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あっという間の28+1


カゴのないシュッとしたタイプの自転車を漕ぐ高校生、そのハンドルには、すぐそこのマクドナルドで買ったのであろう、何かのセットだと思わしき物が袋ごとぶら下がっている。

そして少年はそこからポテトを器用に取り出し、美味しそうに頬張り、環状線の下を走り去って行った。


なんて青春なんだろう。
なぜこの光景に、心を打たれたのだろう。

良かった、いい景色だった。

「そんな食べ方をしたら危ないだろう」
「せめてカゴ付きの自転車ならまだしも」
「放課後に買い食いとはなんたるか」
とかいうのは一旦さておき、あの幸せそうな表情からしか得られない何かが、そこにあった。


別の日。


バス停でバスを待つ、中学生と思わしき女の子数人。
ちゃんと周りに配慮しつつも、やはりまだ若いか、ぺちゃくちゃとおしゃべりに勤しんでいる。

全くもって、うるさいとか邪魔だとかは無く、ただそこに、その子達だけの楽しい時間が溢れていた。

するとその内の1人がおもむろにスマホを取り出し、「撮るよー」とでも言ったのであろう、インカメラでみんなで写真を撮っていた。


なんて青春なんだろう。
こんな、ただバスを待つだけの時間ですら、彼女達の思い出の1ページになり得るなんて。


別の日


なんてことないバイト終わり。
なんてことないいつもの帰り道。
あの交差点を過ぎれば、あとは真っ直ぐ家に向かうだけなのだが、遠くから見ると信号が赤に変わった。

先ほどまで何かとツいてなかったことを思い出しながら、今日はそういう日なんだと言い聞かせ、たまにはと思い、普段曲がらない所を曲がって路地に入ってみた。

何もない路地、そこにポツンとある小さな公園。
2席のブランコだけしかない、小さな小さな公園。

そこに並んで座る、学生の男の子と女の子。


なんて青春なんだろう。
思わず見惚れてしまった。
美しくも儚い夕焼けを見ているかの様な、その公園にただ綺麗な時間が流れていた気がした。



いいな、と思った。
こっちは電気系統がやられきっている原付に乗っているのに。
こっちは破れきっている手袋で寒さをしのいでいるのに。



このところ、2月の寒さと少し先の春の暖かさを行ったり来たりしている。
寒さと暖かさの反復横跳び。
どうも身体が追いつかない。

ずっと熱いお茶か白湯をすすっている。

少し、やけどした。


2月も終わるなと思いながら、そうか今年は閏年かと、29日まであることを嬉しがるでもなく悲しむでもなく、カレンダーを見つめる。



どうも最近目をこすってしまう。
花粉のせいか、春の陽気のせいか。

どちらにしてもあまり外に出たくないな。


そろそろ原付買い替えなきゃ、いつぶっ壊れてもおかしくない。
おじいちゃんバイク。


もう少し頑張って走ってもらうか。
春を駆け抜けなければ。


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