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商人日記 2022年4~6月

豊岡中学校で出張授業をして参りました。タイトルは「独立自尊とは何か」仕事のベースあるいは哲学の部分を 中学生と一緒に考えてみました。すると、中学生たちから本質をついた質問が出て、 私の中にあったものを言語化してくれました。 「どんなフライパンを売りたいですか?」 「これというフライパンではなく、その人にとって相応しいフライパンを売りたいです。」 「仕事の時に心掛けていることは何ですか?」 「思いやりです。従業員と取引先が喜び、顧客が喜び、社会全体も喜ぶ。みんなが喜ぶ仕事を目指しています。」 そんなやりとりを通じて、仕事とは、幸せを後押しすることであり、幸せになることの主体ではない。 あくまで幸せは、自分で求めて自分でつかむことが前提にある。 その時、仕事人とは、顧客と同じ方向(幸せ)を目指して、寄り添いながらサポートしていくこと。 また、その方向あるいはビジョンを具体的に示していくこと。 当社であれば、お料理作りを通じて、自立した人、明るい家庭、美しい街を作っていくこと。 私の中で、漠然としていたものが、生徒たちによって、明確になって参りました。 2022年6月16日

NHKみんなのうたで「ててて!とまって!」 という交通安全の歌を視聴して、非常な違和感を感じました。 本来、法令上自動車は横断歩道で止まるのは当たり前ですが、 止まれば歩行者から大きな感謝をされるまでのありがたいことになっている。 そもそも、自動車が公道を占拠して、歩行者が追いやられてきました。 その犠牲者が、自動車には乗れない子供たちでした。外で遊ぶところも制約されてきました。 歩道橋なるものは、その最たるもので、あそこまで上り下りを繰り返して渡らなければならない。 これは経済を優先する大人たちの都合に過ぎません。 すると、米軍の核の傘のもとにあり、米軍に「サンキュー!」と頭をさげている国民のあり方とも重なります。 私たちは、ちゃんと交通安全たる憲法9条を順守していますと喜ぶべきなのでしょうか。 そんな折、拉致被害者の会の横田拓也さんがバイデン大統領と面会して 「この問題を解決する当事者は誰かと言われれば、言うまでもなく日本政府。」 子供たちには、従順さだけではなく、世の中の矛盾に気づいて、横田さんのように堂々と発言する大人になってもらいたいです。 2022年5月24日

中日新聞の東三河版の記事「故川澄哲夫さん田原でしのぶ」を母親から手渡されました。 川澄先生が主宰する英語塾があり、中学校時代に数年通わせて頂きました。 母親も先生から英語の手ほどきを受けており親子2代でお世話になりました。 今年1月に逝去されたことを知り、謹んでお悔やみ申し上げます。 当時先生から、三浦按針ことウィリアム・アダムスのことを教えて頂きました。 日本英学史を研究されていて、ジョン万次郎に関しては、「私は万次郎よりも、万次郎のことを知っているよ。」 2013年に、先生の講演会があり、30年ぶりにお話を伺うと、私の目をじっと見てお話をされるのです。 それは、中学校時代と変わりませんでした。その時も、オランダ語の原書と訳文を比較して、 渡辺崋山がどのように理解していたのか。訳文だけではなく、原書にあたることを求めていました。 そして、当時の人たちが「リバティー」(自由)を正しく理解できていたのか。 晩年の先生の関心は、福沢諭吉と渡辺崋山にあったようです。 先生は英語の教師というよりは、私にとっては自由を教える教師でした。先生ありがとうございました。 2022年5月17日

