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ミュージカルの良さを感じるということ

はじめに

この記事はミュージカル『美女と野獣』に関する自分なりの感想を言語化するものです。言語化する都合上、内容のネタバレになる描写を語る場合もありますので、それも承知で見れる方はこのままお進みください。

ぼくとミュージカルの関係性について

ぼくとミュージカルの関係性について少し整理をしてみる。
両親に連れて行ってもらったという経験はなく、小学校の時に市の主催の芸術鑑賞会みたいなもので数回見たことがある程度。
その後、中学、高校、大学とミュージカルに触れるような経験はあまりなく、社会人になってから見た『舞台少女ヨルハ Ver1.1a』が最近見たミュージカルである。(ニコニコ生放送で市長。ちなみにこれは青木志貴さん目当てで見ました。めっちゃ良かったです)
とはいえ、東京ディズニーリゾートが好きで「ショー」や「パレード」が好きなぼくは毎回東京ディズニーリゾートに訪れるたびに同じショーでも何度も繰り返し見ることはある。しかし、ミュージカルとは違うはず…。
総合的に判断すると「ミュージカル初心者」というのが正しそうという感じである。

見てきたミュージカルの概要

2022年10月23日より舞浜アンフィシアターで開催中の『美女と野獣』ミュージカルを見てきた。劇団四季というもはや言わずと知れた劇団によるミュージカル公演で、これは後から知ったことだけどディズニーと劇団四季がパートナーシップを組んで公演を始めたのがこの作品らしい。加えてディズニーが初めて演劇ビジネスに進出した作品でもあるんだって。知らんことばかりだ…。
今回のバージョンは上海ディズニーリゾートで上演されたバージョンを踏襲する形に再構築されたもの。舞台美術、台本、演出すべてがリニューアルされているそう。
ちなみに、この記事を書いている時点(2022年11月時点)でロングラン上演が決定しているようで、2023年10月31日公演分まで発売されているみたい。
この記事を読まずとも気になる人はこちらからチケットとスケジュールを確認して今すぐ行った方が良いと思います。パークチケットとセットになったお得なプランもあるのでぜひぜひ。

ぼくとディズニー映画との関係値

日頃から「東京ディズニーリゾート好き」を公言しているぼくではあるが、実はディズニー映画はほとんど見ていない。なので、「好きなディズニー映画は?」と聞かれるのは実は苦手で、そのたびに「実は映画はあんまり見てないんですよね~」と答えている。
なんでこうなのかについては別記事で書いた方が良いと思うレベルで長くなりそうなんだけど簡潔に言うと、実家に住んでいた頃の環境が「映画館にあまり行かない」「VHSやDVDもあまり買わない」という家庭だったことが大きい。
ちなみに、僕が見たことのあるディズニー映画(2022年11月現在・ピクサーも含む)は以下の通り。

  • ふしぎの国のアリス(VHSで見た)

  • バグズ・ライフ(VHSで見た)

  • モンスターズインク(DVDで見た)

  • ファインディング・ニモ(DVDで見た)

  • チキン・リトル(映画を見るイベントで見た)

  • アナと雪の女王(父親が先にサントラを購入。その後映画館で見た)

  • ファインディング・ドリー(テレビで見た)

  • アリス・イン・ワンダーランド(映画館の3Dで見た)

  • シンデレラ(実写版・映画館で見た)

ということで、パーク内ではちょこちょこ「あのキャラは何だ…?」と思いながら眺めることのほうが多いくらい。
つまりはディズニー映画においても「初心者」である。

初心者と『美女と野獣』

前述したとおりの映画経験なので、もちろん『美女と野獣』もアニメ、実写ともに見たことがない。
しかし、かつて東京ディズニーランド内で実施されていたアトモスフィアのひとつ「ジップン・ズーム・ガイドツアー」で『美女と野獣』のストーリーを音楽とパントマイムを交えて解説されていたことがあり、ストーリーの起承転結は知っているというなんとも変な体験をしている。
加えて、この知識量で「美女と野獣“魔法のものがたり”」のアトラクションには何度も乗車し、(映画を見たことがないくせに)そのたびに感動しているというとてもややこしい存在である。
ということで、以下語られる感想はこういった「ややこしい前提を抱えた初心者」語っているものとして読んでいってもらえると、何かしらの解像度が上がるかもしれない。

