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【常々草】怯えていた事がちっぽけだった件

小さいはずなのに大きく見えてしまう。
大きいのに、ちっぽけに見えてしまう自分。
人は他人の郷に入った時、みなその郷の中の自分にがっかりしてしまう。

人は生まれながらにして比べる生き物。
比べるもの、相手、対象、それら無しでは人間らしく生きることができない。呼吸と栄養補給さえしていれば、生きていけるのに。

郷に入ることとはつまり、生まれるということ。
郷の中のことは郷の中でしか知ることはできない。
新たな郷に入るたび、人は生まれ、育ち、郷に溶け込んでいく。

少しずつ、少しずつ、時間をかけて。

やがて郷に入り溶け込んだ時、自分より後に生まれた物をまるで育っていること前提で期待し始める。期待に応えられなければ、それらを悪とする。

計算ができない、覚えられない。もうやりたくない。
そう思うほどに。


「慣れれば大丈夫」

すでに郷で育ち続けている子供は生まれたばかりの私にそう言いかけた。
何の𠮟責も、あきれもなく。10も離れた年上だってのに。

春下がりに可憐に舞う揚羽もそう。
ちっぽけな卵から始まり、さなぎ。
ゆっくり、じっくり、時間をかけて準備する。

初めから綺麗な揚羽などいないのだ。
誰しもがチャレンジャー。

おさまりの悪い郷の中で、今日もわたしは育っていく。

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