眠れない夜は、美しい記憶を抱きしめろ。
「ダニエラが亡くなったわ。」
上司が悲壮な顔で私たちにそう告げた。
部屋に入ってきた上司の顔を見た時から、私はただならぬ気配を感じていた。営業部のダニエラは大腸がんで5年以上闘病していた。あらゆる治療を試し、手術も経験した彼女は痛々しいほど痩せてしまったが、ここ最近は週に2回ほど出社していたので、皆が「もしかしたら乗り越えられるかも」と淡い期待を寄せていた矢先だった。言葉が出ない、とはこのことで、停止した脳の代わりに溢れてきたのは涙だった。同じ部屋にいた同僚と、上司と、抱き