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【有吉弘行の冠番組を語るシリーズ#5】ジロジロ有吉

有吉弘行の冠番組を語るシリーズの第5弾。

このシリーズでは、史上初めてNHK・民放キー局すべてでゴールデン・プライムタイムに冠番組を持った有吉さんの偉業を祝し、各番組の見どころや有吉さんのスタンスの違いなどを個人的な視点で綴っています。

第5弾は『有吉ジャポンⅡ ジロジロ有吉』

ジロジロ有吉とは

「興味はあるけど、なかなか一歩を踏み出せない」
そんなアナタに代わって「有吉ジャポンⅡ ジロジロ有吉」が未知の扉を開いてみます!

「やってみたいけど、どうしていいか分からない」「挑戦して失敗したら恥ずかしい…」
そんなアナタのために、人気芸能人が体アタリ初体験!

“予備知識ゼロ”での挑戦だからこそ見れるドキドキする表情、そこから生まれる「失敗」や「発見」を有吉弘行と一緒にジロジロします!

身近な「未知の世界」への入門書となる、How toバラエティです!
公式サイトより抜粋


TBS系列で土曜深夜(0:58〜)に放送されている。

未知なる扉を開くとある通り、知ってるようで知らない世界や俄かに流行りだしてる現象、局地的に熱を帯びるスポットに光を当て、実態を探る。

単なるVTRを流すのではなく、芸能人(主に女性芸人)が現地に出向き、自らチャレンジ・調査するのが特徴。有吉さんとスタジオのゲスト複数名がそれに対してジロジロと覗き見るスタイル。

雑にまとめるなら、『マツコの知らない世界』ならぬ『有吉弘行の知らない世界』+クレイジージャーニー+サンジャポって感じ。あ、すごい雑。


前身の『有吉ジャポン』が「深夜ならではのディープで骨太な情報番組」を謳っていただけあり、有吉ジャポンⅡとなった今も毎回扱うテーマは非常に興味深く、時代を先取りしている。

例えば

・緊縛アートに魅せられた女性たち
・動力無しの手作りカートレース
・4日間夜通しで踊り続ける奇祭"徹夜おどり"
・美女トレーナーしかいない歌舞伎町のジム
・新橋サイファーとのラップバトル
・フジロックボランティアの裏側
・地図にはない未踏の野湯探し


最近ではVtuberを取り上げた回が素晴らしかった。
「美少女Vtuberの中身がオジサンだと分かっててもなぜファンは魅了されるのか」 



ディープなテーマに斬り込みつつも、番組側は決してマイノリティを否定しない。その姿勢を崩さない。むしろ多様性や深度に理解を示す。

調査にあたる芸人たちの姿からもそれは見て取れる。最初は乗り気じゃなかったり半信半疑だったりしたのに、段々と魅力に取り憑かれテンションが上がっていく。

手作りカートレースであれば実際にカートを手作りするところから始めてレースにも出る。フジロックでは他のボランティアと同じように集合から解散まで体験する。

その場にいるプロや本物の人に取材するのは大前提。加えて芸人自ら体当たりで実施調査(チャレンジ)するのでリポートにリアリティが出る。引き出した言葉と体感した言葉の説得力は違う。

その世界がいかにして成り立っているのか、どれだけ難しいことをやっているのか、なぜ注目を浴びているのか。次第に明るみになる。

興味はあるけど得体の知れないアクティビティってたしかに多い。この番組は自分の代わりに初体験を提供してくれるのだ。
自らいきなりチャレンジするのは怖い、聞いたことはあるけど実際よくわからない…そういった世界を疑似体験できるのはありがたい。

企画やリサーチャーが有能なんだろうけど、取り上げるテーマは絶妙な切り口ばかり。

多様なジャンルの番組を持ち、日常的にあらゆる角度の情報収集ができ、アンテナも人一倍張ってる有吉さんがほぼ毎回新鮮なリアクションをするのが何よりの証明。「そうなんだ」「へぇ」「知らなかった」「すごいな」と興味深くVTRを見守る姿は印象的だ。

『マツコの知らなかった世界』にしても、(終わっちゃった)『タモリ倶楽部』にしても、マツコさんやタモさんに教養があって物知りという前提があるからこそ、そこにぶつける情報に意味がある。ぶつけて返ってきた反応にも価値が出る。

