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くず餅のこれまでとこれから〜日本文化としてのくず餅〜

こんにちは!船橋屋noteチームの小幡です。
今回のテーマは、「食文化」。
くず餅を食べたことがある人も、はじめて知る人も。私たちが繋ぐ食文化をぜひ覗いていってくださいね!

日本の食文化を遺したい

平成25年12月、「和食;日本人の伝統的な文化遺産」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
海と山に囲まれた日本は、その豊かな自然を活かした食文化が特徴です。

私たち船橋屋の「くず餅」も、日本の食文化のひとつ!

「大事な文化を、美味しく、楽しく、繋いでいきたい!」

これは、私たちの使命であり、夢なのです。

船橋屋は1805年(文化2年)亀戸にて創業。
看板商品は江戸固有の和菓子であるくず餅です。


小麦粉といえば 発酵といえば

古代エジプトの時代には発酵パンがすでに作られていた、と言われています。
長い長い「発酵」の歴史の中で、小麦粉と発酵を組み合わせた食文化は世界中で数多く生まれました。

例えば、パンやナン、ピザ……

やはり…小麦粉といえば主食が多い…!

これらは全て、主に酵母を利用して発酵しています。

それに対して、「くず餅」は"小麦でんぷんを乳酸菌発酵させたお菓子"
小麦粉からグルテンを除いて、でんぷんのみを使っています。
焼かずに蒸しているのも特徴的です。

そう考えると、くず餅は、「お菓子」「乳酸菌発酵」「蒸す」と、小麦粉と発酵を組み合わせた食品の中では、かなり異質な存在に感じます。

紀元前からパンが作られていたことを考えると、世界の発酵の歴史において、江戸時代生まれのくず餅(200歳over)は、まだまだ若者と言えるのかも?

発酵の歴史……恐るべし!!

こちらがグルテンを除いた小麦でんぷん


発酵ひしめく日本で生まれたくず餅

発酵食品は和食の大きな特徴です。
普段の食事を思い出してみても、醤油、味噌、納豆…「発酵食品を摂らない生活って、逆に難しい…!」と感じる方も多いはず!
発酵は、日本人にとって本当に身近な存在ですよね。

そんな発酵ひしめく日本で生まれたくず餅は、和菓子では珍しい発酵食品なんです。

しかも、船橋屋のくず餅は、450日間発酵して日持ちは2日間。

日本の代表的な発酵食品である、醤油や味噌、漬物などは、「日持ちがすること」が大きな特徴として挙げられると思います。
発酵食品は、発酵に時間がかかる分、たくさん作って常備できるのが利点ですが、くず餅は450日かけて発酵させて、2日で食べきる生菓子なのです。

温暖で湿度の高い日本において、冷蔵庫がなかった時代、保存性の高さは、非常に重要だったでしょう。

常備食になりうる発酵食品が数多く生まれる一方で、くず餅のような日持ちのしない発酵食品が親しまれてきたのはなぜでしょうか。

小麦でんぷんの発酵樽。
450日間、毎日気温や湿度、ph値などに気を配り、じっくり熟成させる。


儚さに価値を見出す日本の心

日本には古来から、「無常」や「もののあはれ」といった考え方がありました。
「滅びてゆく刹那的なもの」に美しさを感じる心です。
みなさんも、桜が散る様子を見て「美しい」と感じた経験があるのではないでしょうか?

船橋屋の創業は、藤の名所である亀戸天神の境内から。
藤の花は、春になると一気に満開になり、たった数日で散っていきます。

そして、そんな藤の花を見に訪れた人々に振る舞われたのが、船橋屋のくず餅です。

「今しかないこの瞬間」を楽しむ日本の情景の中に、くず餅は存在してきました。

自然を尊び、儚さを愛する。

くず餅が親しまれてきた背景には、そんな日本のスピリットが見えてきます。

亀戸天神に咲く藤の花。
船橋屋本店の軒先にも藤棚があり、毎年満開の時期には多くのお客様がいらっしゃいます。


くず餅にはロマンがいっぱい


先ほどもお伝えしましたが、くず餅は江戸時代に生まれました。発酵の仕組みも、乳酸菌の存在も、明らかになっていない時代にできたお菓子です。

ところが近年、船橋屋のくず餅から「くず餅乳酸菌®️という独自の乳酸菌が見つかりました。

びっくり仰天です。
江戸時代から生き続ける乳酸菌が、200年以上もの間くず餅の発酵を守ってくれていたのです。

先ほど、「くず餅はまだまだ若者かも?」なんて言いましたが、200年経って新情報が出てくるお菓子、やっぱりなかなかミステリアスな存在だと思います。

様々な形でくず餅乳酸菌のチカラを感じてもらえるように、くず餅乳酸菌®を配合したサプリメントを開発しました。



小麦でんぷんで作られた、このシンプルなお餅は、思った以上に奥が深いのです。
きっと、まだまだ私たちの知らない謎がたくさんあるはず…!

発酵がなんたるかもわからない時代から、やっとここまで来ましたが、この儚き発酵食品が生まれ、江戸から令和まで217年、失われず食べ続けられてきたこと。

当たり前じゃないからこそ、大切にしたいです。

美味しくてお腹に優しいくず餅は、船橋屋の大事な宝物です。これから、また新しい一面を見せてくれるかもしれないくず餅にワクワクが止まりません。

くず餅をもっと知りたい!もっと知ってもらいたい!

やはり、くず餅にはロマンがいっぱい詰まっています。

くず餅には黒蜜ときな粉!絶妙なハーモニーです。


おわりに

江戸時代、船橋屋を創業した勘助は、200年後の子孫たちがくず餅を美味しそうに頬張る姿を想像していたでしょうか?
私は、200年後、自分の子孫たちもくず餅を食べていると信じています。

なぜかって、くず餅を口に入れた瞬間の幸せは、200年経っても不変のものだと知っているから!

217年、くず餅が食べて繋がれてきたことが、その証だと思います。

みなさんと、くず餅という食文化を繋いでいけるように。
これからも刹那の口福を届け続けます。

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