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先ずはの社寺建築

noteを始めてみたからには、投稿せずしてなんとなりましょう。日々の通勤でガラケーぽちぽちしながら草稿しています。自分なりにむふむふ興味を持って追いかけている事柄は多々あれど、人様に公開できるようなまとまりがあるのか自問自答です。

そこでやはりこれかしら、と一押しできる分野が「社寺建築の塗装と彫刻」です。はい。

「社寺建築なんて、またなんと抹香臭い…」というお声や、「待ってました社寺建築塗装!」という方、様々な反応があるかと思いますが、大多数の方が「ふーん」なジャンルかと。馴染みはないけど見たことないわけではないし、京都に至っては至る所にあるし、まぁ好きな人もいるでしょう、というところでしょうか。

私自身、お寺や神社は家族で連れ立って出掛ける一種の観光地ぐらいの距離感でした。美術系の大学で生きることに火がつき、「食べていくには職に就かねば」とごそごそ就活し、雇って頂いたのが社寺建築塗装を営む会社。そこで否応なしに社寺に触れるにつれ徐々に敷居は低くなり、果ては社寺検分が密かな楽しみになる始末です。

思うところあり会社は辞職しましたが、単純に「好き」という気持ちで打ち込むようになった仕事でもあったので忘れがたく、書籍を漁ったり、社寺お一人様検分を行ったりとコツコツ情報をあつめ、こんな資料ほしかったのよ、と思えるようなものを編纂したいなぁと細々過ごしています。

若干、未練がましいという自覚もありますのでセンチな気分になったりもしますが、純粋に良い資料が作れたらなと思っています。そこで得られた知見を忘れないよう、また、どなたかの楽しみの引き出しになればと思いnoteにも掲載していきます。少しでも何らかの蓄えとなりえましたら幸いです。


画像に関しまして、特別な断りがない場合すべて私自身による撮影です。
無断での借用・転用はご遠慮ください。ご使用の希望などございましたら、その旨ご一報くださいますようお願い致します。


知られざる社寺建築塗装業

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知ってる人は知っている

冗長なはしがきとなりましたが、早速。あまり最初から小難しい専門用語を話してもなんですので、気楽(?)なお仕事紹介から始めます。

① 社寺塗装ってそもそもなに?

社寺建築は大半が木造建築です。木材で建て、そこに塗装を施すことで、木材の保護と装飾を可能にします。とはいえすべての社寺が塗装しているわけではなく、木材の状態のまま=素木(しらき)のものもあり、神社さんに多いです。塗装するもしないも信仰やその土地の歴史にもとづくことがままあり、そこが一般住宅の塗装とまず違うところでしょうか。

一見、素木に見える社寺も、よくよく見たら塗装が落ちている…ということもよくありますので、社寺に赴かれた際は一度しげしげとご覧になってください。ちょっと怪しい人です。

まず社寺の塗装ですが、大きく分けて3つの分野があります。

・漆(うるし)
・彩色(さいしき)
・単色塗装(たんしょくとそう)

漆は漆塗り、彩色は文様や絵画を、あるいは彫刻に色を施す装飾的な塗装、単色塗装は大きな面を1色=単色で塗るものです。

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塗装は得てして装飾分野に含まれますが(建設業では雑工事…)、装飾は他に、飾金具などを扱う金工、内装の襖・唐紙・金紙を扱う表具などがあります。

② どんな業界?

業界の規模ですが、小さく狭いです。どれぐらい狭いかというと、たぶんこの投稿のここまででも、業界の方(特に関西在住)が読んだら、私が誰だかわかるんだろうなぁレベルの狭さです。本当に。

入札工事に参加できる資格をもった会社が全国で10社ほど。その他に、地元密着型の会社や個人経営型があります。いずれにしても1つのところが仕事を請け、それを他の会社や個人業者さんと協力・発注して施工することが多いので、自然と業界全体で知り合いが増えるわけです。

個人業者さんの大半は、元を辿ればどこかの会社で勤めていた人のため、退社した先輩と今日もおんなじ現場だわ、なことはよくあります。
また、美術系の仕事をしている方が副業としてこの業界に携わっていらしたり。人と人のつながりで繁忙期の人手不足を乗り切る業界です。

③どんな会社?

