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【映画感想】『告白』 を観る。-3行ポジティブ日記

 この映画を一言で表すなら・・・

「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」

 と言えます。

 いったいどこが「悲しき」なのか、「ダーク」なのか、「ヒーロー」なのか私なりにこの映画を解説しながら感想を書きたいと思います!

 ※ ネタバレ注意です! ※

◆ ストーリー

 とある中学校、1年B組。HRの時間になると担任教師の森口悠子(松たか子)は静かに語り始めます。

「皆さん知っての通り私はシングルマザー。恋人とは結婚する前に別れました。理由は彼が過去の海外渡航歴が原因によるエイズ、家族や娘に迷惑が掛かると言い、私の元を離れていきました。」

「娘はこの学校で死にました。警察は事故死だと処理しますが、真相は違います。このクラスの中のある2人組が私の娘を殺したのです。」

「いまさら警察の検証結果を蒸し返すつもりはありません。しかし皆さんに命の重さを知ってもらう為、先ほど私は犯人AとBの2人が飲む牛乳にエイズに感染した彼の血液を混入しました。」

「潜伏期間は5年程、10数年程で死に至ります。命の重さを知るには十分な時間でしょう。」

 たちまちクラスは大パニックに。恐ろしい担任の教師の告白から物語は始まり、事件に関わる登場人物の独白で物語が紡がれていき、やがて物語は凄惨な結末を迎えます。

◆ 登場人物に着目

◆ 1年B組の担任 森口悠子 (松たか子)

 最愛の娘を殺された恨みから恐ろしい復讐劇を実行します。彼女は過去に生きています。後で詳しく解説しますがここにこの映画のやるせなさ、後味の悪さがあります。

◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)

 クラスでも優秀な成績を修めます。中でも科学の知識は相当なもので、学生発明品コンテストに応募し入賞するほど。

 しかし、コンテストに入賞しても新聞での扱いは小さなもの。それよりも同じ中学生が起こした殺人事件が紙面を大きく飾ります。

 もっと大きな事を、殺人を犯すほどでないと誰も認めてくれないと錯覚し、クラスでも陰気な犯人Bに友達になろうと歩み寄り、そそのかし、共謀し、森口先生の娘を殺す計画を企てます。

 修哉は「誰かに認められたい。褒められたい」事に執着しています。

◆ 犯人B 下村直樹(藤原薫)

 クラスでも陰気な存在。犯人A 修哉の歩み寄りにより、心を開きます。直樹は友達になりたかっただけでした。そして友達に認められたかった一心で犯罪に加担します。

 しかし修哉は友達になりたかったわけではありません。犯罪者になり、有名になりたかっただけでした。森口先生の殺害計画は大詰めの所で誤りを見せます。

 修哉は直樹を「お前は出来損ないだ」と罵り、突き放します。

 この一言により直樹は独断でさらなる凶行に及び、森口先生の娘を殺してしまいます。

◆ 犯人B 直樹の母 下村 優子

 息子を溺愛するあまり、必死に守ろうとします。事件を事故だと思い込み、息子は悪い友達にそそのかされただけだと信じきっています。森口先生との面談でも亡くなった先生の娘に対してではなく、息子に対して「かわいそうに、かわいそうに・・・」と優しく手を握ります。

◆ 若き熱血教師 寺田 良輝先生 通称ウェルテル

 森口先生が学校を去った後にやってきた1年B組の新担任。彼は修哉や直樹が殺人犯であることや、エイズウィルスが混入した牛乳を飲んだ事件を知りません。

 その一件後、修哉はクラスメートから壮絶なイジメに遭い、直樹は不登校になります。

 寺田先生は裏の事情を知らずになんとかクラスからイジメをなくそうと生徒たちに必死に呼びかけたり、直樹の不登校を直そうと熱心に家庭訪問を繰り返します。

 一見よき先生ですがその熱意は空回りし続けます、それはなぜか?こちらも後で詳しく解説します。

◆ この映画の「父性」と「母性」に注目

◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)-悪母と父性の感じられない父

 修哉の母親は科学者であり、研究職に就いていましたが、結婚を期にその道を閉ざします。しかし今度は研究職としての夢を息子に託し始めます。英才教育と言えば聞こえはいいですが、実際は幼い子供に無理な課題を押し付け、何度教えても出来ない息子にヒステリックを起こし、暴力を振るうように。

 結局その家庭内暴力が原因で修哉の父と母は離婚し、修哉の母親は家を去ります。これにより、修哉は母親からの包み込むような愛情や、承認といったものが完全に抜け落ちて育ちました。そのせいで彼は誰かに褒められたい、認められたいといったことに執着していたのです。

 次に修哉の父親に注目してみます。劇中では存在が薄いですが、修哉の口から決定的な一言が出ます。

「最低な凡人と結ばれ、生まれた子、それが僕だ。」

「凡人」、つまり厳格な態度の父親というわけではないが、父としての厳しい態度もなく、リーダーシップや憧れの存在になるほどの魅力を感じない父であったという事です。つまり修哉には父性が欠如していたのです。

 父性とは社会のルールや秩序、良いおこないと、悪いおこないを子に教えるものです。これが欠如すると子供はやっていい事と悪い事、物事の善悪が付かなくなります。

 現に修哉は動物虐待という非行に走るようになります。

 犯人B 下村直樹(藤原薫) -強過ぎる母性の母と父の不在

 直樹の母親、優子の独白によると、父は仕事人間でいつも家におらず、長女は既に独り立ちして家を出ています。彼女にはもう息子しかいません。それゆえに直樹を大切に思い、溺愛します。

 犯人A 修哉の母親とは違い、犯人B 直樹の母親は優しさと愛情に溢れています。母性とは守る、包み込む優しさ、愛情です。

 しかし「母性」が過剰に働いてしまうのも子供に悪影響を与えます。包み込むような優しさのあまり、子供が家にへばりつくようになり、社会へ独り立ち出来なくなるのです。

 もし父性が機能する父親が居れば社会への船出を後押しするのですが、それも叶いません。修哉の父親は仕事人間。下村家には常に父が不在です。劇中一度も出てきません。

◆ この映画で一番父性的だった人物は誰か?