初代アシスタント田中みな実、番組の変遷


番組は有吉ジャポン時代も含めるともう10年以上の歴史がある。当初は爆笑問題MCのサンデージャポンの兄弟番組と銘打たれ、セットが流用されていたり、太田光代社長がレギュラー出演していたりした。

ナイトレジャーやゲイバー等、深夜らしいディープなスポットを取り上げ、下ネタ要素も強かった。

コンプライアンス意識の高まりと同時にスポットよりアクティビティ、取材よりも挑戦、下ネタよりも多様性、ジロジロ有吉は時代に合わせて自然とギアチェンジをしていったイメージ。

初代アシスタントを務めたのは田中みな実アナウンサー(女優)。

彼女は下ネタや危ない発言への対応力が高かった。有吉さんとの掛け合いも悪くなかったと思う。今ではすっかり独自のポジティブを築いて女優の顔も定着。

有ジャポ時代はかなり我を殺しながらアシスタントに徹していたのかなと最近の活躍を見る分にはなんだか信じられない。当時はまだまだ時代的にも有吉さんはバシバシ下ネタも毒っぽい発言もしていたから、中和する役割でバランスをとらざる得なかったのかもしれない。

有吉さんとはレギュラー共演が無くなってから『あざとくて、何が悪いの?』で再共演を果たした。

珍しいゲスト出演

有吉さんのゲスト出演が決まった際のインタビューで田中みな実は当時を振り返り「収録以外では喋らない。プライベートも知らない」と長年共演していたとは思えないほど距離感はあると吐露。有吉さんに当時とは別の顔(仕事っぷり)を見られることに戦々恐々していた。

TBSを辞めてフリーになってからもしばらく出演していたが、2021年3月に卒業。
後任は同局の近藤夏子アナウンサーが務めるようになった。

有吉さんは共演の女子アナとはそれなりの掛け合いや関係性を見せるのが上手い印象があるものの(水卜麻美、生野陽子、高橋真麻、夏目三久ほか)結婚を経たからなのか、あるいは真面目でイジる余地の少ない近藤アナのキャラクターもあってなのか、わりと彼女とは一定の距離を保っている。

また、現在は番組を卒業してしまったGQジャパンの鈴木編集長の存在は好きだった。

有吉さんがGQアワードに選ばれたご縁から共演


鈴木編集長にしかない知識と視点、センス。
コメントは常にオリジナリティがあり、番組のカラーにも合っていた。有吉さんは編集長をイジりながらも、信頼と敬意を持って接していたのも伝わる。同じように編集長も有吉弘行という人間の魅力をよく理解し、なにかについては有吉さんを褒め、優しく見守っていた。

有吉さんのスタンス

レギュラー番組のなかでもキワドイ発言はおそらく多いほう。かなり自然体に近いのではないか。言葉をあまり慎重に選ばず素直にコメントしている印象を受ける。

放送が深夜帯というのが大きいと思う。
番組もディープな内容を扱い、ゲストも有吉さんより芸歴や年齢が上の人、大物俳優が出ることもない。

VTRを見ながら苦言を呈するのも手厳しい物言いをするのもデフォルト。
むしろその当たりの強さを楽しめる。

冠番組を全局で制する天下人になる前、まだ立場を弁えず鋭利な芸風で容赦のなかった頃の片鱗を見たい人はこの番組をぜひジロジロしてほしい。

VTR中はワイプでの会話音声がオフになってることが多い。もちろんVの内容を優先して訴求するためなのもあるだろうが、オンエアに乗らないだけでもっと過激なコメントやダメ出しも実際してるんだろうなと感じる。

バイきんぐ小峠さんとかノブコブ吉村さんとか、気心知れた芸人がスタジオゲストに来たときは、ワイプの向こうで特に楽しそうに何やら言葉を交わしてる。そのオフられている会話こそ聞かせてくれと思わずにいられない。

ツッコミどころが豊富な映像や初挑戦に慄いて、ヘタれな姿を曝け出す調査担当の芸人。有吉さんにとったら斬りたくて仕方ない要素が盛り沢山。核心を突いたり揚げ足を取ったり本来の持ち味を出しやすい環境なのは間違いない。

