前回は「Baddestはこういうタイアップのもとにリリースされた歌で、過去のPVとはこういう共通点がある」みたいなことについて考えました。

https://note.com/fuuke/n/n01a8fddae51e

上記のようにBaddestはPVが創られています。

タイアップ先アニメの題名は、100万の命の上に俺は立っている というもの。人の命の上に立つということは他者を犠牲にするという意味でもあるため、悪(わる)としては極上であるともいえます。

100万の命の上に俺は立っているとは

100万の～とはどういったアニメなのでしょうか。

合理的で単独行動が好きな中学3年生四谷友助は、
ある日ゲームじみた異世界に転送された―。
すでに転送されていたクラスメイトの新堂衣宇、箱崎紅末とともに
3人目のプレイヤーとなった彼は、命を懸けたクエストに挑むことに。
感情論を排してすべての要素をフラットに、
時には仲間の命すら駒として扱う冷酷な四谷。
襲い来る魔物、厄介な事件、そして暗躍する強敵からパーティの全滅を防ぎ、
このゲームをクリアすることができるのか？

公式サイトのイントロダクションからは世界観が明かされている。

そして最新から1つ手前では結構なことが明かされた。以下は12話のストーリー。

クエストクリアの報酬として、異世界がバーチャルなのかとゲームマスターに問う時舘。答えはそこが分岐した別の地球であるというものだった。実在する世界と聞いて、人を殺してしまったことに戦慄する四谷。現実世界に戻り通常の生活をしていると、四谷のもとに少女の姿をしたゲームマスターが現れ、新プレイヤーに会いに行くことになる。

Baddestは主人公が自らを殺人者であると自覚した次の回からのオープニングテーマとして採用されているようです。

つまり主役が自分を大罪人であると自覚した時から、まるで「お前こそがBaddest(最低、最高)である」と讃えるために鳴らされている歌であると捉えることもできそう。

主題歌であるこのBaddestを先行販売のハイレゾで買って初めて耳に通そうとしているがためにまだアニメを観ていない(細かく述べると次回後述の理由で冒頭だけ拝見しました)のですが、それまで「"集団行動など馬鹿のすることである"とでも言うかのように自分を聡明であると信じ、"所詮この世界はゲーム"と他者を蹴落とすことに快楽すら感じていたような人間」が、世界系とでもいうようなより大きなメタ次元から精神を奈落に突き落とされたような感じになる。

悪いですね。主人公の精神性も悪ければ物語の創りも悪い(意地が悪い、視聴者を楽しませるための策略が敷かれている、という意味です)。

確かにBaddestこそがオープニングを務めるに適した内容であるといえる。悪いことをした奴を唄っている。

・人を蹴落として頂点に近づけた！最高だ！：最高=Baddest
・蹴落とした人々は自分と同じ生命の通った人間だった、自分がしたことは殺人だった：最低=Baddest

少なくとも13話時点ではこのようにBaddestのダブルミーニングがアニメの世界観の表現に貢献している。

もともとロックとはダブル・ミーニングの文化ですね。冴えない人間の冴えないありふれた人生を歌っていると思いきや、宗教なり政治なりを批判していたりする。

ただそれだけで当該アニメの物語が終わるはずはないので、「実は主人公たちは悪くなかったんだよ」とか「あの時ああしたことはこういう感じで作用するぜ」みたいな、ダブルミーニングすら打ち砕く三つ目の「必要な展開」が23話あたりまでに起こるのでしょう。

その際にBaddestの2番の歌詞だったり(多分オープニングでは一番だけが流れるのでしょう)他ボーカリストによるエンディングテーマの世界観が実は……みたいなことになるのかも知れない。関係ないですがはじめアニメのタイトルが七五調かと思い、珍しいことをするんだなぁと思いましたが全くそのようなことはなかった。

百万の 命のお陰で 生きている 的なことです。古今東西見渡してみれば、題名を七五調にしているアニメなんて殆どなかった。

BaddestのMV

さてタイアップ先の世界観が理解できたところで、歌手自身も話していたBaddestのMVの意味が紐解けるようになるかも知れません。

補足しますが、歌手含めた制作側が明かしてくれる情報は非常に大切なエッセンスでこそあるものの、ぼく自身はその歌から受け取るイメージのようなものはリスナーひとりひとりのオリジナリティある感性のもと、保たれることが保証されていると考えているため、「必ずしも歌の真意や正解を紐解かなければならない」みたいなことは考えていません。全体を通して言っていることは、「BaddestのMVおもしろいな～」だけです。

いきなりカラオケ屋店内に強制的な視線移動をさせられたリスナーはどのような気持ちになるのか、あるいはボーカリスト衣装ではない樋口にはどのような意味があるのかについて考えられたら良いと思います。それでは、お読みくださりありがとうございました。