見出し画像

【山歩き】足のトラブルと戦うための靴下の話

先日、膝痛対策の記事を公開し、多くの方に見ていただいています。

今回は靴下の話。登山靴を買いに行くと、必ず登山用の靴下を履かされた上で、靴を試着することになります。そして、靴と一緒に靴下も買わされます。初めての人は、靴だけでも高いのに、なんで靴下も買わないといけないのか…とうんざりするかもしれません。

しかし、山歩きでは、様々な足のトラブルと戦うことになります。そして、それは靴下で解決する可能性があります。「可能性がある」と言ったのは、最初に買わされた靴下ですでに問題がなくなっているかもしれませんし、僕のように5メーカー目でようやくいい感じの靴下と出会えることもあるからです。

ここからは、僕の戦った足のトラブルと、靴下に求める機能、そして、試してきた靴下を紹介していきます。


足のトラブルと戦う機能

トラブル① 臭い

僕が最初に買った靴下は、化繊でした。そして、靴の中というのは、汗が長時間、閉じ込められる場所であります。いくら化繊の速乾性が高いと言っても、靴の中にあるうちは、絶えず新しい汗を吸い続けることになります。すると、当然、臭います…。山頂で乾かそうと靴を脱ぐと一瞬もわっとしますし、温泉のロッカーに臭う靴下と脱いだ服を一緒に入れることを想像してみましょう…。

というわけで、防臭性が個人的に最重要であります。とりわけ、ウールの防臭性は、いまだに他のどんな抗菌防臭加工の化繊よりも圧倒的に優れていますから、ウールの割合の高い靴下を買うことが第一の選択肢になってきます。

トラブル② 足の甲のかゆみ

山歩きの当日ではないのですが、翌日から長くて3日後ぐらいまで、足の甲を中心にかゆみが生じることがあります。かゆみが先に出て、後から赤いポツポツが…おそらく汗疹の類だと思っています。

これを予防するには、なるべく足の表面をドライに保つこと。靴下としては、吸った汗を早く乾かすこと、一言でいえば速乾性が大事となるでしょう。また、山頂で休憩するときなど、靴を脱げるときには脱いで、靴の中を少しでも乾燥させることを心がけています。

トラブル③ 靴ずれ

僕の戦ってきた靴ずれには2パターンありまして、ひとつ目が、足の指の皮がふやけてはがされるパターン。もうひとつが、アキレス腱が赤くなっているパターンです。

「靴ずれ」と言うからには、対策もまずは靴のほうに求めていました。しかし、フィット感の異なるいくつかの靴を試しても、同じように靴ずれが生じてしまいました。アキレス腱の方は、この↓パッドを貼っていれば防げましたが、朝バタバタして付け忘れたり、なくなっていたのに補充し忘れたりすることもあり、できれば根本的に解決したいと思っていました。指用のものは、汗と摩擦に耐えられず剥がれてしまったので、登山にはおすすめできません…。

ところが、後ほど紹介する今の靴下を導入したところ、指の方もアキレス腱の方も、解決してしまいました。それまで違って何が良かったのかと考えてみると、指の方は、まずは速乾性が高かったことで、皮がふやけにくくなったこと。そして、左右非対称の足に沿った形状のため、靴下の余計な動きが減った可能性があります。アキレス腱の方は、正直まだ半信半疑なのですが、商品説明では「アキレス・プロテクション」と言って、アキレス腱を保護する作りになっているのが効いたのかもしれません。つま先とかかとの強度を上げている靴下は多いですが、アキレス腱まではっきりと銘打っているのは珍しいと思います。

クッション性は?

最初に靴下を買う際、「クッション性のある厚い靴下」を勧められることが多いと思いますが、このことについて思うことを記しておきます。

「クッション性のある靴下」のクッションは、個人的な経験だと、新品の開始1時間ぐらいはクッションを感じるのですが、それ以降は汗と体重でつぶれてしまい、「あれ?薄くなった?」と思うこともあります。洗濯をすると少しは回復しますが、結局、履いて歩くとすぐにつぶれてしまいます。そのため、あまり意味がないばかりか、歩いているうちに厚みが変わってしまう困りもの、という少しネガティブな印象も持っています。

また、歩行時のクッション性は、靴下だけではなく、靴のミッドソールとインソールも含めた総合点で決まります。そのため、クッション性に優れたミッドソールやインソールがあれば、靴下にとってクッション性の優先度は低くなってきます。また、もし形状にこだわったインソールを使っている場合、厚い靴下を履いてしまうと、インソールの凹凸をならしてしまい、インソールの機能を損なってしまうかもしれません。

では厚い靴下がNGかというと、それは場合によりけりです。(理由はここでは割愛するとして)より高山向けの登山靴ほど、いろいろな部材が硬くなっていきます。靴の形状と足の形状が100%マッチする人はまれでしょうから、そんな硬い登山靴のひもをギュッとしめると、どこかしら痛みを感じることもあります。その圧力を軽減してくれるのが、厚手の靴下になってくるわけです。