いつの回だったか、わりとVTRは感動寄りに完結し、他のゲストもねぎらうような空気だったにもかかわらず、有吉さんだけ眉間に皺を寄せた真顔でとんでもなく手厳しいストイックなコメントをし、思わず小峠さんが「あんた鬼だよ!!」みたいなツッコミをしたのもよく憶えている。

逆にぽんぽこの高木ひとみ○(マル)のようなピュアでユニークな芸人をガンガンに甘やかして周囲から総ツッコミに遭うパターンもある。このいわば「甘やかし芸」は個人的にも大好き。

真顔で「かわいいねえ」「えらいねえ」などと対象を必要以上に褒めちぎってスタジオゲストからツッコまれて大笑いしてる構図。
実際ほんとうに有吉さんはピュアな人や一生懸命やる人、結果的にそれで笑いを生む芸人を高く評価してるんだろうけど。

ジロジロ有吉ガールズ

先述した高木ひとみ○のように調査担当の芸能人は基本的に女性芸人。若手かつ知名度もまだまだこれからの芸人を抜擢することも少なくない。

勝手にジロジロ有吉のPerfumeだと思っているのが高木ひとみ○、横井かりこる(フタリシズカ)、荒川(エルフ)の3人だ。

彼女たちは準レギュラーといっていいほどロケを頻繁に任される。それだけ結果も出しており、有吉さんのリアクションやスタッフさん側の評価も良いのだろう。

拘束時間の長い調査が多いため、物理的にスケジュールを抑えられる人が選ばれやすいのもあるにせよ、実際に彼女たちの担当回は当たりが多い。
エルフの荒川は売れてきたので以前より出番が減ってる気もするが、ダイエット系企画では一時期かなり貢献していた。

高木ひとみ○もドラマ出演が決まったりと順調に実力に見合った仕事の増え方をしている。船酔いして茫然自失となっていた回、最近なら犬ぞりレースでの番狂せ等々、印象深い回は多い。

キャラクターとして面白い上に純粋な努力も惜しまず、さらにはちゃんとチャレンジでの結果も残す稀有な存在。ひとみ○は『ジロジロ有吉』からしても最も手離せない芸人の一人だろう。

横井かりこるはキャラクター的には地味な部類。それでもダンスや手先の器用さ、何より人柄そのものが伝わる一生懸命さが光る。毎回素晴らしいチャレンジを届けてくれるためか、有吉さんが見守る視線も比較的優しく信頼しているイメージ。

はな(ex.はなしょー)、ぱーてぃーちゃんの信子ときょんちぃも定期的に出てくる。

今や売れっ子のヒコロヒー、ヨネダ2000、ゆうちゃみなども過去には出演していた。


有吉さんと若手女芸人が絡む&有吉さんが彼女たちを知る。
その意味でも貴重な場になっている。

有吉さんから奪ってはいけない

有吉反省会が無くなり、有吉クイズもゴールデンに上がり、有吉さんが深夜帯に持つ番組はこれぐらいになってしまった。喜ばしい反面、寂しさもある。
それは「応援していた人がすっかり超大物になっちゃって…」みたいなくだらない傲慢な意味ではない。

本質的に有吉さんはアナーキーな人。
あまり言葉を選ばず、コンプラも気にせず自由にいてほしいからだ。

ぐうの音も出ない本質を突きつけ、人の「油断」や「怠慢」を見逃さず、キツい当たりをしてもすぐに笑える構図を作れる天才。
場面に応じてどこをどんなふうに面白がったらいいか掴む・示す、そのスピードの速さは抜群
(これはヒコロヒーも佐久間さんとのYouTubeで語っていた)

そのスキルを他の番組以上に見せてもらえる貴重なバラエティが『ジロジロ有吉』なのだ。

だから有吉さんから絶対に奪ってはいけない。深夜バラエティを取り上げてはいけない。

『有吉の壁』でしかなかなか共演を見ないような後輩がスタジオゲストに来てラフな絡みをするのも好き。

トム・ブラウン
マヂカルラブリー


何よりも、番組そのものが教養と発見に溢れ、未知の世界を覗ける尖った魅力を持つ。


もっともっと評価されてもいい番組のひとつだと個人的には思っている。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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