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発条は人のロマン

御年80歳の未来さんと光里さん。
今日も井戸端会議で盛り上がる。
近くて遠い…未来のお話。
 
光里「その後、車の調子はどう?」
未来「快適よ。
   まあ、あまり頻繁に使わないから」
 
光里「そうだよね。車って使う機会ないよねぇ。
   そもそも、家を出ることが減ったしねぇ」
未来「そうね。私も美容院通院ぐらいかな。
   つまりは自分のに関わることには、
   まだ車が必要みたいね」
 
光里「買い物は宅配で大丈夫…
   でも、ちょ~っと高くつくけどぉ」
未来「それで思い出した。
   近所のスーパー。
   そういう声に答えて、
   自家用車代行サービス始めたわよ」
 
光里「それなにぃ?知らない」
未来「今までは店や業社の、
   宅配ドローンが配達してたでしょ?」
 
光里「うん」
未来「それが今度は自分の自家用車が、
   ドローンの代わりに商品を運んでくれるの」
 
光里「ん~ん?」
未来「つまりあらかじめスーパーに
   注文しておいて自動運転車に
   取りに行かせるのよ。
   到着するとスーパーから連絡が来て
   ネット決済確認後、品物の積み込み。
   あとは帰宅信号送れば戻ってくる。
   手数料は運送費より割安よ」
 
光里「そうかぁ。頭いい…
   でも自動運転車高いからぁ」
未来「そこよね。
   宅配ドローンを抱えてる運送会社も、
   まだ自家用車市場が高値だから
   やっていけるけど、
   価格破壊が起きたら大変ね」
 
光里「そうなると一家に一台、
   輸送車完備だもねぇ」
未来「でも、近場配達はトラブルもあるし、
   設備投資より維持が大変なんだって。
   よく昔の話で、
   タクシーの近場拒否ちかばきょひって聞いたことない?」
 
光里「それも知らない」
未来「あったらしいのよ。
   やっぱり近場ってもうからないのよ昔から。
   一律料金って商売として難しいのよ。
   仕組みを工夫しないと」
 
光里「走った距離でいくらではダメなのぉ?」
未来「それだと今度はお客側がうるさいのよ。
   料金内で済ませようとするから。
   この道じゃないとか信号でつかまるなとか」
 
光里「そうかぁ。
   時間でも料金取られるしねぇ。
   それでもタクシーって、
   結構、今でも走ってるよねぇ」
未来「料金が劇的に安くなったからでしょ」
 
光里「どうしてぇ?」
未来「新技術よ…発条(ゼンマイ)って知ってる?」
 
光里「食べるやつぅ?」
未来「そうよね。
   今は食べるやつだけよね…違うの。
   昔よく時計とかに使われた技術なのよ。
   骨董品探しても、
   なかなか出くわさない代物ね」
 
光里「全く知らない」
未来「簡単に説明すると細長い板状の金属を、
   棒にグルグル巻きにして、
   その板が戻ろうとする力を、
   動力に利用してる仕掛けって感じ。
   手動でね」
 
光里「ピンとこないけど、
   なんか面倒そうだねぇ」
未来「そうなの。
   あっという間に止まるんだって。
   昔は一日何回も巻かないと
   いけなかったらしいの。
   でも最近、
   長時間ゼンマイってのが開発されて、
   それがタクシーの動力として
   試験採用されてるの」
 
光里「そのゼンマイで車が動くのぉ?」
未来「そうよ。この動画見て。ほら。
   人が電動ドライバーみたいなのを
   差し込むでしょ。
   これで車のゼンマイを巻いて…
   なんかこの人、少し踏ん張ってる?
   きっとゼンマイが硬いのかもね。
   でもこれで1分ぐらい?
   で、もう車に乗って走ってる…
   凄いでしょ?
   排気もなければ、電気や燃料もいらない」
 
光里「なにこれぇ?夢の乗り物じゃない!」
未来「そうよ。長距離にはむかないけど、
   それこそ近場の移動には最適よ。
   これが一般化すれば色々変わるわよ…
   世の中が」
 
光里「すごいこと考える人いるんだねぇ」
未来「昔こういうおもちゃがあったんだって。
   ゼンマイで走る
   ブリキプラスチックのおもちゃが。
   それを大きくして、
   人が乗れるようにしようという
   プロジェクトが実際あったらしいんだけど、
   出来上がったものは動力が電気だったの。
   それを見てそうじゃないだろって思った人が、
   研究開発を繰り返して
   やっと完成させたらしいわよ」
 
光里「はあぁ。元はおもちゃなんだ」
未来「過去の技術に助けられるなんて、
   なんか不思議な感じよね」
 
光里「ほんと不思議ぃ。乗ってみたいなぁ」
未来「ワンメーター200円だって」
 
光里「やすぅ!どうしてぇ」
未来「ゼンマイ巻くための、
   電動ドライバーの
   充電代だけだからじゃないの?
   あっ、あと運転手さんとの
   会話が必要なければ、
   半額ってチラシに載ってたよ」
 
光里「100円?!
   このタイプの自家用車が発売されたら、
   色んな問題が解決されそう」
未来「注目の技術ね。
   でもあれが解決されないと私は無理ね」
 
光里「あれってぇ?」
未来「ゼンマイ巻くドライバーよ。
   あれじゃあきっと、
   ゼンマイじゃなく私が回るわよ」
 
光里「ああぁ。確かにぃ」
 
 

これは未来の話でありフィクションです。
でも30年後はさだかではない…。

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