柿山双葉

現代詩を書いています。たまに、思いついたことも。

柿山双葉

現代詩を書いています。たまに、思いついたことも。

最近の記事

【詩】1978年のことはわかりません

くちびるは判子。コンパス歩きで押していくので、いちいち避けてください。スイカの種のぼんやりあかるい、えぇ、そんな、せっかくの寝転がる畳の上までびっしりと格子状の、それぞれのぴかぴか電話番号を握りしめているってさ、見たことも聞いたこともない〈1978年〉ホヤホヤの綿ぶくろに刺す針の先は火で炙っておいてくださると助かります、こんなふうに、こんがり。

    • 【詩】爪の裏で会いましょう

      ほんのささいな、ほんのささいな花瓶をください。大団円をむかえなかった昨日のように、まあるくおさまらなかった明日のように、今日もガビガビ。 落花生というものの、あずき色したペンダント。 もっと遅く、足の裏がガムテープになって、ぺたんと貼りつく、もっと遅く、蟻の行列にも追いこされ、いい天気だなぁ、この22℃を握りしめたり首に巻きつけたりしたい。 しだいに涼しくなってくる。 うたたねの線香花火ぱちぱち、まつ毛まっ黒焦げでもそのままで、もう眠いから誰とも会わない、どうしてもと

      • 【詩】くるぶしをのぼったら、どこかなどこかな診察室

        くるぶしの階段をのぼると波止場についた。あのトウモロコシをちぎりながら、そうかもしれない、そうかもしれない、と納得した時間だけ広がる海。春のまぼろ橋、薬指からぺたんと座る。 この前、どこかなどこかな診察室でもらったリップクリームのふたを外すと、かぽん、かぽん、かぽん、こだまする。こだまはそのままカリフラワーでもいいし、すこし捏ねると舟になる。で、水の上に浮かべてみたり、ひっくり返して潜水艦に固めてみたり。 ふさふさのパジャマを着た、いびきをかいている朝焼けについて、なにも

        • 【詩】買いものの名前

          買いものの名前はなんだろう。ハムカツをこすり合わせるように、つい、上から2番目の棚にある商品をぜんぶカリカリにしてしまった。ものすごい煙と、咳きこむキツネ。梅干しみたいにすっぱい煙のかすみから、グロッケンのラが、なみなみとこちらへ。あ、これが名前なんだ。 買いものの名前を焦がしちゃいます。 ボロボロの耳栓を捨てられないばかりに、ショッピングのものまねがヘタなまま大人になるなんて、おかしいね。でも、ボロボロは焼き魚と同じように火が通っていて、磁石になる。そういう磁石は、お支

        【詩】1978年のことはわかりません

          【詩】オセアニアを嗅いだら

          おしぼりを用意しました。こんなにも蒸し暑いのに、腕という腕がほかほかで、ねじってねじってねじります。そうすると、どうでしょう。ユーカリの木を植えたことになりませんか? なんでもかんでも、オーストラリア。ほら、思い出してみてはいかが、あの夕暮れのむくむくトランポリンを。すぐそばに置きウクレレが用意されていて、ご自由にお持ちください、とのこと。弾けないウクレレをつまびきながら、ぴょんぴょん跳ねる。ぴょん、ぴょん、ぴょん、オーストラリアがほぼニュージーランドになっていくし、ぴょん

          【詩】オセアニアを嗅いだら

          【詩】おしるこプール

          カボチャをくりぬきたい。カボチャをくりぬいてお椀をつくりたい。そのなかにおしるこを注ぐとちょうどいいのはわかっているから、とぷとぷ、ちょっと待ってて、とぷとぷ、焦らないで。べつに誰かから急かされているわけではないけど、ひとりごとのリズムってことで。 メモに書いてあるように、スプーンでおしるこをゆっくりかきまぜる。手順その一、手順その二、手順その三、OK、ええと次は、ひゃあ、べとべとの手でメモ用紙を触っちゃった。おしるこ色の指紋がじんわりしみていく。なんてしみじみしてる場合じ

          【詩】おしるこプール

          【詩】うつぼみ

          いるいる、いらない、やっぱりほしい、すべってころんで駐輪場、あわてる気持ちをまぶしたサラダはご自由にどうぞ、みたいなタップダンスの練習用につける花のかんむりです、と説明書には書いてあるけど、ふだん踊ったりするような趣味はないから、なんとなくお出かけしましょうか?なんていうときに使う。 この花のかんむりを、フラクラって呼んでる。 安いわりによくできたフラクラ。でも、そのままでは心細い。ということで、12束セットを買っていろいろ組み合わせていると、これ、フードになるかもと思っ

          【詩】うつぼみ

          【詩】ベルギーのこたつ

          とんつく、とんつく、とんつく、とんつく、こちらは宝物。それはさておき、大切なものはあたたかい。どうあたたかいの?というと、年がら年中おなじ靴下をはいているようなものです。ちょっとさみしいね。 そこからはもう、矢継ぎ早。あたり一面のピンを外してまわって、どんぐりだけは、このどんぐりだけはこぼさないように、と大また歩きで川べりを行ったり来たり、飽きてもやめない、てんてこまい。 まにあわない人はだれでも、そう、ほかほかのブランコに乗り、おしりを焼かれながら、こんなにも森は震えて

