自己愛の化け物、クロちゃん
お笑いトリオ・安田大サーカスのクロちゃん。彼のモンスターたる所以は、その自己愛の強さにあるのではないかという記事です。
クロちゃんといえば、コワモテの風貌。そしてそれを裏切る高い声のギャップで広く認知されているお笑い芸人だ。
パチンコやアイドルにも精通しており、関連イベントや営業でも活躍の場を見せている。ツイッターなどでは「○○だしん!」などと、語尾に「しん」を付ける特徴を持つ。
近年、ブレイクのキッカケとなったのはTBS系のバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』でのモンスターっぷりに間違いないだろう。
番組の中でクロちゃんは毎回のようにドッキリを仕掛けられている。目隠しをされ、どこかに連れて行かれるのがお決まりのパターン。
基本的にクロちゃんは嘘つきだ。本人に嘘をついている自覚はあまり見受けられないため、嘘つきというより虚言癖に近い。
ダイエットといいながら実際は爆食いしていたり、ウォーキングを頑張るといってタクシーに乗っていたり、そんなことは日常茶飯事である。
ツイッターには努力に映る表の部分だけをアップするのも特徴で、番組内でそれを暴かれてからは、すっかりクロちゃん=嘘つき、最低、クズ、というイメージが定着した。
ツイッターでは投稿の度に罵詈雑言が浴びせられている。世界中の敵意がここに集まっているんじゃないかと錯覚するほどだ。
たしかにツイッターの中身は気持ち悪い加工をした気持ち悪い自撮りや、薄っぺらな綺麗事のオンパレードなので、バラエティ番組をろくに見ていない人でも嫌いになる材料は事足りている。
まるで社会のサンドバックかのように叩かれまくりのクロちゃん。
だが、彼は折れない。
何か叩かれるようなことをやらかしても、反省の様子が一切見られない。引かれるような言動を繰り返しても、それをやめようとはしない。
彼自身、人間不信になるレベルのドッキリを執拗にかけられている同情すべき被害者であるはずなのに、彼は彼自身のキャラクターによって被害者の立場にいつも着地できない。
むしろ不快感を人に与えるほうが勝り、加害者的扱いを続けられる。
なぜ彼は人に不快感を与える言動を繰り返し、そして叩かれるのに反省しないのか。
自己愛の化け物だからである。
クロちゃんは自己愛がとにかく強い。
底抜けのブラックホールのような自己愛で、ありとあらゆる自身への非難や冷たい視線を飲み込んでしまうのだ。
クロちゃんのクロとは、ブラックホールの闇の色そのもの、漆黒のクロなのである。
雑誌『クイック・ジャパン』で「水曜日のダウンタウン」を特集した号があった。
僕は驚いた。インタビュー内でクロちゃんは、自己愛の強さを自覚していたからだ。
彼は客観性というものが完全に欠落したモンスターだと思っていたので意外だった。
変わっている女の子が好きだという話だった。いわゆるメンヘラと呼ばれるような面倒くさいタイプでもクロちゃん的には大歓迎で、そんな子に振り回される自分が好きですらあると語っていた。
そのての子に自分が引っ張られてしまうことが無いという。メンヘラなタイプと付き合うと、付き合った男も巻き込まれるように不安定になったり、ダメージを受けて病んでしまうことはよくある。
しかし、クロちゃんにはそれがないというのだ。
その秘密が自己愛の強さで、なにをされても自分のことを悲劇のナンチャラとして思うことができ、ブレることがないらしいのだ。
最終的に確固たる「自分のことが好き」があるから、折れることも変わることもない。
自分がすべてで、常に優先順位の最高にある。
彼はどんなに叩かれたところで、どんなドッキリをかけられたところで、「あー クロちゃん、なんてかわいそうなんだしん!」と自己憐憫で消化して終わる。
だから、折れない。めげない。
かといって反省もできないから、また同じようなことをやらかし続ける。
また叩かれる。いじられる。
「あー クロちゃん、なんてかわいそうなんだしん!」
以下、ループである。
ちなみに僕はクロちゃんのことが大好きである。あのポケモン感が憎めないし、バラエティで見たときは必ず笑わせてくれるから。
アイドル全般に関する知見や持論も本物だし。
何より、メンタルが脆弱な現代人にとって、クロちゃんの自己愛の強さは見習うべき点でもある。
自己愛の強さも、人に迷惑さえかけなければ、自己肯定感の強さでしかなく、それは人が幸せになる上でとても大切なものだからだ。
クロちゃんはクズとかモンスターとかサイコパスとか言われているが、自ら身体を張って人が幸せになるためのヒントを届けてくれているのである。
ちなみに、僕がクロちゃん関連で一番笑ったのが、有吉とおぎやはぎがMCを務めた番組でのクロちゃんだ。
企画は「クロちゃんで笑ったら即引退」というモノで、放送はずいぶん前になる。YouTubeにしばらく上がっていたのが、今はどうだろう。
「水曜日のダウンタウン」でクロちゃんに目隠するパターンが生まれたキッカケといわれる企画である。動画は何度見たか分からない。声を出して毎回笑った。流れが分かってても笑う。
クロちゃんはいじられた時の返しが抜群に面白い。うまいし、早い。
その特異なキャラクターだけでなく、しっかりと笑いのスキルが高いことも分かる。
だからこそ重宝されているのだろう。
前述の雑誌『クイック・ジャパン』の中でも、プロデューサーの藤井健太郎氏は、あまり褒めたくないと前置きしながらも、クロちゃんの返しの面白さを高く評価していた。
やはりお笑い芸人としてのスキルやキャラクターの力が大前提にあってのモンスターっぷりだ。
クロちゃん、恐るべし。
続編↓
サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います