また、気温の低いところでは相応の保温性が求められるわけで、寒いところに行くならば、厚い靴下で足を守る必要が出てきます。もちろん、ただ厚くて汗処理が追い付かないと、逆に汗で冷えてしまいますから、素材も含めて良いものを検討する必要が出てきます。

要するに、あまり明快な答えにはならないのですが、使っている靴や気温を総合的に判断して靴下を選べればベスト、ただし足裏クッションはつぶれるものと覚悟しておく。というところでしょうか。

靴下メーカー別レビュー

ここからは、切り口を替えて、僕がこれまで試してきた靴下を、時系列順、メーカー別に紹介していきます。

mont-bell(モンベル)

最初にモンベルの靴下を手に取った理由は単純で、最初に靴を買ったのがモンベルだった、そのついでに靴下も買うことになった、というものです。

モンベルの登山用靴下は、「ウィックロン」ベースのものと、「メリノウール」ベースのものに大別できます。僕は、おそらく1足目に買う人の多くがそうするであろう通りに、安い方、つまりウィックロンの厚手の靴下を選びました。

ウィックロンも「抗菌・防臭性能」があると書かれてはいるのですが、化繊ベースということで、やはり臭ってきます。今後、温泉や山小屋で登山後に靴を脱ぐ機会があると考えたときに、臭う靴下では困ると思い、新しい靴下を買うことにしました。

モンベルのトレッキングソックス↓

Point6(ポイントシックス)

ポイントシックスは、メリノウールの靴下を作っているアメリカのメーカー。モンベルにもウールの靴下はあるのですが、「せっかく買い替えるなら、いろいろ調べて良いものを選ぼう」ということで、選んだのがポイントシックスでした。

何が良さそうに映ったかというと、「37.5テクノロジー」を採り入れることで、ウールを多く使いながら、速乾性も高いと謳われていることです。一般にウールの弱点は乾きが遅いことと言われている中で、その弱点を補っていることは、とても魅力的に映りました。

「37.5テクノロジー」のおかげかは分かりませんが、実際、山頂で靴を脱いでちょっと置くだけで、靴下の表面を触るとさらさらしていました。また、ウールに期待していた通り、いやそれ以上に、臭いはまったく気にならなくなりました。「ウールにするだけでこんなに違うのか」と当時は驚いたものです。

かなり気に入ったので、ライト、ミディアム、ヘビーの3種類の厚さを買って、靴や気温に応じて使い分けていました。

なお、ポイントシックスで「37.5テクノロジー」が使われているのは、商品名に「37.5」と書かれているものだけになります。以前どこかで読んだのですが、37.5テクノロジーの靴下は乾きが早すぎて逆に冷えてしまうという苦情が来て、37.5テクノロジーを使わない靴下も多く取り揃えているとか(記憶が不正確かもしれません間違っていたらごめんなさい)。とにかく、37.5テクノロジー目当てで買うときは、商品を間違えないようご注意ください。

ポイントシックスのトップページ↓

Darn Tough(ダーンタフ)

ポイントシックスの靴下を使っていて気になったことのひとつが、「足裏のパイル、もうつぶれているけど、こんなものなのかな?」ということです。そこで、耐久性を売りにしているダーンタフの靴下を試すことにしました。

ダーンタフは、ポイントシックスと同じく、ウールの靴下を専門に扱うアメリカのメーカー。高い耐久性を誇り、「通常使用で穴が開いたら新品と交換」という「生涯保証」を特徴としています。

結果としては、「普通に使ったら普通にパイルつぶれるんだなぁ」という感じでした。ポイントシックスが特別弱いわけではなかったようです。

また、個人的な使用感としては、ダーンタフの方が、使用後にかゆみが出やすいように感じました。使用中はそれほど分かりませんでしたが、速乾性の面で、ポイントシックスに分があるのかもしれません。

ダーンタフのトップページ↓

ECONOLEG(エコノレッグ)

エコノレッグの紹介の前に、僕がここにたどり着いた経緯をお伝えします。

僕はYAMAPユーザーで、そのメルマガも受信しているのですが、ある日、YAMAPオリジナルのトレイルソックスを紹介する記事を目にしました。その靴下は、綿を含んでいて、「乾きにくい綿を靴下に使って大丈夫なの…?」という懐疑的な思いから購入には至りませんでしたが、ゴム糸を編み込んで滑り止めとしているという特徴には目を奪われました。なるほど、滑らなければ、靴ずれが生じないのかもしれない、と。

そこで類似の靴下を調べたところ、「アルコネイチャー 山を歩く靴下」という、YAMAPソックスとほとんど同じ靴下を見つけました。まさかと思って確認すると、YAMAPソックスは、西垣靴下という奈良のメーカーとYAMAPの共同開発で、「アルコネイチャー」は、エコノレッグという西垣靴下の靴下を売っている会社のブランド。要するに、同じところが作っていたのです。

ということで今度は、エコノレッグの靴下を調べると、「山を歩く靴下」とは別に、「山登りの靴下」という商品も売っていました。こちらは、ゴム糸ではありませんが、外付けの滑り止め加工がついています。また、綿ではなくウールを使用していたので、防臭性も期待できそうです。そこで、「山登りの靴下」を試してみました。