          【詩】ベルギーのこたつ

          【詩】森羅万象のつぶり、レンジでチン

          けばけばしい色のお問い合わせが絨毯のように広がっているので、まぶしくて、ゲホゲホむせて、しどろもどろにつま先までつぶってしまう。あら、ずいぶんまんまるですこと、冷凍モウセンゴケみたい、と言われる。でもほんとうは、心底つぶっている。森羅万象つぶっているのに。 ときどき、レンジでチンしてほしくなる。直接頼むのもなんだか申し訳なく、ついデリバリーですませてしまう。先月はあわてんぼうの新人さんがやってきて、こわれた洗濯機のように690回ぐるぐるぐるぐる、ああすみませんすみません、あ

          【詩】森羅万象のつぶり、レンジでチン

          【詩】梅にうぐいす、野生の毛布、爪切り日和にまばたいて

          とん練りのお開きにお箸と器をよせて、あつあつ白梅の木の下でたっぷりと。そうですね。それはひとえに、こまごましい沈殿うぐいすのおかげでしょう。 なだらかな山。 だいたい70人くらいの子供たちに野生の毛布をつかまえてもらおう、という教育は、梅のごきげんであることに左右されすぎてはいけないのだから、念のため粉末ポカリを嗅いで、くしゅん。 雲が割れて半熟たまごが落っこちてきたらどうしよう、どうしよう、なんて心配そうにうろちょろしてたらしょうもないね。爪を切るたびに、ぱち、ぱち、

          【詩】梅にうぐいす、野生の毛布、爪切り日和にまばたいて

          【詩】めくれる選手について

          アロワナのくちばしを風船にくくりつけて飛ばす約束をおぼえていてくれて、どうもありがとう、と言ったのは、その選手でした。 いかがですか、というのが選手の口癖で、休みの日もついつい日の光も届かぬ裏山の大竹林(お気に入りの場所)で練習に励んでしまい、体のあちこちをぶつけては、いかがですか、と心配そうにじぶんの体をさするのでした。 ページをめくって読むことのできる文字選手は世界でただ一人ですので、選手を火にくべてはいけません。選手をめくっては、だめなのです。ボールペンで書き込んで

          【詩】めくれる選手について

          【詩】まあご丁寧にエクスプレス

          浮き輪の住所を知りませんかと、震えながら怯えながら、たずねる声はベージュの色して、新幹線でどこまでも、西へ西へとまっすぐに。 ちょうどいい眺めの部屋から、茶摘み屋さんが顔を出す、モンスーンと握手して、これふるさとのおみやげですと、かえるの紋や味噌ちからこぶ、びしょぬれながらもいただきました。 「週末は、まあご丁寧にエクスプレスで。」広告を見てやってきて、まあご丁寧にコミュニティ、その場かぎりにこんにちは、アクリル製の窓の外、どこまでいってもお茶畑。こんなに緑なのだから、緑

          【詩】まあご丁寧にエクスプレス

          マイペースにつづけること

          ふと、たいへんなことに気づきました。さっきから、家事をしたり冷たいブレンド茶を飲んだりしながらはずみをつけようとしているんですけど、どうしてもダメです。このまま考えこんでいても埒が明かないと思いますので、いったんストップします。 で、ストップと言いながらも2時間すぎてしまって、時間の流れがヘンな感じ。どうしましょう。 すこし横になって、ふうっと一息。やっと落ちつきました。それで決めたのですが、これから書きものをつづけていくために、毎日きちんと欠かさず書こうとするのをやめよ

          マイペースにつづけること

          【詩】手袋の羽休め

          かぴかぴの割り算とびしょびしょの割り算のすきまに溜まった瑠璃色のふりかけを瓶に詰める作業をかれこれ12年つづけているその道の職人さんがテーブルに置いていった小さな手袋は、みみずくに似ている。 まぶたを閉じて、ぴくりとも動かないのは、きっと寒さのせい。手袋をつけることは空を飛ぶことで、手袋を外すことは木にとまって休むこと。羽ばたきの縫い合わせに、名残惜しさもありつつ。 この手袋に、墨汁を一滴だけ垂らしたい。

          【詩】手袋の羽休め

          【詩】シャワーはいかが

          256個のいちごロールをものまねしたのが細胞分裂だと思っていて、とにかく、センサーのあちこちに葉緑体がまぶしてある、そんなひっかき傷の音でした。 ひんやりとしたドラキュラ調のノイズにまみれて、右上にぐしゃっと固まっている、炭酸ガム。 振り返ればまたゾロ目、みたいな日々におすすめするのはこちらのシャワー。これからの光合成のために、つめたいシャワーはいかがですか?肌に触れない、服を着たまま浴びるのにちょうどいい、すこし耳障りなシャワーです。 ギャリギャリと鳴るぶどうの針が、

          【詩】シャワーはいかが

          【詩】心当たりで帰ろうよ

          ★2023年に書いたものを一部修正した上で再掲しています。 ガラガラガラガラ、ポン。はい、おめでとうございます。3等賞の心当たりです。どうぞお持ち帰りください。 そうこうしているうちに、あたり一面の心当たりに雪が降ってきました。 心当たりをもてあまして、電車が目の前を通りすぎていきます。ガタンゴトン。両手もしもやけで、心当たりにかじかんだのです。 さむいし、心当たりがひどくてくしゃみがとまんないや。鼻水もすんごい出る。ズルズルズウ。そういえば、西口に新しくパン屋さんが

          【詩】心当たりで帰ろうよ