小説「海賊船の謎」3

彼女の言葉にはっとし、声が出なかったが少し間を置いて翔は言った。

「現在でも海外では海賊なるものが出るよ、とかそういう話?」
先生が授業の合間にしていた雑談を思い出しながら言葉を返す。 
「いや、そういうのでなく実際に見たのよ、こっちに帰ってくるのに車で帰って来たでしょ?夜中でボンヤリだけど沖側に帆船が見えたの。最初は見間違いと思ったけど、今の話を聞いて確信を持って言えるわあれは船ね、かなりクラシックな」
彼女は自分をからかう事さえあれど嘘をつく人間ではないことを彼は知っていた。
「海って言っても広いけどどの辺り?」恐る恐る聞く
「そうねーこの街に入る道に曲がるちょっと前、海岸沿いの道を走ってる時だったから学校の裏手の辺りじゃないかしら?確かその直前にこの前の台風で土砂崩れで『山が欠けてる』のを見たから..…うん、間違いないわ」
確かに港から数キロ先に離れた入江
は学校の裏山のさらに先にあり、位置関係としては噂と符号する。翔は胸を踊らされた。
「ダメよ」
心を見透かしたように彼女は強めの口調で言ったので翔はドキッとした、しかし続けて台詞があった
「って言っても聞かないだろうから昼間なら友達と一緒に連れてってあげるから明後日空けときなさい。」
こっちの都合はお構いなしかと思ったが海岸まではかなり距離があるので願ったり叶ったりだ。
「ありがとう姉ちゃん!でも明日はダメなん?」早い方がいいと思い翔は言ったのだが彼女はまた小さくも大きい背中でこう語った。
「聞き込みで忙しい」

この瞬間だけは噂話より彼女の行動計画の方が気になった翔であった。


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