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【グループ展レポート】HOMEWORKS 2023に行ってきました!

こんにちは。FUTUREKディレクターの鎌倉です。
2023年11月25日、26日にBlend Studioにて開催された「HOMEWORKS 2023」に行ってきました! 弊社のフロントエンドエンジニア・辻本さんが作品を出展していた本展覧会。実際に触れて体験し私が感じたことや、ご本人から聞いた開発秘話などと共にご紹介します。


1.いざ! 展示会へ

「HOMEWORKS」は、デジタル・メディアアート作家たちの「思索と実践」にふれる作品展で、今年のテーマは「あたらしい原風景」とのこと。
入り口で受付を済ませると、まず弊社でフロントエンジニアとして活躍している辻本さんの作品を目指します。こちらの展示会では作品の隣に制作者ご本人がいて、その場で感想を伝えたり質問をすることができました。

フューチュレック フロントエンジニア 辻本氏

2.ノックするとノックが返ってくる

辻本さんの作品は、簡単に言うと「ドアをノックすれば、ドアの向こうからノックが返ってくる」と言うもの。
さっそく、設置された大きなドアをノックさせてもらいます。適当に何度かノックするととっても不思議! このドアの向こうに絶対に人がいる、そんな感覚になるのですが、実際に扉の後ろを覗いても誰もいません。あるのはパソコン、そしてドアに貼り付けられたモーターやスパナだけ。
仕組みを聞いてみたところ、ノックし返してくる相手はChatGPTで、人間側から送られるノックに対して、何か解釈をしてノックし返してくれるようにプロンプトを組んでいるとのこと。置かれたパソコンの画面を見ると、確かにそこにはChatGPTが表示されていました。

3.まるでカラダを持っているかのように感じさせたかった

そんな作品ですが、業務に関連してChatGPTに触れてみたことがそもそものきっかけだったとか。実際に触れてみて、改めて生成AIの可能性を感じる体験があったからこそ思いついた作品だという辻本さん。しかし、それは同時に「自分の仕事をAIに奪われるのでは」という不安を感じることにもなったそうです。
そんな期待と不安を表現したのが今回の作品。データとコードとアルゴリズムの存在でしかなく、カラダを持たないChatGPTをコンピュータの外に出し、その存在を現実にいるもののように感じさせ、まるでカラダを持っているかのように鑑賞者に感じさせたかったと語ります。そしていまはソフトウェアでしかないChatGPTをはじめ、生成AIが未来には実体を持ち始めるであると考えた辻本さんが、扉の向こうにきっとカラダをもったAIの姿を想像し、体験者に感じさせたかったのだそうです。

システム図
  •  6軸ジャイロセンサー
    人間のノックの検知には、試作で使っていた音センサーから6軸ジャイロセンサー(加速度センサ)に変更したそうです。
    音センサーはその名の通り「音」に反応するため、会場が騒がしいと頻繁にノックと誤認識してしまう、そんな課題を解決してくれたのが6軸ジャイロセンサー。扉の細かな振動を捉え、変更後は誤認識は全くと言って良いほど起きなくなったそうです。
    6軸ジャイロセンサー(加速度センサ)で取得した扉の振動(ノック)のタイミングを「トト・ト・」という感じの文字列に変換し、ChatGPT側に送られているとか。ドアの揺れなどを除外する工夫として、ノックしながらセンサーの波形を観察して使えそうな波形をピックアップしているそうです。

  • ステッピングモーター
    試作の段階では扉にステッピングモーターを直付すると、動作音が大きくて扉の裏に機械があるのだと気がついていしまう状態だったそう。しかし、マイクロステップという動作が可能なステッピングモーターを動かすためのモータードライバーを採用し、またソフトウエアの工夫で動作音を極力小さくすることで、ステッピングモーターを扉に直付けすることが可能になったとか。
    加えて、ステッピングモーターと扉に取り付けるための台座の隙間に、家具やテレビの転倒防止用に使われる耐震ゲルを挟み込むことで、モーターの振動が伝わりにくくなるような工夫もされたそうです。

扉裏のPC画面。ノックがChatGPT上で「トト・」などに変換されている

4.リアルなノック音、候補は「タンドリーチキン」!?

私が作品に触れて驚いたのは、まるで人がノックしているような「音」。
こちらは辻本さんも特にこだわって制作したポイントでもあるそうです。
初めにハンマーとして選定したスパナを直接扉に叩きつけると、カンカンという硬いもので叩いた音が出てしまい、人のノック音とは程遠い状態だったそうです。 人のノック音は芯になる材質の違いではないかと考えた辻本さん。そこで、骨で叩くのが良いのではないかと、ファーストフード店のチキンを買って制作を試みたそうです。しかし、骨が小さく断念…。
骨探しは諦めるべきか、と悩み始めた頃、たまたま入ったインドカレー屋でタンドリーチキンの大きい手羽中の骨を持ち帰って試したところ、音は悪くないもののどことなくスパイシーな香りがする上に、本物の骨というのが気持ち悪かったので採用は見送ったとのことでした(笑)

扉の裏側の物理的な仕組み

結局、ハンマーはスパナを使うことにして、ドア側に人間の皮膚の柔らさに近いシリコンシートを貼り付けて音を柔らかくすることで、人間がノックした音に近づけることに成功したとのこと。
そんなドアですが、イギリス蚤の市に売られていたという扉をヤフオクにて5万円(送料込)で落札したのだそう。ノック音も程よく響き、とても立派なドアは作品の独特の雰囲気をより引き出している感じがして、こだわって探されたのだろうなと感じました。
そして、お話を聞けば聞くほど、作品の素晴らしさと辻本さんの不思議な魅力に引き込まれて行きました。

5.興味深い展示ばかり!

こちらの展示会では、Xでも話題になった、カズヤシバタさんの「突然のスマホ落下から顔面を守る装置」や、小岩亮太さんの【ヒノカミAR其ノ弐 / hinokamiAR2】、平尾修悟さんのLEDの作品や尾花和俊さんのもう一つの地球を観察できる機械など、興味深い展示が盛りだくさん。
制作者ご本人のお話を伺いながら体験することができ、とても貴重な時間を過ごすことができました。

カズヤシバタさんの「突然のスマホ落下から顔面を守る装置」

時間の都合で残念ながら全てを見て回ることができませんでしたが、秘めたる感覚を刺激されるようなとても良い機会に恵まれ、明日から少し視点を変えて世の中を見てみようかな、と思いを新たに抱いた一日でした。

こんな刺激的な1日が過ごせたのも辻本さんのおかげですが、弊社にはこのように多彩で個性的なメンバーが勢揃い!
採用活動も積極的に行なっておりますので、興味を持ってくださった方はぜひお気軽にご連絡ください。



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