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私はゼブラ/アザリーン・ヴァンデアフリートオルーミ (白水社エクス・リブリス) 他

こんにちは、匤成です。僕は、海外作品もよく読みます。今はタイトルの書籍を読んでいます、

文学以外のものを愛してはならない

ホッセイニ“一族”という家族の末裔、ゼブラ。本名ではない。フセイン時代のイランで生まれ、文学を至上主義に武装してきた特異な一族。ピカレスク小説,恋愛小説,現代版【ドン・キホーテ】と紹介されている。

ゆえに、パブロ・ネルーガ詩集や、キャシー・アッカーも当然出てくる。

独学・反権力・無神論 の三つの柱(全て、頭文字A)

を掲げ、「文学以外の何ものをも愛してはならない」を家訓とするホッセイニ一族。その末裔として生まれたゼブラ。

5歳のときサダム・フセインが仕掛けた戦争で混乱したイランを脱出する。途中、母が不慮の死を遂げると彼女は心に空洞を抱え、父はますます文学に沈潜し娘を文学で武装させようとする。イランという国柄、3つのAは盲信・狂信的堕落への危惧だ。

トルコ、スペインと亡命を重ね、最後に渡った“新世界”アメリカでも父娘に居場所はない。22歳になったゼブラは父の死で天涯孤独となり、一大決心をする。現時点でここまで読んだ。

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父親が生きていた頃はまだ大丈夫だったけど、亡命生活で分裂した自己を取り戻すため、亡命の旅路を逆からたどり直す。アメリカでの唯一の師の力添えで、ゼブラは“亡命の大旅行”をスタートする。

バルセロナで彼女を出迎えたのは、イタリアから亡命してきた若き文献学者のルード・ベンボ。二人はすぐに惹かれ合うが、愛に臆病なゼブラは文学の鎧 ―過去の偉大な作家たちの言葉―  で身を固め、ドン・キホーテのごとく不条理な奮闘を続ける…。

「ドン・キホーテ」は書名だけ知っていたが、キャシーの生い立ちや経験が元に、暴力や性の倒錯、ポルノグラフィーの話だとは知らなかった。

西への出口 (新潮社クレスト・ブックス)

似ている雰囲気のものとしてモーシン・ハミッドの「西への出口」がある。国は限定されていないが中東と思わせる街の中で、2人の男女が恋愛模様が描かれていた。ロマンティックに出会い、2人で、平穏な暮らしを望んでいたが国の中は平和とは程遠い。『私はゼブラ』でも主人公は母親を亡くし、父親が寂しい余生を送ってという点も似ている。

どこへ飛ぶか判らないワープゲート

このお話では、その国から逃れるために【どこでもドアやマイクラのネザーゲート】のように全く別の所へ繋がっている扉があるというファンタジー。ただ、高い通行料の割りにどこに繋がるのか分からないので、ギリシャの田舎や英米、肌着だけでワインを飲んでいる高齢男性の庭の物置なんかにジャンプしてしまうこともあった。

当然、言葉も通じなければ生活水準も全く違う。それでカルチャーショックを受けて、右往左往する。ワープしてきた人たちで集まって1つの部屋に閉じ込もっていたり、もっと良い場所を求めてジャンプしようとする人もいる。著者はパキスタン出身の作家だから、これもまたピカレスク小説といえよう。

海外作品にハマらせた小説

僕が海外作品にハマるようになったのは、アンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』だ。

恋人に去られた孤独なヴィクトルは、憂鬱症の皇帝ペンギン、名はミーシャと暮らす売れない短編小説家。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたが、そのうちまだ生きている大物政治家や財界人や軍人たちの「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を頼まれ、やがてその大物たちが次々に死んでいく。そして、やがて大物たちの葬儀に参列するペンギンの影。

舞台は、ソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフ。ヴィクトルの身辺にも不穏な影がちらつく。そしてペンギンの運命は…ひょんな事から5歳だったかソーニャという女の子と同居することになる。20歳ほど差のある女性も、ソーニャを気に入ってと甘い雰囲気が期待を誘う。

ギャングが出てきたりするから緊張感があるけど、終始穏やかなので、ミステリーとかサスペンスの雰囲気は少なくて、後半になってようやく迫ってくるが、ミーシャやソーニャへの慈愛に満ちた文章で、底辺に流れている暗いイメージはあまりない。

新ロシア文学として紹介されている。

海外作品は物語性が豊かだけど、読むのに一苦労する。購入もしたいが翻訳物は高い。

超オススメ すべての見えない光(アンソニー・ドーア)

ラジオから聞こえる懐かしい声が、若いドイツ兵と盲目の少女の心をつなぐ。ピュリツァー賞受賞作。

孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド――。時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描く感動巨篇。

僕はこれをきっかけに翻訳家・藤井光のファンになった。匤成でした。










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