見出し画像

音楽学

音楽学とは、音楽に関する学問的な研究の総称であり、音楽の哲学とも捉えられます。音楽学の分野は多岐にわたり、西洋音楽・民族音楽、歴史的研究・理論的研究、自然科学的研究などに分類されます。音楽学の歴史は古代ギリシアに始まり、19世紀後半に今日の音楽学が基礎づけられました。日本では、日本音楽学会が1947年に設立され、機関誌『音楽学』を発行しています。音楽学を学ぶ人のためには、音楽の基礎知識や分析能力、研究方法や文献の読解力などが必要です。

音楽学の分野

音楽学の分野は、音楽に関するさまざまな研究を行う学問です。音楽学の分野には、以下のようなものがあります。

- 音楽史:歴史上の音楽を研究する学問である。また比較音楽学は音楽史の研究と一部関連している。
- 音楽実践理論:和声法、対位法などの具体的な音楽の理論を研究する学問である。
- 音楽の哲学または音楽美学:論理的な音楽への人間の聴き方を研究する学問である。
- 音響学:音の物理学的な性質を研究する学問である。
- 音響心理学(音響生理学):音に対する人間の聴覚を研究する学問である。
- 音声学:人間の発声や発話に関する科学である。
- 音楽民族学、音楽人類学(民族音楽学):世界各地の民族や文化における音楽を研究する学問である。
- 電気音響学:電気や電子工学と関係した音響について研究する学問である。
- 音楽心理学:心理学的な観点から音楽と人間の関係を研究する学問である。
- 音楽社会学:社会的な観点から音楽と人間の関係を研究する学問である。
- 音楽教育学:音楽教育に関する理論や方法を研究する学問である。
- 音楽言語学:言語と音楽の類似性や相互作用について研究する学問である。
- 音楽図書館情報学:音楽資料や情報に関する管理や活用を研究する学問である。
- 楽器学:さまざまな種類の楽器について研究する学問である。

これらの分野はそれぞれ専門的な知識や技能を必要としますが、相互に関連していることも多くあります。また、これら以外にも新たな分野が生まれたり、他の分野と統合されたりする可能性もあります。

音楽学の歴史

音楽学の歴史は、音楽に関する学問的な研究の歴史です。音楽学の歴史は、音楽の歴史とは異なりますが、両者は密接に関係しています。音楽学の歴史は、以下のように大きく分けることができます。

- 古代音楽学:古代ギリシアやローマなどの文明における音楽の理論や実践を研究する分野です。ピタゴラスやアリストテレスなどの哲学者が音楽に関する著作を残しています。また、一部の楽曲や楽器も現存しています。
- 中世音楽学:中世ヨーロッパにおける音楽の発展や変化を研究する分野です。キリスト教の影響を受けた教会音楽や世俗音楽が主な対象です。グレゴリオ聖歌やノートルダム楽派などが有名です。
- ルネサンス音楽学:ルネサンス期における音楽の革新や多様化を研究する分野です。人文主義や印刷技術の発展により、音楽はより広く普及しました。ポリフォニー(重唱)や器楽曲が発達しました。
- バロック音楽学:バロック期における音楽の特徴や影響を研究する分野です。和声法や対位法が確立され、オペラやオラトリオなどの大規模な作品が生まれました。バッハやヘンデルなどの巨匠が活躍しました。
- 古典派音楽学:古典派期における音楽の様式や理想を研究する分野です。バロック音楽からの脱却を目指し、明快で均整のとれた作品が多く作られました。交響曲やソナタ形式が発展しました。モーツァルトやベートーヴェンなどが代表的です。
- ロマン派音楽学:ロマン派期における音楽の感情や個性を研究する分野です。古典派音楽からの自由化を求め、個人的な表現や感動を重視した作品が多く作られました。国民的な要素や文学的な題材も取り入れられました。シューベルトやショパンなどが有名です。
- 近現代音楽学:近現代における音楽の多様化や革新を研究する分野です。産業革命や科学技術の発展により、新しい音響素材や表現手法が登場しました。また、社会的・政治的・文化的な変動も影響を与えました。印象主義や表現主義、新ウィーン楽派や前衛音楽などがあります。

