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16分の幸せを噛み締めるー『プックラポッタと森の時間』ー

「みなさんは、プックラポッタを知っているだろうか?」
優しい声で始まるこの作品は、ストップモーションアニメ作家である八代健志監督の最新作『プックラポッタと森の時間』。10月1日から上田映劇で上映がはじまり、初日に鑑賞。あまりにも驚きと多幸感に溢れていたので感想をしたためる。まずは予告編をどうぞ。

驚きのロケコマ撮りで生まれた愛おしさ

八代健志監督は、『劇場版ごん GON, THE LITTLE FOX』『ノーマン・ザ・スノーマン』など数々の素晴らしいストップモーションアニメーションを作られている監督だ。その八代監督がコロナ禍で挑戦した「ロケコマ撮り」という手法で生まれた作品が『プックラポッタと森の時間』。

「ロケコマ撮り」とは
これまでにない視点の、これまでにない世界観。 新しい自然との向き合い方を伝えることが出来ます。
屋外のロケ場所に人形を固定して、ひとコマひとコマづつ時間をおいて撮影するので、人形以外はタイムラプス映像となります。 人形に合わせたスケールの構図は、自然界のものを大きく映し出すことができ、「クローズアップ」及び「高精細」な映像表現が可能となります。
『プックラポッタと森の時間』Noteより

この作品は、スタジオでの撮影ではなく、常に変わり続ける太陽の位置や雲、風などの影響がある野外でコマ撮りが行われている。予告編からも常に影が動き続けているのがわかる。

そもそもコマ撮りとは、被写体を少しずつ動かしながら撮影するという気の遠くなるような技法だ。それを野外で行い、1つの作品に仕上げた八代監督に脱帽である。

ただ使われた技法に驚いているわけではない。小人プックラポッタはもちろん、プックラポッタを撮影するカメラ、八代監督自身もまたコマ撮りの独特な動きになっていてすごくかわいい。そして季節の移り変わりや花の成長、雲の動き、変化し続ける影。それらをとらえた映像は美しく、不思議な心地良さがある。技法以上にロケコマ撮りで生まれた映像が、愛おしい作品になっているところがすごい。

人形や無機物に吹き込まれた命

今回、個人的に刺さってしまったのが、先にも触れたプックラポッタを撮影するカメラの動きだ。まるで意志を持っているかのように動く。わたしは物言わぬ無機物に命を感じる瞬間が好きなので、このカメラちゃん(と呼びたくなるのだ)は、ストライク過ぎた。カメラちゃん、かわいい!

そしてプックラポッタである。一言では言い表せない魅力がある。カッコよくもあり、柔らかなかわいさもある。たった16分ですごく好きになってしまう。あまり詳しく書いてもアレなので、プックラポッタについてはこれくらいに留めておく。

プックラポッタを観たならば

たぶん、あなたは幸せを感じると思う。「どうして?」と問われてもうまく答えられない。プックラポッタは、幸せを運んでくる存在ではないと作中で語られる。でも、間違いなく『プックラポッタと森の時間』という作品はわたしたちに16分の幸せをくれる。この作品はプックラポッタを見る目、心のアンテナを磨いてくれるからだとわたしは思っている。

上田映劇で上映中!

『プックラポッタと森の時間』は、現在(2022年10月2日時点)上田映劇で上映中だ。ただし「週末こども映画館」のプログラムなので、週末にしか上映していないのでご注意を。詳しいスケジュールは上田映劇のサイトをチェック。

『プックラポッタと森の時間』の併映で『眠れない夜の月』という作品も上映される。眠れない夜がすこし楽しみになる素敵な作品なのであわせて楽しんでほしい。

おわりに

余談だけど、『プックラポッタと森の時間』は、軽井沢にある八代監督の自宅で撮られたということで、浅間山や軽井沢など東信地域に住むわたしたちに馴染み深い景色も映る。それがまたこの作品への没入感にも繋がっていると思う。

それではまた上田映劇でお会いしましょう。

(TOP画像は『プックラポッタと森の時間』ポスター画像より引用)

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