結果としては、滑り止めについては、あまり良さが分からなかった上に、土の汚れが付着して洗濯しても落ちず、見栄えが悪い。

足裏にパイルがあるだけでなく、特に土踏まずの部分が分厚くなっており、おそらくアーチサポートのつもりなのでしょうが、適切なアーチサポートをインソールで既に考えている身としては、土踏まずが持ち上がりすぎて歩きづらい。

また、テーピング編みということで着圧が強めになっているのですが、これも個人的にはマイナス。山歩きは家を出てから帰るまで、時間のかかるアクティビティなので、移動時や山頂では靴ひもを緩めて足を解放したいもの。着圧の強い靴下を履いていては、靴ひもをゆるめてもずっと足に圧がかかるので、シンプルに辛い。また、着圧を上げることで疲労やケガを防ぐという考えがあるようだが、最近ではケガを防ぐために靴下を短くしたり穴をあけたりするサッカー選手が話題になった↓ように、着圧を上げるのが必ずしも良いことではないと思う。

ということで、残念ながらこの靴下は僕には合いませんでした。インソールへのこだわりがなく、いわゆるテーピングソックスが好きという方には、合うかもしれません。

Therm-ic(サーミック)

僕がサーミックを知ったのも、YAMAPの記事がきっかけ。ちなみにサーミックは今のところYAMAP STOREで取り扱いがないのですが、そんな商品の記事が投稿されたことでむしろ好感度が上がりました。

サーミックはフランスの会社で、その靴下はヨーロッパ各地で作られています。手元のパッケージを見ると、「イタリア製」と「ボスニアヘルツェゴビナ製」がありました。日本では、インソールで有名なシダスが輸入販売を行っています。

サーミックの靴下の大きな特徴は、見た目にもわかる、表面の大きな凹凸です。足を踏み込むたびに、空気がこの凹凸の間を通り抜けることで、他の靴下にはない圧倒的な通気性と速乾性を実現しています。ちなみに、「テンペレート」だけは、凹凸が内側になるような、裏返しの構造になっています。さらに内側にはインナーソックスに相当する化繊の生地があり、一部界隈で流行っている二重ソックスが一足で実現する代物になっています。

僕はこれまで、「ウルトラクールリネン」「テンペレート」「ウォーム」の3足を試してきました。どれにも共通して言えるのは、靴ずれが生じなくなったことです。最大の特長である通気性や、左右それぞれの足専用の非対称なデザイン、アキレス腱を守る構造などがトータルで良かったのでしょう。

「ウルトラクールリネン」は、超薄手というのと、ウール不使用というのが履く前の不安でした。厚手のソックスにあわせて登山靴を買っているので、超薄手だと靴が合わないのではと心配になります。しかし実際のところ、確かにベースの生地は薄いのですが、凹凸の高さが結構あるので、靴の中では中厚手の靴下と同じくらいの嵩を感じて、意外とこれまでの登山靴でも問題ありません。ウール不使用の方は臭いが心配でしたが、リネンの防臭性が意外と高く、こちらも今のところ不満を感じていません。速乾性が高いのか、暑い時期でもかゆみに悩むことも減りました。

「テンペレート」は個人的にイマイチでした。というより、二重ソックスが自分に合わないのかもしれません。インナーソックスに相当する化繊生地と足との間に汗がたまって張り付く感じがあり、そのせいか、アウターは良くてもインナーの生地は少し臭うし、かゆみもこれまで通り生じる感じでした。

「ウォーム」も「ウルトラクールリネン」と同じく大当たりです。ウールの割合が41%と、一般的なウールソックスよりは少ないのですが、臭いはしてきません。かゆみや靴ずれもほとんどなくなりました。ちなみに、サーミックによると「ウォーム」の適正温度帯は「-15度~5度」(←この温度帯も書かれている場所によってちょっとずつ違うのは謎)やとなっているのですが、通気性が高いためか、寒いところだと少しひんやりします。逆に、通気性と速乾性を考えると、もう少し高い気温でも快適に使えるのではないかと思っています。この夏の高山はこの「ウォーム」で行く予定です。泊りがけだとやっぱりウールの方が安心感があるので。

「ウルトラクールリネン」と「ウォーム」を気に入ったので、最近「クールライト」を買い足しました。しばらくはこの3セットの使い分けになりそうです。ちなみに、この記事のサムネは、上から「ウルトラクールリネン」「クールライト」「ウォーム」となっています。

サーミックのソックス↓

さいごに

現在サーミックに行きついたということもあって、サーミック推しの内容になっていますが、足汗がやや多い体質、インソールにもこだわっているという背景があったからこそ、他より薄手で速乾性に秀でたサーミックが自分には合っていたのかもしれません。もし何か足まわりで気になることがあれば、靴下を見直すことで(靴を買い替えるよりは安く)解決するかもしれないということで、各々に合った靴下を探すための参考になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?