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盾の歴史

盾の歴史は、古代から現代まで様々な文化や地域で発展してきました。盾は、身を守るための防具としてだけでなく、装飾や儀礼にも使われてきました。盾の形や素材も、時代や用途によって変化してきました。以下に、西洋、日本、中国の盾の歴史の概要を紹介します。

西洋の盾

古代メソポタミアでは、木や革で作られた丸い盾が使われていました。これは、敵の攻撃を避けるために動かしやすい形でした。

古代ギリシアでは、ホプロン(Hoplon)と呼ばれる大型の円盾が重装歩兵の主要な装備でした。ホプロンは、木製の芯に青銅や革を張ったもので、重さは約8キログラムありました。ホプロンを隙間なく並べて密集陣形を組むことで、敵の突撃を防ぎました。

古代ローマでは、スクトゥム(Scutum)と呼ばれる四角形や楕円形の盾が使われていました。スクトゥムは、木製の芯に革や金属を張ったもので、長さは約1.2メートルありました。スクトゥムもホプロンと同様に密集陣形に使われましたが、上面にも盾を並べて投擲物から身を守ることもできました。

ホプロンとスクトゥム

中世ヨーロッパでは、騎士や歩兵が様々な形や大きさの盾を使っていました。盾は鎧とともに防御力を高めるだけでなく、紋章や模様で自分の所属や身分を示す役割も果たしました。中世の盾には、涙滴形やアイロン形などがありました。

中世の盾

日本の盾

日本では弥生時代から木製の盾が使われていました。木製の盾は長方形や楕円形などがあり、装飾として糸綴じや塗装が施されることもありました。

古墳時代には漆塗りの革製盾鉄製盾が登場しました。革製盾は和泉黄金塚古墳から出土したものが有名で、鉄製盾は石上神宮から出土したものが知られています。

古墳時代から飛鳥時代にかけては、人物埴輪や盾形埴輪などに盾を表現したものが多く見られます。これらは古墳を守る呪具として制作されたと考えられています。

奈良時代以降は、日本では戦闘が騎射に特化した大鎧が登場し、盾はほとんど使われなくなりました。大鎧には大袖などが盾に相当する部位として機能しました。

中国の盾

中国では春秋戦国時代から木製や青銅製の盾が使われていました。木製の盾は漆塗りや布貼りなどで強度を高めたものもありました。

秦漢時代には鉄製の盾が登場し、重盾と呼ばれる大型のものもありました。重盾は、敵の矢や投石を防ぐだけでなく、突撃時に敵を押し倒すこともできました。

魏晋南北朝時代には、騎兵が使う馬盾と呼ばれる小型の盾が発達しました。馬盾は、木製や革製のものが多く、円形や楕円形などがありました。

唐宋時代には、火器の発達により盾の重要性が低下しましたが、軽量で丈夫な竹製の盾や金属製の盾も使われていました。

以上が、盾の歴史の概要です。盾は、人類の戦闘史において重要な役割を果たしてきた防具です。盾の形や素材は、時代や地域によって多様に変化してきましたが、その背景には人々の知恵や工夫があります。

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