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やっぱり、信頼しているマエストロの指揮が最高! と、確信した話 その2

(今回いただいてきた画像は、今回の記事の前編に出てくる、トロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」から、私が受けたイメージに近いな、と感じて、魅かれたので、周回遅れの感じではありますが、使わせていただきました)

さて。休憩が終わると、メインのブラームスの3番のシンフォニーです。

前半が、現代曲でなじみがないので、敬遠された方もいたようで、休憩後、さらに客席が埋まっているように感じました。もちろん、ご都合もあり、それでも、「せめて、ブラームスだけでも!」という方も、いらしたんでしょうけれども。

前半の「オリオン・マシーン」が、なかなか激しい作品でもあった分、このブラームスの演奏は、とても落ち着いてしっとりした印象が強かったです。コンサートの前半と後半で、性格が違う作品を組み合わせることは、珍しくないんですが、そういう場合、たいてい、前半が静かな作品で、後半にエネルギッシュなメインを置いて、盛り上げて終わる、というパターンが多いです。そのほうが、聴いているほうも、楽しいですしね。

山下さんは、エネルギッシュなかたですから、プログラムでは圧倒的に華やかに終わる、という作品を持ってこられていたんですが、ここへきて、逆の試みをなさったようです。

山下さんが千葉響のシェフになられて、今年で7年目。オーケストラへの信頼も強くなり、成長も実感しておられるのでしょうから(これは、今年度から新しいオーケストラを2つ任されてみて、改めて確信されたのでしょう)、満を持した形で、このブラームスを持ってこられたのでしょう。

山下さんは、千葉響と、ブラームス&シューマンの交響曲の全曲演奏を行ってらっしゃいます。7年かかって、どちらの作曲家のシンフォニーも、残すところ1曲ずつのところまで来ています。そして今回、ブラームスはこれで全曲演奏達成! なわけです(どちらも4曲ずつなんですけれどね)。

私は、ブラームスが好きなんですが、この3番のシンフォニーでとても有名な第3楽章が、苦手だったんです。有名なのは映画で使われたりしているからですが、映画とは関係なく(観てませんし)、哀愁を帯びた秋に似つかわしいメロディが、何故か嫌だったんですよね。

ところが! 終演後、帰宅の途に着いた私の頭に流れていたのは、その第3楽章だったんです。名演恐るべし! 印象をすっかり変えてしまっていたんですよね。

3番を全曲コンサートで聴いたのは、2度目なんですが(6年前、仙台で仙台フィルの演奏で聴いています。そのあとすぐに大けがしたので、それで、3番敬遠してきたのかもしれません)、私のなかにあったイメージとあまりに違うので、少なからず狼狽したもんです。

今回、山下&千葉響で聴いてみて、「ああ、こんなに滋味深い作品だったんだ」と、改めてブラームスの魅力を教えていただいた気持ちです。

嵐のような激しさもある第1楽章から始まって、やがて、明るさを増してゆく、第2楽章。穏やかで満ち足りた暖かさを持つ第3楽章。そして、充足感に満ちて眠りにつくイメージの第4楽章。あえて、タイトルをつければ、「満ち足りた、秋の一日」となるかなぁ。あまり、名演に似合わないですけれどね。

この3番は、派手さがないので、あまり演奏機会がない、と、山下さん、プレトークでおっしゃいましたが、秋になると、割にプログラムで見かけます。激しい暑さの夏と、厳しい寒さの冬の間にある秋は、命にとって、かけがえのない回復と充実の季節でもあります。そうした秋の性格に、似つかわしい感じが、音楽家たちにもするのかもしれません。

弦楽器のボディのような、深い樹木の色、あるいは色とりどりの落ち葉の色のような音色を聴いていると、前半の作品で高揚した気分が、鎮まってきて、心の底から音楽を聴ける喜びに浸っていることに気づきました。

「これか・・・・・。やはり、私には、山下一史なんだなぁ・・・・」

先月の26日の井上道義&新日本フィルのコンサートでは、決して味わえなかった、信頼感から来る喜びや楽しみ。それは、このマエストロだからこそ受け取れるのだと、再認識しました。今や、千葉響も、かつての悪癖だった立ち上がりの悪さは、もう観られません。安心して聴いていられます。それはまた、山下&千葉響の信頼関係の深まりの証でもあり、聴き手との関係の深まりでもあるのでしょう。

来年度から、千葉響は、悲願でもあった「定期演奏会を増やすこと」ができるのだそうです。ともかく、来年度は、1~2回増えるようですが、目指すは、1年に10回の演奏会だそうです。
7年かかって、山下さんも、ここまで千葉響の環境改善に成功されました。千葉県知事も、クラシック音楽に理解がある若い方に変わりましたし、追い風に乗って、大きく育てたいようです。
こうなると、山下さん、当分、千葉県とのつながりは途切れないんでしょうね。山下さんが就任された当初は、複雑だった私ですが、こうなれば、出来る限り、応援したいなぁ、と、思っているところです。

このコンサートを聴いた後、いろいろ気づくこともあって、ようやく、回復基調に乗れたようです。音楽のちからやnoteの力もお借りして、元気に過ごしたいものですね。


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