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超年下男子に恋をする㉘(ポンコツ男子はサプライズが理解できない)

 バツイチ子持ち社員に恋した19歳バイトのミワだけど、日に日に想いは募るばかりといった様子。

 それにしても不思議だ。
 ミワぐらい若くて可愛い子が何が怖いっていうんだろう。正直相手はまだ23とは思えないほど老けてるし、バツイチ子持ち、

 でもミワの目には「超かっこいい」らしい。

 私がミワと同じ19だったら、私の大好きな彼にとっくに告白してる。
 二十歳がいいっていう彼に
「一年後の私も絶対あなたが好きだから、今すぐ私と付き合って!」
って強引に言って彼女になる。

 彼はきっと断れない。
 なにせ酔っ払いのギャルに詰め寄られ付き合うことにした彼だ。
 素面になったギャルにソッコーなかったことにされてたけれど、どうせ付き合ったところで「僕もうヤダ!」は目に見えている。

 本当に若いってのは羨ましい。年齢ではじかれることがまずないから。

 だからミワももっと積極的にいけば絶対うまくいくと思うんだけど、緊張して何も話せないらしい。

 そこで私はミワの誕生日にサプライズ。

 帰りにいつものハンバーグレストランでお祝いしようってことになったけど、そこにミワの意中の相手、社員の羽田も呼び出した。

 私の計画はこう。

 ミワと私と彼でハンバーグレストランに先に行く。
 羽田が後から来る。
 適当なところで彼が体調不良を訴える。
 私が彼を家まで送るということでミワと羽田を残して消える。
 あとは羽田とミワの二人っきりでごゆっくり……

 こんな感じ。

「僕、芝居なんてできませんよ!」

と彼はおろおろしてたけど、

「ちょっとやってごらん、ほら!『あ、僕、おなかが痛い!あいたたた』」

と私は彼に演技を要求。

 でもこれが思った以上にひどかった。

 しかもいざ本番になると、この作戦のことまで忘れてるのか、羽田が来たっていうのに帰ろうとしない。

 隣の私が肘でつつくと、

「あ、僕! 門限があるので!」

と言ってあわてて立ち上がろうとする。

(ちょっと! そんなふうに言ったら、全員帰る流れになるじゃん!) 

 だからさりげなくって言ってるのに!!!!

 案の定、「じゃあ、帰ろう」って羽田も言い出し、私たちは一緒に店を出ることに。

(バカー!!!!!)

 でも、ここで羽田が

「まあ、改めてこのメンツで飲みに行こう」

と言い出し、次につながった。

 しかも帰りは羽田の車でミワを家まで送らせた。

 本当は私の方がミワと家が近い。

 それでも私は「彼と二人になりたいから、ミワを送って」と羽田に言って、ミワを頼んだ。

 ミワは最初緊張して嫌がったけど、結局羽田の車に乗った。

 その夜、ミワの報告によると、少し寒かったから一つのブランケットを二人で膝に掛けたという誕生日イベントが発生していたらしい。
 そして初めて二人きりで色々話せたと言って大喜びしていた。

「本当に本当にありがとうございました! 最高の誕生日でした!」

 ミワが喜んでくれてサプライズイベントは大成功。

 そしてその夜もう一つの報告が……

「あのー、僕よくわからないんですけど……」

 帰宅後の彼からのLINE。

「もしかして、ミワさんって、羽田さんのこと好きなんですか?」

 まさかの何が何だかわかっていなかった報告。

「え、じゃ、なんで今日羽田がわざわざミワの誕生日のお祝いに来たと思ってんの?」

「ん-、だから、なんか変なメンバーだなぁーと思って」

「じゃ、腹痛作戦の意味もわかってなかったの?」

「はい、なんでかなぁーと」

 何もわからないながらも私の言うとおりにしていたというわけか……。

「じゃ、羽田が来た時、私がミワの隣をあけて、君の隣に座った意味もわかってなかったの?」

「はあ」

 まあ、確かに私はいつもみんなでごはんに行くときはたいてい彼の隣だし、ミワと羽田を隣に座らせたいからなんて思わなくても当然か。

 それにしても、ミワの様子や私の言い方でわかるだろう。いや、わからないのが彼なのだ。

 実際、私が色々一から説明していると、

「あのー、僕ちょっと、もう頭まわらないんで……」

とアホのスタンプと「おやすみなさい……」。

 これが彼。

 駆け引きとか作戦とかまったく理解できないし、考えると頭がつかれて眠くなる。

 私は本当に本当に彼のこんなアホなところが大好きで、難しい話ができないところも単純でわかりやすいところも、私にとっては本当に癒し。

 私は元旦那にいつも理詰めで責められていたし、よくわからない屁理屈でやりこめられたりもしたから。「もういいわー」と流そうとしても「何がいいのか説明しろ」と延長裁判、寝かせてももらえない。私は寝たら忘れるからと「寝させねーぞ!」と怒鳴られた。

 だからこそ、彼のこの単純さに私がどれだけ癒されたか。
 彼も私と同じで忘れっぽいし、めんどくさいと「もう寝るわ」。

「僕、アホなんですよ!」

と彼はいつも言っていたし、周りもそう言っていたけど

「アホなところが大好きなんだよ。長所だよ!」

と私は心から言っていた。

 ミワだけじゃなく、私もどこか幸せな気持ちでこの日は眠りについた。

 そして羽田は口だけじゃなく、このメンバーでの飲み会を実現させた。

 飲み会と言えば私はすでに前科もち……。

 そしてやはりこの飲み会でも私はやらかすことになる……。

 


 


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