家内の里帰りに同行して北海道へ行って参りました。 驚いたことは、飛行機代もホテル宿泊代も低料金、いわゆる格安。 コロナ禍の観光客減が拍車をかけている印象を受けました。 ちょうど知床観光船の遭難事故があった時でしたが、商売人に重い課題を突き付けているようです。 安全第一は当然とされますが、それを確保するには必ず大きなコストがかかります。 今回の事態でも、運航会社に責任があるのは当然ですが、今日の格安を是とする社会風潮も見直すべきでしょう。 単に価格だけを求める消費者に対して、商売人はしっかりと説明をしなければなりません。 手軽に旅行できることは良いのですが、命に直結する飛行機搭乗等は、格安で良いのかと問われるべきでしょう。 ますます物価が高騰する昨今、商売人はしっかりと向き合い、きちんと対価を頂きながら事業を続けていく必要があります。 その点で、行き過ぎた価格競争には警戒しなければなりません。 そのためにも、業界団体および行政とも連携をしながら消費者の理解を求めていく。 この連休も悲惨な事故を起こさないために、商売人は決断と行動をする時です。 2022年4月29日

旧約聖書のコレヘトの言葉を読み直していると「天の下には何事にも定まった時がある。」 その時とは、何であろうか。哲学者が探求してきた奥深いものでありますが、それは刹那あるいは一瞬ではなく、 時間を積み重ねること、結実・熟成といった意味合いを含むことと理解できます。 そんな時、テレビで井伊直弼(なおすけ)の生涯を紹介していました。 彦根藩主の14男として生まれた直弼は養子先もなく、城外の埋木舎(うもれぎのや)と名付けた屋敷で、 17歳から32歳までの15年間を送る。 埋木とは、地中に埋まり外から見えない樹木のことであり、世間から捨てられて顧みられない身の上のこと。 それでも直弼は腐ることなく、ここで文武の修練に精進する。 すると時が来て、藩主に抜擢、大老にまで上り詰め、幕末の開国という大きな問題にまで対処する。 商売をしていても、埋木と感じる時がしばしあります。 しかし、直弼のように真摯に向き合うと道が開けてくる。 時とは、待つこと、望むことを人から引き出してくれるものかもしれません。 そして、それができるのは、個人の力量というよりも仲間からの激励だと思います。 2022年4月19日

朝日新聞のオピニオン欄で「無料を選ぶ私たち」と題して、祇園藤村屋店主の一浦靖博さんがご自身のお店のホームページに アップしているそうです。「送料無料はありまへん」いわく「送料込みや送料当店負担なら、まだ分かります。でも、だれかが 配達しているんだから、送料が無料なわけないじゃないですか。」そして、「送料に限らず、今人の働きにお金を払わなくて なっていると感じます。」「買う時には必ず、売る人、運ぶ人といった人がいるのに、 ネット通販で見えなくなってしまったからでしょうか。」先日も、運送業の先輩社長が、ぼやいていました。 「今の時代、労働への対価が適正に払われていない。」ちょうど原材料が高騰していますが、 本来はきちんと値上げをしなければ、働く人たちにしわ寄せが行きます。 ところが、それを競争の舞台にのせてしまう。その結果、ますます利益は先細る。 この競争の名のもとに、消費者利益のみに偏重して、今の日本経済は疲弊してしまった。 まずは、従業員たちが適正な報酬を得られる社会を目指していくべきでしょう。 当店も今一度考え直してみたいです。 2022年4月9日

NHK「こころの時代」という番組で、大学時代の多分同級生であった若松英輔さんが、 ご自分の伴侶を亡くされた悲しみとともに、旧約聖書のコヘレトの言葉を紹介していました。 タイトルは、それでも種をまく。明日何があろうとも、今を徹底して生きよと。 かたや、YouTube「仏教に学ぶ幸福論」チャンネルでは、高校時代の同級生である 菊谷隆太さんが「桜ソングにみる仏教」と題して語っている姿をお見受けしました。 当時は本人も語っていたのですが、人とは会いたくない真っ只中にあり、その時の悩める彼しか知らないため、 はつらつと仏教を語る姿には驚きました。しかも、分かりやすいワードチョイス。チャンネル登録者が18万人には納得。 そこでは、桜より諸行無常を教えていたのですが、それは、旧約聖書のコヘレトの言葉とも通じていました。 親鸞聖人が出家を求めた時の歌「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」 桜と同じように、はかない人間であればこそ、明日ではなく今、出家得度を求めたと。 同級生のお二人が今を真摯に生きている姿に、私もまた、今を精一杯に生きたいと励まされました。 2022年4月1日