1つの会社で複数分野を扱っているのは少数派で、大半は1つの分野に特化して経営されています。
私の勤めていた会社では、先にあげた塗装の3分野を生業に、また保存修理と呼ばれる分野も扱っていました。社員数は約20名、業界の中では多い方です。男女比は8:2ぐらいでしたが、基本的に単色塗装は男性、彩色は女性がち、漆は男性がちです。

要は社寺の塗装に関して、伝統的と言われる工法ですることなら何でも請けますよという仕事です。現代の塗料で塗るのは多数の業者さんがいらっしゃいますが、制限された工法と環境下で施工するのが醍醐味でしょうか。

古い塗装を調べたり、木地を傷めないように掻き落として新しく塗ったり。塗装後の結果ももちろんですが、材料・工法ともに少し浪漫を求める施主さんの期待に応える仕事でもあります。

とはいえ、基本的に現場施工。社寺なんてイタヅラに名前につくと工芸的な印象ですが、建設現場を思い浮かべて頂くのが実態に近いです。

朝早くから車で現場に移動し、足場の上で埃にまみれる。雪吹きすさぶ中、船で島へ漕ぎ出す。真っ暗な山道を、飛び出すキジやシカにびくびくしながら車で降りてゆく。
…職場では冗談混じりにアート土木と呼び表していましたが、なるほど言い得て妙な呼び名です。

美大出身の人、違う畑から飛び込んでくる人さまざまで、ほとんどが伝統的な技術職に興味を持って入社されます。辞職してなんですが、やはり特殊な面白い業界だと思います。

「こんな仕事あるのか、おもしろそう」と感じられた方。例に漏れず慢性的な人手不足、業界は手ぐすねひいてお待ちしております…と言えるような言えないような。今後の投稿も読んで、ゆっくり考えてみてくださいまし。

今後の投稿についてちらり

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私は彩色と彩色の保存修理に携わっていましたので、投稿は主にその分野です。これでもかと語るあまりの温度差はご了承ください。

今後の投稿予定

社寺建築については書き記したいことが本当にたくさんあります。目下、以下の項目でもそもそやっていこうと計画中。

①部材について
社寺建築を楽しむはじめの一歩として、部材(建物の部品、パーツ)の名前を覚えるコーナー。味わい深い名前が多いので楽しいです。職種や人によって微妙に言い回しが異なることもあり、言葉好きにはたまりません。

蓑束_京都市_御香宮_拝殿

部材一例。こちらは蓑束(みのづか)。間斗束(けんとづか)の一種です。蓑をかぶったような装飾が特徴です。

②工法・材料について
塗装や彩色で使う材料の紹介や現場で使う資材などなど。材料自体がなくなっていく深刻な話から、愉快な現場の工夫小話まで。

③彩色調査あれこれ
古い彩色塗膜を調査する流れや、塗膜を観察するポイントなど。もう今は現場に入れないため、専門機器の使用や間近での調査はできませんが、目視調査の範囲でいくつか実践してみたいと思います。

④社寺彫刻類例めぐり
社寺の彫刻には動物・植物・雲や波など、様々なものが象られています。よく見る獅子の彫刻でも、並べてみるとどれ1つとして同じものはありません。そんな素敵な彫刻をたくさんコレクションして、ずらっとまとめてみたいなぁと思っています。ちなみに彩色調査の肝の1つは、類例(似た例)をどれだけたくさん知っているか。失われた彩色を追求する大きな手掛かりでもあり、人の営みを感じられる面白さがあります。

獅子

獅子あれこれ。たくさん集めると地方・時代ごとの特徴が見えたり見えなかったり。見事な彫りと彩色のTHE・王道も好きですが、個性豊かな類例を見つけたときの昂揚感もたまりません。

いかがでしょうか。興味をもって頂けそうでしょうか。
社寺の彫刻や装飾については、少ない数ではありますが出版されている名著や写真集があり、また、個人で素敵なサイトを作成されている方もいらっしゃいます。それらの紹介や息抜きの小話など混ぜながら、ゆるりと書いていこうと思います。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
それでは、次の投稿で。

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