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〈Podcast 収録後記〉1、商工中金法 2、ステマ規制

 最近、思いがけずPodcastで話すようになりました。「Law Stream」というチャンネルです。このチャンネルでは、現役の弁護士が気になる法律についてビジネスニュースとは違った角度から解説しています。そこに相槌を打つのが私の役目です。実は少し前に弁護士が一人で始めていたのですが、「一人だと、どうもしゃべりにくい」とのことで、相槌役をお引き受けしました。調子に乗ってアイコンも作成してしまいましたので、こうなったらもう“中の人”です。リンクは一番下に貼っておきますのでぜひお聴きください。今後も月2回程度で続く予定です!

第1回:商工中金法改正 商工中金の民営化

 初回は「商工中金法改正 商工中金の民営化」の解説でした。この法律改正は中小企業の経営者でもなければ完全に他人事の部類かもしれないのですが、私は通称しか知らなかったような企業の生い立ち・成り立ちに始まって、これから期待される役割までを知ることができました。存在がぼんやりとしていたものについて「何がどうしてそうなったのか」が見えると、単純にすっきりとした気持ちになりますし、経済が絡むことですから、社会の一員としてこのタイミングで学べてよかったと思います。加えて、相槌担当とはいえ参加する以上は事前に多少調べますから、何もなければ関心を持たず見過ごしてしまうようなことについてそういう機会を得られたこと自体が特別で、相槌冥利につきるというものです。

第2回:ステマ規制

 そしてつい先日の第2回目は、タイムリーな「ステマ規制」の解説でした。ちょうどこの10月から始まった、ステルス・マーケティングに関する規制です。ニュースやSNSでも話題に上がることが多くなっていましたから、言葉だけでも目にしていた方は多いのではないでしょうか。一方で私はファッション小売業界でセールスに長く携わっているため、とても身近に感じる話題です。まさに渦中と言ってもいいかもしれません(ステマに関わったと自覚する過去はありませんが)。

問題と規制の捉えかた

 ここから先が、今回収録後記を残しておこうと思った理由の部分です。問題の渦中にいると得られるリアルな情報が多いようでいて、どうも主観に偏ってしまい、かえって見えなくなることがあります。収録をきっかけに改めてそれに気付かされるとともに、ステマ規制に限らず、物事は背景や事情を含めていつも客観的・多角的に捉えなくては、今後にまだ残された課題点や取り残されてしまう人の存在に気づけないのだろうなと感じたので、忘れないように書いておきたいと思いました。

ステマ規制の目的

 以前からステマは時々炎上していますし、炎上せずとも側から見ていて節操の無さに顔をしかめてしまう手法です。私自身、ステマをよく思わないため、規制されて当然だと思っていました。疑いのあるものは全部NGで結構、みんながルールを守れば消費者が煽られなくて平和になるし、狡いのはダメよ、と思っていました。

 しかし、弁護士の解説を聞きながら気づいたことがあります。果たして完全にNGでよいのかどうかという視点です。まず前提として、収録時の弁護士の個人的な見解はこうです。著しく不当なステマが横行することによって消費者が何も信じられなくなり、購買行動が消極的になると経済に影響が出るから、そうならないように今回規制することになった、つまり、狡いからダメという感情論ではなく、国として結果的に経済の動きが鈍くなるのを防ぐために規制を設けるということです。では、これを踏まえた上で、広告を出す側がステマ規制に抵触しないように、とにかく自らの安全に配慮して、対策を徹底したらどうなるでしょうか。

これもアウト?

 例えば、私がネットショップを開業して、サイトの商品ページにレビュー機能を付けたとします。もちろん初めはレビューが何もありません。レビューが無いショップや商品は売れにくいですが、自らすすんでレビューをしてくれるお客様はそうそういませんし、もし最初に書かれたレビューがあまり良くなければ、むしろ逆効果です。なんとかして、できればいいレビューが欲しい…と思い悩んでいました。そんな折、ある後輩がショップで購入してくれたとしましょう。そこで私が「〇〇ちゃん、お買い上げありがとう!もしできたらいい感じにレビューお願いできない?」と言うとします。後輩の〇〇ちゃんは年下で私からよく仕事の紹介を受ける関係性だとして、〇〇ちゃんは「(仕事の紹介をしてもらっているし、これからもそうだと助かるから)分かりました!」と言って、丁寧に良いレビューを第三者として書きましたとさ…、となれば、これはもう規制対象の条件が揃う状況です。

回り回って目的の足を引っ張る可能性

 前段の仮定の中で私はネットショップ開設初期にあり、ユーザーの購買行動を少しだけ促すためのきっかけのレビューが欲しかっただけです。決して悪いものを良いように見せて消費者を騙してまで買わせようとは思っていませんが、この一連の流れ(と関係性)は今回の規制の開始をもって今後はよくない例となります。

 前述した弁護士の個人的見解によれば、今回の規制は結果的に購買行動が消極的にならないようにと設けられたものです。「行動が消極的にならないように」と「行動を促す」は似ているようで非なるものではありますが、事業者がステマ規制に十二分に配慮して対策を行おうとすると、立場によっては「もう何もできない」と感じるかもしれません。消費者がつい買いたくなるような広告のアイディアがあっても、手も足も出せない状態です。大雑把な表現ですが、「隠れたマーケティング」を今後は隠さないでやるようにということですから、広告画面の全てに注釈が付いて消費者が逆に興ざめするケースも想像がつきます。そのくらい、ステマはあらゆる形で身近に潜んでいますし、それによって回ってきた経済も小さくありません。そう思うと、私のステルス・マーケティングに対する懲罰感情に少し変化が生まれました(支持はしませんが)。

弁護士の視点のおもしろさを掴むコツ

 私の思考の変化と気づきをお伝えするべくここまで長々と書いてきましたが、物事の捉えかたの角度をあっさり変えられるほどに、弁護士の話は視点が豊かで興味深いなといつも感じます。

 一般人の私はつい感情論で「そんなのダメに決まってるでしょう」と思い、どうしてダメかを言語化するにしても、結びが「悲しい思いをするから」「きっと片方だけ不満だから」のように、やはり感情や心情の形容に尽きてしまいがちです。一方で弁護士という職業の人はそうではなく、「社会にとってどうか」を軸に、取り巻く法律に基づいて物事を捉えているように見えますし、様々な立場の自由や正義を慮って見解を定めているように見えます。この視点の多さと論理的思考が興味を誘われる部分です。
 
 そこで話の聴きかたのコツですが、「弁護士の話=世の中のルール」だと思わないことです。「弁護士の言うことは世の中のルールでありいつも正しい」と思っている人も多いように感じますが、もしそうであれば訴訟で弁護人が二手に分かれること自体が起こり得ません。事案と関連する法律や判例等を弁護士なりの解釈で用いて依頼人にアドバイスをしたり弁護をしたりする人ですから、弁護士が100人いれば100通りの回答角度や深度があると言っても過言ではないかもしれません。そこを楽しみつつ、自分自身はどういう意見を持つかを考えてみるのはどうでしょうか。

\ チャンネルの宣伝 /

 Podcastは今のところ2週間に1度のペースでやっていく予定で、リンクは下記です。

 弁護士の話って面白いんですよ。毎度ぶっつけ本番でリアクションに困る私も楽しんでもらえたらと思います。ぜひお聴きください。

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