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DAY10 4月から新しい環境に飛び込む羽目になった君へ

よりによって、4月8日の緊急事態宣言初日に、東京に赴任してきた若手(私より若いという意味)が、うちの部署にいる。
初日こそ、課長とだけは顔を合わせて仕事の説明を受けていたが、その後は在宅ワークである。
私は面識がないため、まだ生の本人に会ったことがない。Skypeの画面越しだけだ。

それでは孤独だろうと、社内のチャットで毎日お昼ごはんの写真を送っている。うちの課はメンバー全員でお昼を食べに行くので、その代わりの感覚だ。
彼もランチの写真を送ってくる。で、馬鹿話を少々する。

今までとは全く違う仕事、容赦ない仕事量と求められる質(着任1週間も経ってない社員への要求じゃない)、妻子を連れて知らない土地への転勤、しかもコロナ。
明るい奴なので、心配しつつも目を離さないようにしていれば、と思っていたら、思った以上に参っていたらしい。
夜、彼から切々とした胸の内を吐き出したメールが来た。

引っ越し早々、近隣トラブルを抱えたこと。
仕事量と業務レンジ、スピードについていけずに悔しいこと。
課長や私の同僚には、男同士なのでつい強気なところを見せてしまうが、本当はとても不安なこと。
だから、心が折れそうになったら、弱音を吐いたメールをさせてほしいと。

フォローすると、彼は決してメンタルが弱い訳ではないし、仕事も優秀だと聞いている。
それでも、会ったこともない私に弱音を吐くほど辛いのだ。

返信不要とあったが、返事を書いた。
以下、抜粋

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私の趣味の一つは、ラグビー観戦です。
ラグビーは陣取りゲームなので、だから陣地を取るために前に進み続けるんだけど、ボールを前にパスすることは許されなくて、後ろに投げながら前に進むという訳のわからないスポーツです。

その上、ボールを持っていると屈強な相手チームの選手にタックルされたりするので、なかなか前に進めません。
人生みたいでしょ。

タックルで倒された時に一番やってはいけないプレーが、ボールを奪われないよう、抱え込んでしまうこと。
反則になって相手ボールになってしまう。

じゃあどうすればいいのかというと、ボールを体から離して、自分の後ろに置くんです。
そうしたら相手に取られそうでしょ?
実際取られることもあります。
でも、仲間がきっとボールを受け取りに来てくれる、と、信じてラガーマンは置くんです。

貴方が置いたボールは、ちゃんと私が受け取ります。
だから、倒れたら抱え込まずに、後ろに置いてください。
タックルされそうになったら、後ろにパスしてください。
ちゃんと私が受け取ります。

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在宅ワークの一番の欠点は、ひとりぼっちだということだ。Skypeで繋がるといっても、限界がある。
そこを解消する仕組みを開発、導入している会社もあるが、一般的ではない。

普段は気心の知れたメンバー相手でも、在宅では細かい意思の疎通が難しいというのに、異動者や、ましてや新入社員は、疎外感や孤独感を味わいやすいのではないか。
それを思うと、私は声かけをやめることができない。

もちろん、それで彼が安心するかどうかは、わからない。
どうしてもラグビーしか例えが浮かばなくて、だから意味が伝わらないかもしれない。
なにせ彼がスポーツ好きかどうかも知らないから。

でも、ひとりぼっちで悩んでいるときに、悩みんでいる心を開示していいんだよ、と言ってくれる相手は必要だ。絶対に必要だ。
私が、そうすることがとても苦手だから、そこは断言する。

これを読んでいるあなたが、彼と同じ立場なら、誰かに素直に胸の内を打ち明けて欲しい。
あなたが新人を迎える側なら、たくさん声をかけて欲しい。

顔を合わせて接することが難しい今だから、言葉を掛けることの大切さを痛感している。

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