で、結局どうだったのかというと

結論から言えば「超感動した!ミュージカルすげぇ!!劇団四季とディズニーすげぇ!!!」の一言に尽きる。
これだけで済ませてしまうとこのnoteの意味がないので頑張って脳内整理をしつつ言語化していく。

そもそもなんで行こうと思ったのか

劇団四季という組織は今や押しも押されぬ「劇団界のトップ集団」であることは間違いないし、めちゃイケで劇団四季にオファーされた岡村さんの回を見ていたぼく(当時4歳)でも強烈に記憶に残っている「一音を落とすものは去れ」という標語にもあるような高いクオリティで演劇を提供してくれる素晴らしい劇団であることも間違いない。
元々(これだけ評価されている)劇団四季のミュージカル自体には前々から興味はあったし、いつかは行きたいなぁという感覚ではあった。今回は舞浜で開催されるということで満を持して行ったのもあるんだけど、前述したようにストーリーをうっすら知っていたということも行く動機として大きかった。
あとは体調と気分が乗ってたから。今までもたぶんこれからもそうだけど、ぼくが今まで体験したことのないどこかや何かに行くときは大抵これが良いタイミングになってないとテコでも動かないレベルで動かなくなる。

演技と歌が持つ力

ぼくはドラマとかアニメを結構な無感情で眺めちゃうタイプで、主人公や脇役たちの心情を演技を通して理解したり共感したりするということがどうも苦手である。無感情というよりか、何も考えずに見てるというのが正確かもしれない。
では今回のミュージカルではどうかというと、正直いわゆる「神視点」で楽しんでいたことは事実だ。でも、その立ち位置でも十分に楽しめたのも事実ではある。
まず、主人公に相当するベル、野獣の演技や歌唱力は言うまでもなく素晴らしいものだった。両者ともに映画で(おそらく)流れているあの名曲たちを独自に日本語訳されたものを完璧なまでに歌い上げていたし、それぞれのキャラの性格の特徴をよく捉えた演技をしていたと思う。とても上から目線な書き方だけど。
それぞれが持つ頑固さ故の衝突、どっちも勘違いをしているからこそのすれ違い、そしてとあるコトがきっかけで急激に距離が近くなる感じも含め王道のストーリーを楽しめて最高の感情になった。
そして脇役たちの名演技ももちろん語らずにはいられない。個人的にお気に入りはガストンとコックスワース。
ガストンはいわゆるナルシストなんだけど、自分に対するたっぷりの自信が舞台から客席までありありと溢れ出ていたし、自信家ゆえにベルに味あわされた初めての屈辱からくる怒りもめっちゃ良かった。というかここまでちゃんと言語化できてるということはもしかするとぼくはガストンが好きなのかもしれないな…?
コックスワースは野獣に仕えている給仕係の長で、魔法で時計に変えられてしまっている。基本的にはルールに忠実だからこそ臆病な一面もあって消極的に見える行動を取ることが多い。給仕係なのにゲストをおもてなしすることを放棄するレベルだし。でも、評価が上がりそうなおいしいところは持って行こうとする一面もある。これに関してはルミエールもそうなんだけど。

ガストンとコックスワースについては、実はミュージカルを見る前はそんなにキャラに対して愛着を持っていなかった。後者に至っては名前もこれで初めて知ったし。
でもそういうキャラを魅力的に見せる演技を見せてくれたということで、たぶんこれがミュージカルの醍醐味なのかもしれない。(映画で分かるだろというのはたぶん当然の突っ込みとしてありそうだけど)

