小説「海賊船の謎」2

翔はこの町に引越しまだ1年経っていない。だが不思議と居心地が良く気苦労していない。溶け込めているかはさて置き以前のような街の同調圧力などはなく好きに振る舞えるからだ。
臆することなく自分を出す学校のみんなに「こいつらおもしれぇじゃん」の念が耐えない。
ただ帰宅した彼はいつもと違って居心地の悪い思いをしてる。
翔には歳の離れた姉がいる。本来東京の大学に進学した彼女はここにいるはずがないのだが夏休みの間帰省しているのだ。
「翔、おかえり。アイス取って」
この変わった文法を駆使する彼女はソファーで寝転びながら弟をアゴで使う特性を持っているのだ。
「姉ちゃん、父さんや母さんが居ないからってぐうたらし過ぎ、太るよ」
翔がアイスを渡す時に精一杯の皮肉を込めるが彼女には届いて居ないようだ。
「別に一日中家にいた訳じゃない、昼間は外に出ていて疲れたの」
「へー友達とでも遊んでたの」
「いや、...…聞き込み?」
「探偵のバイトでもしてんの?」
彼女は昔から奇行が目立つのであまり気にするのことでもないが、その反面勉学もスポーツも優秀で翔はほとんどステータスが平均値なものだから「出涸らし」扱いされていた。目の上のたんこぶ、という言葉がこんなに似合う関係もそうないだろう。
「そういえばさー、今日噂話を聞いてさぁ、姉ちゃんは山の中に海賊船が現れることってあると思う?」
恵から各自情報を集めた置くこと、と命令されていたのでて身近に身内に聞いてノルマをクリアしなければいけないので彼は質問を投げかけた。
「バカじゃないの?宇宙船の方ならまだ可能性あるんじゃない?」
彼女の発想に驚かされる。同じ船なら空飛ぶ船かなるほど
「まぁそうだよなぁ、この町の裏山と海岸に海賊船が現れるって恵が言ってたんだ。眉唾だよなこのご時世に海賊船なんてな」
「あー」
彼女は言葉にならない音を背中から発した後、しばらくしてこう言った。
「海賊船なら本当に出るわよ」


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