以上が大まかな音楽学の歴史ですが、これら以外にもさまざまな分野や流派が存在します。また、西洋以外の地域における音楽学も重要な研究対象です。

音楽学の研究方法

音楽学の研究方法は、音楽に関するさまざまな側面を学問的に解明するために、他の分野の手法を借用したり、音楽独自の方法論を発展させたりしています。音楽学の分野は、歴史的音楽学(音楽史や記譜法など)、体系的音楽学(音響学や音楽心理学など)、比較音楽学(民族音楽学や音楽人類学など)に大別されますが、これらは相互に関連しています。

具体的な研究方法としては、以下のようなものがあります。

- 文献研究:音楽に関する書籍や論文、手紙や日記などの文献を読み解いて、作曲家や作品の背景や思想を明らかにする方法です。例えば、シェンカー理論という有名な音楽理論を構築したハインリヒ・シェンカーの思想を研究する場合、彼の著作だけでなく、同時代の人々とのやりとりや社会的・文化的な状況も考慮します。
- 分析研究:作品の中で構造上重要な音を取り出して分析していく方法です。例えば、シェンカー分析という方法では、作品の表層的な音から深層的な骨格へと逆算していきます。このようにして、作曲家がどういう意図で作品を作ったのかや、音楽がどういう法則に従って成り立っているのかを探っていきます。
- 実験研究:音の物理的・生理的・心理的な性質を測定したり、聴取者や演奏者の反応を調査したりする方法です。例えば、音響学では、音の周波数や振幅などを計測して、音程や強弱などを分析します。また、音楽心理学では、聴取者がどういう条件でどういう感情や印象を抱くかを実験して、音楽と感性の関係を明らかにします。

以上が一般的な音楽学の研究方法ですが、これら以外にもさまざまな方法がありますし、新しい方法も開発されています。また、一つの研究で複数の方法を組み合わせることもあります。音楽学は多様で柔軟な学問です。

音楽学の研究者

音楽学の研究者は、音楽の歴史や理論、文化や社会との関係など、さまざまな観点から音楽を研究しています。 代表的な音楽学の研究者としては、以下のような方々が挙げられます。

- ハインリヒ・シェンカー (1868 - 1935) - 音楽理論家。作品の中で構造上重要な音を取り出して分析する方法を提唱した。
- バルトーク・ベーラ (1881 - 1945) - 作曲家。民族音楽学の先駆者として、東欧や中近東の民族音楽を収集・分析した。
- 小泉文夫 (1900 - 1982) - 民族音楽学者。日本やアジアの民族音楽を研究し、世界に紹介した。
- テオドール・アドルノ (1903 - 1969) - 哲学者。音楽美学や音楽社会学の分野で、音楽と社会やイデオロギーとの関係を論じた。
- 西田紘子 (1976 - ) - 音楽理論家。シェンカーの思想やウィーンの音楽文化を研究し、『ハインリヒ・シェンカーの音楽思想』などの著書がある。

これらはほんの一例ですが、音楽学には多様な分野や方法があります。 音楽に興味がある方は、ぜひ音楽学にも目を向けてみてください。

参考文献

音楽学を学べるおすすめの本はいろいろありますが、ここでは3冊を紹介します。

- 『音楽学への招待』(沼野雄司著、春秋社):音楽学の多様な分野と方法を、駄作やプロレスのテーマ音楽など興味深い事例を通して紹介する入門書です。音楽学の自由さと楽しさが伝わってきます。

- 『図解入門 よくわかる最新 音楽の仕組みと科学』(岩宮眞一郎著、秀和システム):、音楽の基礎から仕組み、音の秘密、感動を生み出す仕掛け、最新の科学的知見まで、さまざまな視点から音楽をわかりやすくビジュアルに解説した本です。音楽の謎と秘密に迫ります。

- 『図解入門 最新音楽の科学がよくわかる本』(岩宮眞一郎著、ナツメ社):、音楽の歴史や文化、音響工学や心理学など、音楽に関するさまざまな知識を図解で分かりやすく説明した本です。音楽の魅力と奥深さを感じられます。

関連記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?