入管法改正について

元入管職員のヨーキです。
今回は標題の通り、入管法改正について、
概要をきちんと読み解いていこうと思います。

報道を見ている限りでは、
「難民申請者が強制送還対象になる」
この一点のみが強調されており、
正しく伝わっていない部分が多いのではないかと感じます。

以下、入管の広報を読み解いていきます。
入管法改正案について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)

(1)保護すべき者を確実に保護
①補完的保護対象者の認定制度を設ける

難民条約上の難民に該当しないが、保護すべき外国人を、
「補完的保護対象者」と認定し、保護する。

そもそも、難民条約上の難民とはなんでしょうか?
難民の地位に関する1951年の条約第1条には、
こう記されています。

「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」

難民の地位に関する1951年の条約 – UNHCR Japan

人種、宗教、国籍、特定の集団の構成員、政治的意見を理由に、国籍国の政府から守られない者、これが条約難民です。

紛争避難民は、条約上の難民ではない、
というのが政府の見解です。

直近でいえば、ウクライナの方々は「避難民」です。

今回の入管法改正では、「避難民」は「難民」ではないが、
難民に準じた保護を行っていきましょう、という内容です。

これにより、今後の情勢にもよりますが、避難してきた
ミャンマーやウクライナ、シリアの方などが、
補完的保護対象者として、適法に在留できる制度ができるのだと思います。

②在留特別許可の手続を一層適切なものにします。
・在留特別許可の申請手続を創設
・在留特別許可の際に考慮する事情を法律上明確化
・在留特別許可の不許可理由を通知

在留特別許可は、法務大臣の裁量によるものでした。
とはいえ、時の大臣が、個々の外国人の事情を考慮して、
判断してくれるわけありませんよね。

入管の中では、退去強制手続の中で、
退去相当か?在特をあたえるべきか?
という判断が行われていました。

これからは、申請ベースになり、
かつ理由も開示もされるということで、
わかりやすくなる可能性はあります。

入管としては、退去強制手続進行中に在特が出るか、
裁判で国が敗訴でもしない限り、在特を出す機会はなかったと思いますが、
(あとは世論に強引に押されたとき)
申請→不許可の仕組みができることで、
よりNOを伝えやすくなるのではないかと思います。

③難民認定制度の運用を一層適切なものにします。
・難民の定義をより分かりやすくする取組
・難民の出身国情報を一層充実する取組
・職員の調査能力向上のための取組

これらは、法改正ではなく、広報・アピールですね。
一つ目は、
「迫害」等、具体的意義の明らかでない文言について、
具体的に説明し、ポイントを整理する、とあります。

逆に言えば、どうやって今まで審査してたの?
と聞いてみたくもなりますが……

難民申請者の中には、
経済的に困窮している、マフィアに追われているなど、
明らかに該当しない方も多いです。(体感です。)
日本は条約難民を保護する、条約難民とはなんなのか、
これらを難民や難民支援者に対して、
広報を行っていく狙いがあるのだと感じます。

出身国情報はとても重要です。
例えば、母国でA組織という対政府組織で先頭に立ち、
政府系のB組織と血みどろの争いをしていたが、
B組織がその後政府と非常に近い関係になり、
日本に逃げてきた。母国に帰ったら、
B組織の息のかかった警察に捕まり、きっと殺される。

これはもう難民中の難民ともいうべきケースですが、
A組織ってなに?B組織ってなに?
実際、どんな争いが行われてたの?どうなったの?
という、本人の供述を裏付ける情報が必要となります。

既に取り組んでいる内容ではありますが、
もっともっと、情報は充実させていくべきでしょう。

調査能力向上、こんなのはさっさとやればいいと思います。

(2)送還忌避問題の解決
①難民認定手続中の送還停止効に例外を設けます。

これが、これだけが、報道されている部分です。

現状:難民認定手続中(送還できない)
改正案:3回目以上申請者(送還できる)
    3年以上の実刑(送還できる)
    テロリスト(送還できる)

まず、3回目以上の申請者への送還については、
(1)③に記載されていた
「認定に必要な出身国情報や調査能力をより向上させる」
これが実現して、はじめて実行できるものですね。

3年以上の実刑者やテロリスト、これはいわずもがな。
難民支援者の中で、
これらの方を支援している団体ってあるんでしょうか?

普通に生活していただけなら、3年の実刑は食らわないし、
日本にいてもらったら困るような人だと思いますので、
特に問題はないかと思います。

テロリストについてコメントすることはありません。

②強制的に退去させる手段がない外国人に退去を命令する制度を設けます。
・退去を拒む自国民を受け取らない国が送還先の者
・過去航空機内で送還妨害行為に及んだ

まず、受け取らない国っていうのはイランのことです。
ほかにそうした国はあるんでしょうか?

送還の際、パスポートのない人間は、
大使館に連絡して臨時旅券を発行してもらったりするんですが、イランは協力してくれなかったりします。

そして、イラン人は大体薬物関係でやらかしています。
売人です。日本にいてほしくないですよね。

売人です!捕まりました!
日本人と結婚したから帰りたくないです!

こんな話、入管にいればいくらでもあります。

二つ目は、これもよくある話です。

飛行機とは、機長が絶対的権限を持っています。
コロナ時、妖怪ノーマスク男が飛行機乗れなかったのも、
機長パワーです。

送還は通常、民間の飛行機を利用します。
つまり、フィリピン航空やら、シンガポール航空やら、ベトナム航空など、
民間のお客様もたくさん乗っている飛行機で帰るわけです。

強制送還とはいえ、簀巻きや猿轡はできません。
暴れたり、奇声を上げ続ければ、機長から飛行機下ろされて、
はれて送還失敗、というわけです。

ユー、早く自分で帰らないと、
刑務所ぶちこまれるよ、ということですね。

収容編についてはまた次回。




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