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【8/100】残らない餞別を

この春は、誰かを見送るばかりだ。

この街を離れ、新しい街へ。
どうか元気で、体に気をつけて。
そんな気持ちを込めて餞別を選ぶ。

残るものではなく、残らないものにした。
お茶に、お菓子に、お花、そしてフィルム。
さささっと使いきって欲しい。
そのうちにもらったことも忘れてほしい。
それくらい新しい街での暮らしが楽しいものになりますように。


この2つのエッセイに登場している彼女もまた新しい街へと旅立った。

旅立つ前日まで連絡先を知らなかった。
「帰ってくる時は連絡してね」と言って気付いた。
連絡先を知らなくても特に困らなかったから。
そんな距離感ではなくなる寂しさと、
離れても繋がっている嬉しさと、不思議な気持ちでいる。

新しい街からの知らせが届いたので、
今の気持ちを忘れないようにしたためていたら
無性にかぼちゃプリンが食べたくなった春の夜。


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