです。

ビオラにはさまざまな花言葉があります。花の色によって異なる花言葉やエピソードがあるようです。身近なビオラは多くの人に時代を超えて愛され続けたお花なんですね。

調べてみると、ビオラ全般の花言葉は、「少女の恋」「誠実」「信頼」「物思い」などでした。
かわいらしいだけではなく、一途な思いを持つ強さを感じます。きっと、寒い冬にも負けず、健気に咲き続ける姿から連想されたのでしょう。

ちなみに、私が調べた花言葉の中で特に素敵だなと思ったのが、黄色のビオラの花言葉「ささやかな幸せ」「田園の喜び」です。他のビオラの恋愛を思わせる花言葉とはひと味ちがう、より素朴であたたかな花言葉です。

緑豊かな田園の中に咲く黄色いビオラ。
見つけた人は、思わず足を止めて微笑むでしょう。
日々歩き続ける道にビオラが咲いていたらうれしい。
もし、そのとき何かに思い悩んでいたとしても、一生懸命咲いているビオラを見たら、心がほぐれるのではないでしょうか。
花がもつ力を感じられる言葉だと思いました。

ラ・フランスは2つ、ビオラの鉢植えの傍にごろんと横たわっています。
なかなか個性的なルックスで、自立できないようです。
それが怠けものに見えるので、目に入るとくすっと笑ってしまいます。

ラ・フランスは大好物なので、いただいたときに「すぐ食べたい!」と言いました。
しかし、持ってきてくれた人は「だめだめ。まだかたいよ。3日くらいは転がしておいた方がいいよ」と取り合ってくれませんでした。
目の前に好物があるのに食べられない…。お薬の副作用でいつもお腹が空いている私は情けなくなってしまいました。

若干心が荒んでいたので、持ってきてくれた人に「どうしてすぐに食べられるものを持ってきてくれなかったの」などと言ってしまいました。言った瞬間に後悔したのですが、発した言葉は雨と一緒。すでに相手に染み込んでいます。

ところが、相手はころころころと笑い出してこう言ってくれました。
「時間が解決するよ。時間が経てば、かたいものもやわらかくなる。味も甘く豊かになるし、今よりもっと良くなる。その過程を楽しんだら」

はっとしました。
夜はずっと続きません。
時間が経てば、空はほぐれて明るくなる。
ビオラもいきなり満開に咲くわけではありません
種から辛抱して、水と光を取り入れて素敵な花を咲かせます。

私は思い通りにならないことに対して、焦り過ぎていたのかもしれません。
焦ってもどうにもならないのであれば、一旦問題は置いておき、今できることはなにか。
新しい一日を始めるための準備はなにができるかを考えた方がずっと苦しくないことに気がつきました。

「物思い」にふけ日があったとしても、少しだけ周りを見れば、身近に心癒される味方はいつもいます。

自分では解決できないことも、もしかしたら時間が解決してくれるかもしれません。
その解決までの時間を「ささやかな幸せ」を見つけながら楽しみましょ。

病室でビオラとラ・フランス教えてもらったお話でした。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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*そして食いしんぼう爆発のイラスト*

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