似てくるデザイン

街の中を走る車を見ていると、おやっと思うことがある。すでに見たような気がするのに、でもどこか違っていることは明白でもあるのだ。似たようなことはどこの国にもあることだろうと思うものの、特に日本の車、わけても軽自動車に目立つようだ。中小のものに多い気がするけれど、大メーカー同士にも見られる。

例えば、最近はBMW製のミニに良く似たSUVがあるし、それよりずっと前から新旧のミニそれぞれのフロントマスク、ボディの形状にそっくりの軽自動車はよく見かけられた。日欧の大メーカーのフロントグリルの形状は、あれとあれが良く似ているぞということがままある。


日本の大メーカー2つの手になるSUVは、そのガンダムのような形状の特徴はほとんど変わらないように見える。で、昔、ジェームズ・スターリングが設計したオックスフォードのクイーンズ・カレッジの寮を、”Ugly !”と評した学生の言葉を思い出した(一時期、僕はスターリングが好きだったのだ)。そのSUVの一つは、一番売れているというのだね。

全体の印象でなくてもう少し部分的に見ていったなら、例えばヘッドライトやフロントグリル、そして窓廻り等々、それこそ無数にありそうである。デザインは、過去のものを参照することから始まることが多いのだから、至極当然と言えばそうなのだけれど。釈然としないのだ。

かつて、今はなき新趣向の自動車雑誌ナビ誌上で、駒澤敏器が連載していた中で指摘していた*ように、あるデザインが流行れば、似たようなものが出てくる。「わが社もその線で」というようなことになるのは大いにありそうだし、わからなくもない。しかし、それでも、デザインしている時の気持ちはどうなのだろう。

元のデザインと真似したそれの二つが違っているのは、先に書いたとおり明白なのだから、盗作ではない。でも、釈然としないのだ。大げさかもしれないが、デザイナーとしてのよろこび、矜持は持ちうるのだろうか。あるいは、どこへ行ったのか、と問いたくなる。もしかしたら、僕が気づかない独自のデザインが隠されているのか……。

デザインにおいて独自性を保つのは、きわめてむづかしい時代なのかもしれない。あるいは、デザインすること自体がもはや困難なのだろうか。(F)

追伸:皆様、良い夏休みを。

*彼がどのような文脈で書いていたのかは、覚えていない。多分バックナンバーが取ってあるはずと思って、探したけれど、みつからなかった。

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