医療・社会保障費が「ぼったくり」と言われてもおかしくない理由

介護保険の適用を受ける多くの人は自己負担が大抵1割です。つまり受けられるサービスの総額の1割だけを負担することになります。介護保険の具体的なサービスについて、介護保険制度のために設立された長寿科学振興財団のホームページを確認してみましょう。

例えば、転倒しやすい状態にある高齢者が歩く動作を補助する道具として「歩行補助つえ」というものがあります。こちらのレンタル費用の平均は1割負担の人は1か月あたり1,125円です。介護費用の総額としてはこの10倍ですので1万1,250円かかっています。年間で介護保険費用としてはこの杖のために使われるお金は13万5,000ということになります。


詳細はこちらの文書をご覧ください。
〇厚生労働省第141回社会保障審議会介護給付費分科会「福祉用具貸与(参考資料)」9ページ(2012.6.21)

参考に、楽天市場で商品を検索してみました。介護用品専門店まごころショップというところで1万5千円ぐらいのものを参考に楽天市場で検索してみますと、つぎのようなものが出てくると思います。このショップの商品を見てみますと、補助杖だけでも5,000円台から3万円を超えるものまでさまざまな商品があります。

〇杖 ステッキ おしゃれ テトラ・ケインα 青墨 田辺プレス (4点杖 多点杖 ステッキ つえ 歩行補助) 介護用品

楽天市場

最初に紹介した介護保険適用の商品を思い出してください。1本の杖をレンタルする場合、年間で13万5,000が介護保険費用としてかかると言いました。ちなみに楽天市場全体で10万円以上の杖は一つしか出てきませんでした。高級木材「黒壇」の1本杖です。介護保険が適用されて1,125円の杖をレンタルする場合、私たちの納めた介護保険料から12万3,750円が介護用品会社などに支払われます。実際にレンタルされているのは市場では1万5千円ぐらいの価値のもののはずです。これでは介護保険はぼったくりと言われても仕方ないのではないでしょうか?

今の話を医療費に変えてみてみましょう。600円の診察代を患者が払うと医者が国から1,400円貰える仕組みです。その1,400円は国民が納めた保険料から賄います。これで総額2,000円の医療費です。では質問です。ここでかかっている2,000円という価格は、何をもとに決めているでしょう?

まず、医者への1,400円は国から医者への補助金です。また総額2,000円という医療費は国が決めています。医師は決めていません。医師は診療報酬について細かい決まりがあり、それ以上の金額は支払われません。現状の制度では医者の収入は病気と患者の数で決まってしまいます。保険外の治療も一応制度としてはありますが、保険外診療と保険診療を組み合わせることはできないし、やる気のない医者は決まった診療しかしません。補助金とはまた、そういうものです。

実は、医師が今よりも稼げるようになる方法があります。社会保障がなくなり、医療が自由市場のような仕組みになれば、医者は今よりも稼ぐことができるのです。医者が医療費を決めることができる仕組みです。これは通常の商売の考え方です。国が決めた診療報酬の仕組みのなかで我が国の医療は成り立っているのです。

医者も薬局も介護保険事業者も国からの補助金で成り立っている仕事だということがよくわかると思います。

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