見出し画像

鳩の郵便屋さん

ポストを開ける。
 
何もない。
 
この1週間、郵便物はない。
 
最近ではデジタル化が進み、
届くものといえば重要と判の押されたものだけ。
 
誰かと文通でもしようかなあ…。
 
それとも課金しちゃおうかな…。
 
いやダメだ。
よく考えろ…。
 
…見たい。
 
どうしても、あれが見たい。
 
シャリーン!
 
…しまった!

…勢いで。
スマホには決済完了の文字。
 
5分もせずに配達員がやってきた。
 
そしてグレーに、
黒のラインの小袋を渡される。
 
「スタンダードなので15粒です。
 お好きな場所に置いて下さい。
 置く時はこの……
 ひとつひとつに小さなボタン見えます?
 これを押すと信号が発信されます。
 時間帯は早朝7時から夕方4時まで。
 それ以外は時間外ですのでよろしくお願いします。
 本日はありがとうございました」
 
そういうと配達員はあっという間に帰った。
 
現在の時刻は15時。
 
試してみよう。
 
袋から1粒取り出すと、
1cmほどの球体をつまむと、
配達員の言ったボタンが、
指の感触でわかる。
 
私は胸を高鳴らせボタンを押す。

キューーーーゥ。 

私にしか聞こえないほどの、
微かな音をボタンが発し始めた。
 
私はそれをポストの上に、
転げ落ちないように置く。
 
するとどこからか鳴き声がしてきた。
 
ホーホッホッホッホー
ホーホッホッホッホー
 
前の通り沿いの街路樹を抜けて、
一羽の鳩がポストの上に舞い降りた。
 
少しポストの上で立ち止まると、
何度か小首をかしげてる。
 
粒を一度見るが知らぬふりをして、
ポストの上を一度往復して見せた。
 
(可愛い)
 
そして粒を咥えると羽を広げ、
もと来た街路樹の方へと飛んでいった。
 
スタンダードコース月額500円で15粒。
一粒で一度、鳩型ドローンを呼ぶことができるサービス。
 
本来は郵便物を届ける鳩型ドローン
すっかり減少した郵便事業を再生しようと、
日本○便が伝書鳩から発想を得て導入した高性能ドローン。

その手紙を届けに来る愛くるしい姿が、
子供達を中心に爆発的人気に。
 
このご時世にもかかわらず、
お手紙ブームが起きている。
 
ちなみに当初は候補として、
が同時開発されたらしいが、
持ち運べる重量の問題で、
鳩が正式採用されたそうだ。

その後、雀型ドローンは、
日本郵○の宿泊施設のマスコットとして、
大活躍しているようだ。
 
(生で見たい!お宿に泊まりたい)
 
鳩型ドローンの配達において、
心配される強風時の対応は、
緊急モードとしてその場で飛行停止。
着地したのち首を振りながら、
徒歩にて届けてくれるらしい。
 
ただし時間内配達可能の場合のみで、
配達不可能と判断されれば途中から、
リス型のお助けメカが郵送代行してくれるらしい。
たまにネットの情報として黒猫型を見たという噂もあるが、
それは定かではない。
 
(リスも見たい!)
 
聞いた話によると盗難対策も取られており、
配達途中の配達物が何者かに強奪されると、
直ちに数十羽の鳩が商品タグを頼りに泥棒の元へ集結。
犯人をつつき回して退治するという話だ。
 
(お気の毒…でも見たい)
 
そして来年には大型荷物輸送型として、
ペリカンも登場するという噂まで。
 
恐るべし日○郵便。


※この記事はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
しかし、30年後はさだかではない。

この記事が参加している募集

この経験に学べ

お疲れ様でした。