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超小ロット受注生産を請けてくれるニッターさんについて反省してます

最近すごく反省したことがあるので、いきさつから書いていくことにする。

いま私の仕事のひとつが、ライフスタイル系アパレルブランドだ。

2つのセレクトショップのバイヤー様からご希望をいただいて、近々秋冬のニットの受注会をやることになっている。

贅沢でユニーク、着た瞬間に心が宇宙みたいに広くなる、心地よいニットをつくる。
既出の素材も良かったけど、今回のあれもタダモノじゃない。

クライアントであるデザイナーは奇才だから、デザインはもちろん良くて、一見シンプルながら、クセのあるトピックの入れ加減が良い。多才さとインテリ感が垣間見えて、流石だと思う。

デザイナーズやハイブランドの服も体験して一周回ってきたような洋服好きの目に留まりやすくて、知識のある人ほど二度見してしまう。
たとえ何も分からなくたって、着た途端に手放したくなくなっちゃうはず。

ただし、

プルオーバーのニット1着で9万円くらいする。

糸を用意して編み立てから風合い出し、縫製とリンキングをして完成させるまでに、材料費、工程数に見合った適切な工賃、あとサンプル代や色々な送料等々を考えていくと、9万円が安く思える。

もちろん、超小ロット受注生産である。
(前置きが長いけど、私が今回反省しているのは価格とか企画の話ではない。)

いま、小ロット受注生産は、一部に強いニーズがある。

稀少価値を出したいブランドと、特別な品物を愛し貫きたい顧客を持つブランド、それから、ちょっとやってみたいブランドによるものだ。

弊ブランドは、二番目である。
稀少価値なんて狙わなくたって、規模が小さいからすでに稀少。でも、すでに4年目に入っていて、三番目のようにちょっとやってみたい、では生まれないラインナップを持っている。

そろそろ本題に入りたい。
小ロット受注生産と聞いて、それを請けている工場にどんなイメージをお持ちだろうか。
私は、細々と、1人か2人または家族経営くらいの規模でやっているイメージだ。

それは多分だいたい合っている。

では、そういう経営形態のニッターさんは、今後どうなりたいと思っているだろうか?

私はただ漠然と、失礼を承知で端的に言うと「陽の目を見たい」のではないかと思っていた。

それが、

そうでもなかった。

おこがましかったな、と心から反省してます。

最近は、生産側がクローズアップされることも多くて、野菜じゃないけどアパレルも作り手の顔が見える機会が増えているように思う。
そのうちスーパーで売られているレタスみたいに、作った人の顔写真がタグに付いたり、QRコードを読んだら生産風景の動画が見られたりするかもしれないし、もうあるのかもしれない。
昔からヨーロッパの手編みのブランドなどは、編んだ人のサインがタグやネームに書かれていたりするし、無くはない話だ。

今度受注会を開催してくださるお店のバイヤーさんのひとりから、ニットのサンプル製作風景を撮ってもらえないか?という打診があった。

自分がこれから手にするものがこんな風に作られているんだと分かれば、買い手のモノへの理解が深まり、より興味や愛着が湧くかもしれない、そういう顧客の満足度を思い遣ってのことだと思う。

それに加えて、背後に隠れがちな作り手に、少しスポットを当てるチャンスではないかと、私はその要望をそのまま企画生産担当に投げた。

聞いた結果、NGだった。

作り手さん自身が、所在を露出されるのを嫌がる。
これは別に、自信がないとかそういうことではない。今はとにかく小ロット受注生産を請ける工場自体が稀な一方、小ロット企画をやりたい、または小ロットしかできないブランドが増えていて、問い合わせや中途半端な依頼がめちゃくちゃ多いらしいのだ。

横編みの機械は、普通のミシンの20倍くらいするらしくて、そんな高い機械をやっと1台2台手に入れて、少人数でやっているところに中途半端な依頼や問い合わせがしょっちゅう来たら…それは仕事にならないだろう。

だから、紹介でしか請けないとか、仲介してくれる人にも詳細を明かさない約束をさせたりしているらしい。裏を返せば、そういうところに請けてもらえたクライアントのブランドはとてもラッキーだし、その運はクライアントの実績が手繰り寄せたものだとも傍で見ていて思う。
どこで作っているかは知っているけれど、迫る納期に挑んでもらっている以上、邪魔はしたくないので駄々をこねるのはやめた。

小規模と名乗りながらも中規模寄りか、すでに中規模で、大きく設備投資をして事業拡大に向けてさあ頑張るぞ、という段階のニッターさんや、商社である糸屋さんは、露出が広告になる。

しかし本当に小規模のところは、露出がある意味命取りになるのだ。そういうことに、今回話を聞くまで考えが及ばなかった自分を反省している。

今は、受注会が盛り上がり、ニッターさんが潤うオーダーができることを祈るばかりだ。

私もあのニット、欲しい。何色にしようかな。

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