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遊星からの遊人

地球の外気圏がいきけん

ワレワレハ
 やっと着いたよ」
「遠かったっすねぇ」

「お前が急に地球で、
 あれ食べたいとか言うから…。
 名前なんだっけ?」
シュールストレミング!」

「何回聞いても、覚えられん」
「2回目なんですから、
 覚えて下さいよ」

「お前も物好きだね。
 わざわざこんな遠い星まで、
 仕事サボって来るなんて」
「先輩。
 こんな刺激的で美味い食べ物、
 うちの星にはないじゃないですか。
 気圧が高いせいか、
 こう…なんていうか…
 味付けがサラッとしてません?」
「確かに薄味だね」

「それに比べてこの星の食べ物は、
 ひと口食べれば、口の中で大暴れ!
 クレイジーで超サイコーなんすよ!
 食べるっていうことは、
 こういうことなんすよ!!」
「まあ、お前ほどじゃないけど、
 俺も嫌いではないな」

「でしょ!
 もうあの味が、
 忘れられなくて忘れられなくて。
 前回来たのが、かなり前でしょ?」
「2週間前…だったかな?」

「でもその時じつは…
 奥さんにバレたんすよ」
「なんで?」

「臭いって」
「当然だな。
 あんな臭いもん食ったんだ」

「あまりに臭すぎたのか、
 身体の中の老廃物のせいだと、
 妻が勘違いされて、
 デトックスの機械にかけられたっすよ」
「災難だったな。
 それでも次の日、
 少しにおったぞ」

「もうデトックスは懲り懲りです。
 だから妻にはもう一度行ってくるとは、
 言えないです。
 だから今日を選んだんすよ」
「なんかあんのか?」

「今日はなんと!
 うちの奥さん…
 婦人会でお泊りなんです!」
「いや別に奥さんの
 留守じゃなくてもよくないか?」

「いやっすよ。
 うちのデトックスマシーン安物で、
 とってもマニアックな洗い方するから。
 あれは誰でも心折れるっす」
「そうなの?…よくわからんが。
 おい!
 お喋りしてるうちに、
 降下ポイント過ぎたぞ!」

「あちゃあ。
 帰りの配達のことも考えると、
 スウェーデン…無理っすね」
「どうすんだよ?
 わざわざ来たのに」

「大丈夫っす。
 もうひとつ穴場があるんすよ」
「穴場?」

「日本っす」
「日本?」

「先輩知らないっすか?
 今ネットで話題のジパングゥー!」
「初めて聞いたよ」

「ダメっすよ先輩!
 それはもぐりっす。
 日本って国は小さな島国なんすけど、
 全国民が毎日、
 臭い物を食ってるらしいっす。
 やばくないすか?」
「かなりやばいな!」

シュールストレミングは、
 毎日というほど食べないって、
 現地の人言ってたけど、
 日本は毎日っすよ!
 これぞ、オー!エキゾチック!」
「お前もやばいな。
 じゃあ、降下は日本なら、
 どこでもいいんだな?」

「ノンノン先輩。
 日本の最強最高食材…
 食べに行きましょう」
「なんだそれ?」

くさや●●●
 行き先は~伊豆大島いずおおしま!!」
「お前、日本より更に小さいじゃねえか。
 こんなとこ降りたら目立つだろ」

「問題ありません。
 隣に八丈小島はちじょうこじまという無人島があります。
 なんなら東京竹芝たけしばからフェリーもあります」
「お前は地元のガイドか。
 わかったまず、その無人島に降りるとしよう」

「ラジャーです!」

「よし着いた。
 お前、初めての場所だから、
 目立たぬようひとりで買ってこい」
「そうっすね!」

「あとこれは俺の分のお金」
「……♪」

「なんだよ!早くいけ!」

5分後。

「買ってきました先輩!」
「これは…シュールストレミングに
 負けじ劣らずだな」

「超美味いっすよ!」
「もう食ったのか?!」

「はい!店の前で我慢できずに、
 2枚丸飲みしました!」
「目立ってんじゃねえかよ!」

「そうすか?店の人は、
 この味がわかるのはつうだねって。
 つうってなんすかね?暗号っすか?」
「知るわけねえだろ。
 またこんなに買い込んで。
 お前、星に持ち込めねえんだから、
 帰るまでに食えよ」

「あれ?テイクアウトは、
 軽減税率けいげんぜいりつじゃなかったでしたっけ?」

「お前、地球にされてんな」


これはショートコントであり、
フィクションです。

お疲れ様でした。