集団で見せる演技のすごさとアンサンブルの皆さんのすごさ

映画でも名前を持つキャラクターの皆さんの演技はもちろん素晴らしいんだけど、ぼくはアンサンブルの皆さんの演技にも目が行きがちだし賞賛を送りたい。
ガストンのシーンを例に話をすると、映画でもおなじみのシーンで「ベルに振られたガストンを村中の村人で讃える」みたいなシーンがあるんだけど、ここのパフォーマンスが群を抜いて最高だった。
歌を通して段々とガストンが自信を取り戻していく様子がとてもわかりやすく表現されているだけでなく、小物として使用している金属製のジョッキをカチンカチン鳴らしながら息ぴったりに踊る様子はすごく感動した。「カチン」とジョッキがぶつかる音のぴったりさ加減も感動したし、総出でガストンを励ましている感じが歌唱と動きからくるパフォーマンスで感動した。
大人数で何かを表現することについては、パークのショーやパレードで見ているので経験としては慣れているはずなんだけど、それとは明らかに違う「大人数のパフォーマンスの良さ」に感動している自分がいることに気づいた。
それぞれが与えられた村人たちの性格を演じながらも揃えるところは揃える…みおたいなところに感銘を受けたのかもしれない。

照明の重要さ

もう一つ好きなシーンを挙げると「モノに変えられた召使いたちがベルと野獣の変化を見て人間に戻れるかもしれないという希望を抱く」シーンがある。これは、人間に戻ったらやりたいことを各々がリレー形式に表現していくシーン。このシーンは舞台を広く使っていて、前と後ろでは表現していることが違う(ように見えた)。
前では「モノに変えられた現在の召使いたち」が"今表現できる動き"で人間だった頃を思い出しながら踊る感じが表現されている一方、後ろではそれに合うように「人間である召使いたち」が人間らしい動きでのびのびと踊っている様子が展開されていて、これを同じステージ上で同時に表現していることにとても感動した。
これを感じ取れたのは「照明」によってわかりやすく表現されていたことにある。現在の召使いたちが歌い踊るエリアでは明るい照明が当てられている一方、(おそらく)想像上の召使いたちが踊るエリアでは青白い照明が当てられていて、観客である僕らはこれを同時進行で見せられている。
これを見ているぼくは、夢と現実とを同じ時間軸で眺めていることになると思うのだけど、これを何の違和感もなくそしてそれとなく見せてくれる演出にめちゃめちゃ驚いた。
こういう照明も含めて「演出」するのがミュージカルなのだなと実感できたし、その最高峰の「演出」を惜しげもなく見せてくれるというのが、「やっぱり劇団四季すげぇ…!」とつくづく感じさせられた。

総評

僕は常々、自分にないものを持っている人に対してはかなりの尊敬を表しているつもりで、とくにどんな業種においても「プロ」として仕事をする人たちには感服している。
その上で、ミュージカルのプロたちが見せる『美女と野獣』のミュージカルは、最高の一言に尽きる。
野獣やベルだけでなく、召使いたちはもちろん、ヴィラン側のガストンでさえもどんなキャラも愛くるしく感じさせるその演技力は素晴らしいし、歌と踊りでそれを見せ続けていくということも最高だった。
人が人を感動させる力があるのはディズニーパークのショーを見ていても感じていたことだけど、劇団四季のミュージカルはそれを存分に味わうことが出来る最高の時間だった。
ほかにも、(おそらく)自動で動いているセット転換のすごさとか、まだまだ色々語りたいことはあるのだけど、まだまだロングランで公演しているみたいなので、コレを読んだ人はぜひミュージカル『美女と野獣』に行ってほしい。
劇団四季、恐るべし…。
次は『ライオンキング』を見に行きたいなぁ…と思う、ぼくでした。

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