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店長のフライパン哲学 8章

フライパンにとっての油

フライパンは100度以上で調理する乾熱調理でしたが、その時に手助けしてくれるのが油です。 水は100度の上限がありますが、油にはありません。しかも、水と比べて早く温まる。 それは、比熱で分かります。物質1gを1度上昇させるために必要な熱量が比熱です。 この値が大きいほど温まりにくくなります。 水の比熱が1に対して、油は0.5であるため、水と比べて早く温まります。 その結果、160~180度の温度帯で調理するフライパンを助けてくれるのです。

コンテオイルポットがあると、油の扱いが快適となります。

しかも、油は液体であり、フライパン内に注ぐと表面全体にむらなく広がります。 特に、鉄製フライパンであれば、弾けたり、玉を作ったりすることなく、膜で覆われるように広がります。 これをもって油馴染みが良いとも表現します。これは鉄の表面にある酸化被膜の小さな穴に油が落ち込むためです。 この油をもって、フライパン表面全体をむらなく均等に温めることができるのです。 油返しは、そのための作業ですが、油はむらなく適温にすることに貢献しています。

さらに、食材と金属との付着を防ぐ役割を果たしています。 タンパク質は50度以上になると、熱凝着反応が始まり、金属と付着する状態となってしまいます。 これは、タンパク質を構成する分子の結合が切れて、その分子が遊離して金属面と付着します。 その時、油があれば、金属面との付着を防いでくれるのです。 そのために、フライパン内に適量の差し油をすることで、タンパク質が主成分である卵・魚・肉などが綺麗に調理できます。

そして、油そのものが美味しいとも言えます。 適温になることで、良い香りが生まれます。また、野菜炒めで分かりますが、まろやかな味わいとなります。 加えて、食材に油を絡めることで、食材全体に熱をむらなく効率よく届けることができる。 また、適温を越えると、煙が出てくることは、「温度が高いよ。」と警告を与えてくれているようです。 フライパンにとっての油は、ともに美味しさを作り出す、なくてはならない存在とも言えます。