◆ 寺田先生(ウェルテル)の熱意はなぜ空回りしたか?

 寺田先生は明るく、元気な性格。一般的な教師のイメージとは違い髪は茶髪で赴任当初からフレンドリーに生徒たちに歩み寄ります。

 1年B組にイジメがあることを知ると必死になくそうと生徒に訴えかけたり、不登校の生徒(直樹)をなんとか立ち直らせようとクラスで寄せ書きを書いたり、みんなで書いた授業ノートのコピーを直樹に届けようと提案します。さらに直樹になんとか学校に来てもらいたくて熱心に家庭訪問を続けます。

 寺田先生は持ち前の気質でクラスを一つにまとめようとするリーダーシップを持っていて、生徒たちを明るい方向へ導こうというような父性を発揮しています。生徒たちの心に響いてもよさそうですが、実際には空回りします。

 それはなぜでしょうか?寺田先生は牛乳の一件や、前任の森口先生の娘が亡くなった事件の真相を知らないから?クラスの陰で糸を引いている者の存在に気づけなかったから?

 もちろんそれもありますが、共感できるビジョンを示せなかったところに最大の原因があります。

 寄せ書きも、ノートのコピーも、家庭訪問も、提案そのものは素晴らしいですが、生徒たちから真に共感を得ていたわけではありません。

 寄せ書きは分からないように陰湿な悪口が落書きされ、ノートのコピーも提案した時は不穏な間がありました。「家庭訪問に誰か一緒に来てくれないか?」という提案にミズホが選出されますが、クラスの同調圧力によるものでした。

 共感を得なければ発揮した父性も空回りするのです。

◆ 「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」とは。

「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」「森口悠子先生」

 冒頭、生徒たちの前で「いまさら警察が事故と処理したことを蒸し返しはしないが」と前置きした上で「教師として、大人としての責任から子供たちに命の重さを教える」と言い放ち、犯人Aと犯人Bの牛乳にHIVに感染した婚約者の血液を混入したと告白します。

 クラスはパニック、森口先生はそのまま学校を去ります。

 そのまま物語からフェードアウトするかと思われましたが、その後も犯人A 修哉がイジメられるように仕向けたり、犯人B 直樹を精神的に追い込むべく裏で糸を引いていました。

 森口先生は「教師としての責任」「命の重さを教える」と教育者としての使命感からと言いますが、その実は復讐劇であり、れっきとした犯罪です。

 森口先生は過去にフォーカスして生きているので復讐の怒りに打ち震え復讐劇を演じるのです。

 私は過去に執着せずに、もっと今にフォーカスして生きればこれからの人生で自分の幸福が見つかるのに・・・・とは言えません。

 なぜなら森口先生は最愛の娘を自分が担任する生徒に殺されたのですからね。

 私にはそんな気持ちを無視した正論は言えません。

 父性とは規律、規範を示す、裁く、という機能もあります。皮肉なことにこの物語で一番父性を発揮していたのは森口先生でした。

 正義のヒーローなら悪を裁くと街や民衆に平和と秩序がもたらされますが、この映画は混沌を極めます。

 私はここからの一連のシーンで「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」という言葉を込めました。

 物語の途中で女生徒(ミズホ)が街で見かけた森口先生に声をかけるシーンがあります。ミズホは犯人A 修哉を気にかけていました。

 ミズホは森口先生に訴えかけます。

 「修哉は母親に認められたかったんです。

  誰かに認められたかったんです。」

 この言葉に森口先生は不気味な大笑いという形で応えます。口や声では笑っていますが、目が笑っていません。そんなことは娘を殺された言い訳にすらなりませんからね。

 次の瞬間、「憎しみを憎しみで返しても何にもならない」と森口の婚約者のセリフがフラッシュバックします。

 森口はミズホの言葉を笑い飛ばし「娘を殺された恨み、赦しません」と静かに返します。

 そして森口はミズホに背を向けその場を去ります。

 暗い夜道を歩く森口。その目から涙がこぼれ始めます。

 この涙は復讐に対する揺らぎでしょう。

 立ち止まり、膝から崩れ落ちボタボタと落ちる涙。

 しかしその直後、冷静な表情に戻ると

 「ばかばかしい」と言い放ち、立ち上がるのです。

 僅か数十秒のシーンですが、この葛藤、揺らぎ、そして完全にダークサイドに堕ちてしまった森口悠子の決心のシーンに私も涙が止まりませんでした。

 ミズホの話をキッカケに森口は修哉の弱みは母親であることを掴み、更なる復讐計画に出ます。

 ここからクライマックスに向けて誰も幸せになれない、止められることのない復讐劇が始まるのです。

◆ まとめ

 私なりに物語の「父性」と「母性」に注目して読み解いてみました。「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」は途中ミズホの言葉に、過去の婚約者の言葉に一瞬立ち止まりましたが復讐は止まる事はありませんでした。物語は恐ろしい結末を迎えますが、この先森口悠子さんの人生に幸せが見つかるように願って止みません。

今回の映画感想は下記の書籍から得た知識をもとに書きました。

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